シンカー: 2019年の物価上昇率がテクニカルな理由で弱ければ弱いほど、2020年は逆に強くなるだろう。伸び率が持ち直す理由は、テクニカルな下落圧力は、瞬間的に消費者物価指数を押し下げるが、家計の名目所得が拡大している中、実質所得の更なる増加となり、他の需要が増加し、一般物価の基調への影響は徐々に小さくなることだ。そして、マクロの需要超過の形が継続しているのであれば、値下げによる販売促進も限界となり、特殊要因の影響が剥げ落ちた翌年に、前年比の物価上昇率は大きく跳ね上がることになろう。特殊要因による変動とマクロ的な需給ギャップのプラスの状態の拡大が予想される2019年を経て、2020年の物価上昇率の基調(除く消費税)は前年比+1%を上回り、加速感が出てくると予想する。2%の物価目標はグローバル・スタンダードであり、その達成のため、円安誘導ではなく、内需を拡大させるための国内要因として日銀は大規模な金融緩和を続けていると、各国を説得する必要に迫られている。貿易赤字を問題視する米国を説得する必要もあり、大阪で開催されるG20では経常収支の不均衡が大きな議題となる可能性が高く、金融緩和の継続は円安ではなく内需拡大のためであるという2%の物価目標の「鉄板ロジック」は必要不可欠である。物価目標をより現実的な水準に引き下げれば、日銀が為替目的のために大規模な金融緩和を続けているとの批判を受けるリスクがある。その結果としての円高への転換は逆風となるため、その「鉄板」ロジックに穴が開くようなリスクはとれず、2%の物価目標を引き下げる政策オプションはほとんどなくなったと考えられる。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

12月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.7%と、11月の同+0.9%から二ヶ月連続で上昇幅が縮小した。

12月からガソリンを含めて原油価格の下落の影響が本格的に現れ始めた。

更に、年末商戦では、耐久消費財や被服で販売を促進する大きな値下げが行われたとみられる。

一方、賃金を含めたコスト上昇を価格転嫁する動きもあり、12月のコアコア消費者物価指数(除くエネルギーと生鮮食品)は同+0.3%と、11月から変化はなかった。

夏場の天候不順による生鮮食品の上昇の影響がなくなり、前年同月比でも大きなマイナスに転じ(-9.4%)、12月の消費者物価指数も同+0.3%へ、11月の同+0.8%から上昇幅がかなり縮小した。

エネルギー価格の下押し圧力は続き、初売りも同様に値下げによる販売を促進する動きもあるとみられ、携帯電話通信料の引き下げも重なり、目先は消費者物価指数の上昇幅が縮小していく可能性が高い。

コア消費者物価指数の前年同月比は一時的に+0.5%を割る可能性もあり、上昇幅が再び拡大に転じるのは夏以降となるだろう。

伸び率が持ち直す理由は、テクニカルな下落圧力は、瞬間的に消費者物価指数を押し下げるが、家計の名目所得が拡大している中、実質所得の更なる増加となり、他の需要が増加し、一般物価の基調への影響は徐々に小さくなることだ。

そして、マクロの需要超過の形が継続しているのであれば、値下げによる販売促進も限界となり、特殊要因の影響が剥げ落ちた翌年に、前年比の物価上昇率は大きく跳ね上がることになろう。

2019年の物価上昇率がテクニカルな理由で弱ければ弱いほど、2020年は逆に強くなるだろう。

深刻な人手不足の企業はとうとう人材獲得のための賃金競争を始め、名目賃金の強い上昇と物価の伸び悩みは、家計に実質所得が増加している安心感をもたらすであろう。

その安心感と大規模な経済対策が、2019年10月の消費税率引き上げの影響を大きく緩和することになろう。

2019年は賃金上昇が強くなる中で物価が伸び悩むことで、実質所得の増加通じて、実質GDP成長率はマーケットの予想以上に強くなる可能性があると考える。

特殊要因による変動とマクロ的な需給ギャップのプラスの状態の拡大が予想される2019年を経て、2020年の物価上昇率の基調(除く消費税)は前年比+1%を上回り、加速感が出てくると予想する。

2%の物価目標はグローバル・スタンダードであり、その達成のため、円安誘導ではなく、内需を拡大させるための国内要因として日銀は大規模な金融緩和を続けていると、各国を説得する必要に迫られている。

貿易赤字を問題視する米国を説得する必要もあり、大阪で開催されるG20では経常収支の不均衡が大きな議題となる可能性が高く、金融緩和の継続は円安ではなく内需拡大のためであるという2%の物価目標の「鉄板ロジック」は必要不可欠である。

特殊要因で2019年の物価が弱い方が、G20でデフレ脱却を目指す金融・財政政策の継続の必要性を訴えやすくなる。

物価目標をより現実的な水準に引き下げれば、日銀が為替目的のために大規模な金融緩和を続けているとの批判を受けるリスクがある。

その結果としての円高への転換は逆風となるため、その「鉄板」ロジックに穴が開くようなリスクはとれず、2%の物価目標を引き下げる政策オプションはほとんどなくなったと考えられる。

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司