「さば缶詰の生産量がついにツナ缶詰を上回った」先ごろ、こんな投稿がSNSで話題を呼んだ。「さば缶」といえば手軽なつまみの代名詞だが、決してファッショナブルな存在ではない。それがいま、女性を中心に大ブームを呼びつつあるのだ。そんな空前のさばブームを見ていこう。

さば缶の生産増、2016年にツナを抜く

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(写真=kariphoto/Shutterstock.com)

公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト食品協会によると、2017年のさば缶びん詰の生産量は内容重量ベースで3万8,977トン。一方、ツナ缶の主原料であるまぐろ・かつお類は同3万3,945トンだ。同データによると、さば缶は2016年に内容重量ベースでまぐろ・かつお類缶詰の生産量を追い抜いた。ただし、箱数ベースでは、2017年にさばが436万6,000箱、まぐろ・かつお類は686万2,000箱と、依然としてツナが大きく差をつけている。

缶詰製造大手の製品を見ると、さば缶の内容量は190グラム、一方、ツナ缶は70グラム。この内容量の違いがこうしたデータ上の逆転現象を生んでいると考えられる。

ダイエットや健康効果に注目

コンビニがまだ、今ほどは普及していなかった1990年代前後、さば缶は手軽で便利な惣菜や晩酌の友として食卓にあがっていた。しかし、コンビニの弁当や総菜、冷凍食品の開発が進むと缶詰の優位性が失われて失速。加えてサラダやサンドイッチなど料理のレパートリーの幅が広いツナ缶が安価になったことでも、さば缶のシェアは奪われていった。

さば缶が再び脚光を浴びたのは2013年頃。「さば缶ダイエット」がテレビで取り上げられたのがきっかけだ。さば缶に豊富に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)という成分が「痩せるホルモン」を刺激すると紹介されると、たちまち人気に火がつき、スーパーの店頭から姿を消すほどになった。さばには、中性脂肪やコレステロールを下げる効果のあるDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれる。

DHAは酸化によって失われるため、缶詰は最適な保存法だ。また、さば缶は骨ごと食べられるので、骨粗しょう症の予防にもつながる。

女性たちに大人気、震災復興から生まれた「サヴァ缶」

オヤジの手軽なつまみというイメージが強いさば缶も、今やこぞって購入しているのは女性たちだ。さば缶になじみのない女性たちの間で話題になっているのが、国産さばをオリーブオイル漬けにした「サヴァ缶」だ。「サヴァ」とはフランス語で「元気?」というあいさつの言葉。東日本大震災で壊滅的な被害を受けた岩手県産の商品で、「岩手から全国に『元気ですか?』と呼び掛けたい」という願いから名付けられた。

グリーン、イエロー、レッドのカラフルな缶詰に「サヴァ?」と大きくあしらったファッショナブルなパッケージは、いかにも女性好み。味付けも、よくある水煮や味噌煮とは一線を画し、シンプルなオリーブオイル漬けから、レモンバジル味、パプリカチリソース味と洋風だ。ウェブサイト上では、タコスやアクアパッツア、アヒージョといったしゃれたレシピへの活用法が紹介されている。

大手コンビニもさばブームに着目している。さば缶詰に留まらず、焼きさばのおにぎりやサンドイッチといった派生商品も続々登場中だ。サバサンドはもともとトルコの首都イスタンブールの名物。「さばの塩焼きといえば定食の定番だけど、サンドイッチなんておいしいの?」と疑問に思うかもしれないが、脂の乗ったサバは思いのほかパンともマッチするのだ。ぜひ固定概念を取り払って、さまざまな料理にさばを合わせてみてはいかがだろうか。

さば缶を楽しむアツアツの郷土料理、山形の「ひっぱりうどん」

「しゃれたさば缶レシピは落ち着かない」という人に紹介したいのが、山形県の郷土料理「ひっぱりうどん」だ。ひっぱりうどんは、うどんをゆで汁ごと鍋で食卓に出し、湯気の立ち上る中からうどんをひっぱり上げて食べる。つけ汁は、納豆に醤油を加えたものを基本として、さばの水煮や生卵を加える。アツアツのうどんに納豆と醤油の香ばしさ、さば缶のうまみが加わった手軽でおいしいふるさとの味だ。これからの寒い季節に、さば缶を楽しむ一品として試してみるのも良いだろう。(提供:百計ONLINE

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