連銀はステルスQE(流動性供給)をやるかもしれないという観測

相場,トウシル
(画像=トウシル)

12月26日のNYダウは上げ幅が1,050ドルを超え、1日の上げ幅としては過去最大となった。リバウンド相場に勢いを付けたのは、時代の最先端企業アマゾンで、アマゾンの株価は126.94ドル高と9.5%も上昇した。

NYダウ(日足)とトレーリングストップライン

グラフ1
(画像=石原順)

アマゾン(日足) 逆張りのATRチャネルトレードモデル

グラフ2
上段:ATRチャネル・逆張りシグナル
下段:ADX(14)・標準偏差ボラティリティ(26)
出所:パンローリングカスタムチャート

ムニューシン米財務長官は先週末に米銀大手6行トップに相次いで電話し、各行の流動性状況などを確認した。長官が23日、ツイッターで明らかにした。先週の米株式相場は急落し、連邦政府機関も一部閉鎖された。米財務省は23日の声明で、「各行の最高経営責任者(CEO)は消費者やビジネスマーケット、他の全市場業務への貸し出しに使われる流動性は潤沢だと確認した」と説明したという。(12月24日 ブルームバーグ)

このニュースを見て、「ああ、NY連銀はまた今年の2月のようなステルスQE(流動性供給)をやるかもしれないな。そうなると、その後の市場は一時的にではあるが、大きく反発する可能性もある」と、筆者の周辺の運用者はコメントしていた。

2018年2月5日のNYダウ1,500ドル安やVIXのETNの取引停止という流動性パニックに対処するため、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長はステルス市場介入に動いた過去がある。米連銀は今年の2月の株価急落時に、1週間で110億ドル分のMBSを買い入れた。この資金で金融機関はリスク商品の買い支えに動き、パウエル・プット(FRBが金融緩和策という形で市場に対して助け船を出して相場を支えてくれるだろうという期待や安心感が、下落リスクを軽減するプットオプションと同じような役割を果たす)により、NYダウはその後上昇に転じた。

ステルスQE!? 米連銀は2018年2月に1週間で110億ドル分のMBSを買い入れた
(債券買い入れ=流動性供給)

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(画像=seekingalpha.com 「Is The Fed Back To 'Quantitative Easing?」)

市場にはパウエル・プットに対する期待や警戒があるようだが、振れの大きい相場なので、買い方も売り方もトレーリングストップ注文を入れておくべきである。大恐慌時やリーマンショック時のチャートをみても、急落後の最初の戻り(B波)が大きい。売り方はその点は考慮しておく必要があろう。

金融当局が相場に介入してくると、現在の調整相場は値幅でなく日柄調整になる可能性もある。典型的な例が30年近く日柄調整となっている日経平均である。

S&P500(日足)リーマンショック時の2007年~2009年と波動カウント

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(画像=石原順)

日経平均(月足)

日本は90年代から金融緩和や公共事業を山ほどやってきた。それは一時的な景気のカンフル剤にはなっても、経済のトレンドを変えるものではないということは日経平均のチャートが証明している。現在、アベノミクス相場のサポートラインの攻防中。

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(画像=石原順)

恐怖と欲望指数

CNNのFear&Greed Index (恐怖と欲望指数) は、投資家心理の7つの指標を分析し、市場の欲望と恐怖の度合いを示した指数である。Fear&Greed Index (恐怖と欲望指数) は12月26日現在4で市場の極端な弱気を示唆している。12月25日には2まで下がっていた。

Fear&Greed Index (恐怖と欲望指数) 12月26日現在

Fear&Greed Index (恐怖と欲望指数) の過去の推移(2016年~2018年)

筆者の知人のN氏によると、アルゴリズム系のファンドの中には、CNNのFear&Greed Index (恐怖と欲望指数) を相場の押し目買いポイントとして使っているところが多いのだという。NYダウの週足にFear&Greed Index (恐怖と欲望指数) が極端な弱気となったところをプロットしてみると、以下のようなチャートが出来上がる。

NYダウ(週足)とFear&Greed Index (恐怖と欲望指数) が極端な弱気になったポイント

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(画像=石原順)

相場は恐怖と欲望という2つの感情で動く。どのような感情が今市場を支配しているのか?CNNMoneyのFear&Greedインデックスはそれを明確に教えてくれる指標である。Fear&Greed Index (恐怖と欲望指数)は以下の7つの指標から構成されている。

市場のボラティリティ

過去20日間のトレーディングでの株と安全資産である債券のリターン

NY証券取引所の52週間の新高値・新安値の銘柄数

McClellan Volume Summation Index(NY証券取引所の出来高の増減)

ジャンクボンド債の需要

プットオプションとコールオプションの取引量

S&P 500と125日移動平均線

CNNのFear&Greed Index (恐怖と欲望指数)の極端な弱気、昨日のNYダウの<大陽線>の出現で、短期的にはコツンと来て底をいれたという感触だろう。だが、エリオット波動の長期のカウントからはとても安心できるような相場ではない。昨日のNYダウは急激な上昇となったが、気を抜かずにこの上げ相場の持続性には注意しておく必要がある。

NYダウ(週足)と波動カウント

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(画像=石原順)

NYダウ(日足)と波動カウント

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(画像=石原順)

究極のトレンドフォロー

相場は「買い」と「売り」、あるいは「利食い」と「損切り」だけのシンプルなゲームである。

読者の皆様がどのような投資判断で相場に参入されているかを筆者は知る由もないが、書店の経済や相場関係のコーナーにいくと相場で勝つためのハウツー本が山のように積まれているので、「相場で成功するノウハウ」の需要というのは大きいのであろう。

相場に対するアプローチの手法は、フィーリング(第六感?)、著名人の推奨、ファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、自動売買などの数学的手法、果ては精神論にいたるまで本当にいろいろある。百花繚乱だが、これらはすべて相場を認識する(売りか買いかを判断する)問題解決プロセスであるということには変わりがない。

誰も相場を正確に予測することはできない。それは人間業ではないだろう。相場で成功するのに普遍的な売買手法などはない。そのような手法が存在し皆がそれをやれば売買が成立しないからである。したがって、破産しないための取引ルールや規律は必要だが、基本的には各人が「自分にあった売買手法」を見つければよいと思われる。

ただし、シカゴのラサール街では、40品目以上の金融商品(株・債券・コモディティ等のインデックスや通貨など)を取引しないと自動売買で毎年継続的に収益を上げることは難しいと言われている(例えば、ドル/円や日経平均などの単一商品のみを<順張り手法>で売買しても毎年継続的に収益を上げることは難しいということである。毎年継続的に収益を上げるためには、<分散投資>が必要だ。

ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

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上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:グリーンの期間=買いトレンド・オレンジの期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インジケータ

ドル/円(4時間足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

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上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:グリーンの期間=買いトレンド・オレンジの期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インジケータ

ドル/円(1時間足) 標準偏差ボラティリティトレードモデル

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上段:ボリンジャーバンド(21)±1シグマ
中段:ADX(14)=黄・標準偏差ボラティリティ(26)=青
下段:グリーンの期間=買いトレンド・オレンジの期間=売りトレンド
出所:楽天MT4・石原順インジケータ

石原 順(いしはら じゅん)
ファンドマネージャー (海外ファンド運用)
1987年より株式・債券・CB・ワラント等の金融商品のデーリング業務に従事、1994年よりファンド・オブ・ファンズのスキームで海外のヘッジファン ドの運用に携わる。為替市場のトレンドの美しさに魅了され、日本において為替取引がまだヘッジ取引しか認められなかった時代からシカゴのIMM通貨先物市場に参入し活躍する。相場の周期および変動率を利用した独自のトレンド分析や海外情報ネットワークには定評がある。現在は数社の海外ファンドの運用を担当 する現役ファンドマネージャーとして活躍中。ラジオNIKKEI「ザ・マネー」金曜日パーソナリティー、ラジオNIKKEI「キラメキの発想」準レギュラー。

(提供=トウシル

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