前日については、早朝にメイ政権への内閣不信任案が否決され、一旦マーケットが落ち着くのではないかと思われましたが、英国紙デーリー・テレグラフが「複数の英閣僚は合意なき離脱阻止のため辞任を準備している」と報じているように、依然として先行き不透明感が強いものの、「合意なき離脱」は回避されるのではないかとの期待感が強まっており、ポンド買いが加速しています。ポンド円は一時142円の大台を回復し、142.207円まで上値を拡大しています。昨日寄稿させていただいた日足レジスタンスである143.50円付近、このラインが既に見えてきています。
来週月曜(21日)までに議会に方針を示すステートメントの提出が必要ですが、レッドサム・英下院議長から「メイ首相は21日に動議を提出し次の措置を表明」と明らかにしたほか、「15日に否定されたメイ首相の離脱案の代替案を29日に審議し採決する予定」とも発言しており、ポンドについては一旦期待感が強まる展開になりそうです。
ブレグジット絡み以外では、ダウ・ジョーンズ通信が「米国は中国に課している追加関税の引き下げを議論」「ムニューシン米財務長官は関税の一部もしくは全部の撤回を提案している」と報じたことにより、ドル円が上昇し、109.40円付近まで上値を拡大しました。ただ、米財務省が「財務長官が対中貿易関税の撤廃を提案」との報道を否定すると、109円付近まで反落するものの、あくまで今回の否定にはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が反対姿勢を示しているとの内容が伝わり、関税が実際に引き下げられる可能性がまだあるとの期待感から下値は109円付近で底堅くなっています。
今後の見通し
米国の対中関税撤廃に関する内容については、市場の沈静化と中国から通商交渉においてより多くの譲歩を得るため、対中関税の撤回を検討しているというものです。現状は、ムニューシン米財務長官は関税の一部もしくは全部の撤回を提案、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表がその意見に難色を示しているという構図になっています。本来であれば、トランプ大統領は関税についてはムニューシン米財務長官よりライトハイザー代表を支持すると表明していましたが、今回トランプ大統領は大きな成果を求めていると言われており、ライトハイザー代表に成果を求めるのであれば、ムニューシン米財務長官の意見を尊重することが必要になるため、米財務省から否定されたとしても、市場は楽観的なスタンスを維持しているのだと考えられます。
また、米国の経済指標の内容がドル上昇をサポートしています。昨日発表された米・新規失業保険申請件数(前週分)については、市場予想22.0万件に対して結果は21.3万件と強い内容になりました。政府機関閉鎖により、民間セクターに与えるマイナスの影響が懸念されていますが、同指標を見る限り、今のところは悪影響が出ていないことが示されました。また、米・1月フィラデルフィア連銀景況指数が市場予想9.5に対して17.0と大幅に改善しました。FRBの今後の利上げサイクルにおいて、景況感の数字は非常に重要なものになってきます。その意味でも、景況感が大幅に改善したことは、FRBへの利上げ期待の高まりが再熱する材料になるかもしれません。
NYクローズレートでドル円は109円台を維持
前日のドル円109.00円のショートポジションは、109.30円にて損切りとなりました。また、NYクローズレートで109円を維持したことにより、ドル円は108.-109円のレンジを上抜けた可能性があります。109円のラインが今後底堅くなることを想定し、109.10円付近での押し目買いを戦略とします。損切りについては108.70円下抜け、利食いについては、110円の大台乗せは目先困難になると考えられるため、109.90円付近を目安とします。
海外時間からの流れ
モルガンスタンレーの決算が低調だったことを受け、NYダウ先物が下落したことにより、ドル円は一時108.70円付近まで下落する場面もありましたが、米国の対中関税撤廃に対する期待が高まっており、NYダウは260ドル超上昇し、本日の日経平均株価も200円以上の上昇になっています。目先ポンドに対する不安が払拭されつつあるため、リスク選好の材料には反応しやすい状況になっています。大きなネガティブサプライズがない限りは、本日はこの流れが継続するのではないでしょうか。
今日の予定
本日は、英・12月小売売上高指数、米・12月設備稼働率、米・1月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)などの経済指標が予定されています。ただ、米国の経済指標については、政府機関閉鎖の影響で発表されるかどうかは直前にならないと分からないので、この点にはご注意ください。要人発言としては、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。