2016年7月15日に、LINE(3938)が上場しました。いわゆる新規公開の株式(IPO株)取引は銘柄にもよりますが、注目を集めやすく、個人投資家にも人気です。
こうしたIPO銘柄を信用取引で行うには、制度信用であれば各取引所などが対象銘柄として選定してから取引が可能になります。一般信用の場合は、取り扱う証券会社によって異なりますが、買い建てであれば上場初日から取引可能、売り建ては貸し出す株券の調達次第で可能になるというところが多いようです。
もちろん、上場初日に初値がつかず、買付代金の即日預託の規制がかけられた場合には信用取引の注文ができなくなるなどの例外はあるものの、「上場初日より買い建てが可能」というのが一般信用取引のアピールポイントになっています。
とはいえ、「上場初日からいきなり信用取引ができるのは便利かもしれないが、果たして投資手法としてリスクは高くないのか?」と思われる方も多いかもしれません。個人的にはその意見に同感です。
確かに、IPO銘柄は初値が公募価格よりもはるかに高くなるものや、その後もさらに上昇していく銘柄は少なくありません。IPO銘柄が人気化しやすいのも頷けます。短期的に値幅を取りに行く信用取引との相性は悪くなく、さらに大きく利益が狙えるチャンスがあると言えます。ただし、高い値段でついた初値が結局天井で、その後の株価が急落するケースもあり、その場合は深い傷を負ってしまうことになります。また、初値は地味に決定したが、その後の株価が上昇するケースや、初値もその後の株価も低迷というケースもあり、IPO銘柄の投資は意外と見極めが難しいと言えます。
株価の先行きが読めないのはIPO銘柄に限ったことではありませんが、IPO銘柄の初値決定や直後の値動きには、公募で買った人や、以前より出資していて株を保有している人(ベンチャーキャピタルや関係者など)、公募で買えなかった人、短期売買で仕掛ける人などの思惑が絡み、株価が需給の影響を受けやすいという特徴があります。また、当たり前ですが、上場したばかりのため、まだチャートが描けておらず、売買タイミングを捉えにくいという面があります。
そのため、余程の自信がない限りは、上場初日や直後に信用取引を利用するのは通常の銘柄よりもややリスクが高いと言えそうです。ある程度の期間が経ち、チャートに移動平均線などが描かれるようになれば、利益確定や損切りの目安をつけることも可能になりますので、その時の状況に合わせて信用取引を利用するのが良いかと思います。実際に、上場後しばらく経ってから再度物色の矛先が向かい、株価が動意づくことはよく見られます。
土信田 雅之(どしだ まさゆき)
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
1974年生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。国内証券会社にて企画や商品開発に携わり、マーケットアナリストに。2011年より現職。中国留学経験があり、アジアや新興国の最新事情にも精通している。
(提供=トウシル)
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