本日21日については、詳細な時間こそ不明ではありますが、メイ英首相がEU離脱代替案の提示を行います。ただ、既に20日の電話会議にて議会が圧倒的多数で否決した離脱合意案の有効な代案が、超党派協議を通じて得られる見込みはほぼないと閣僚らに説明したと報道されています。1998年の「ベルファスト合意」を修正することで行き詰まりを打開する案を検討しているとの報道もありますが、労働党の要求に応じれば与党が分裂すると同首相が考えていることもあり、これといった代案は出てこない公算です。妥協内容でもポンド買いが強まっていた直近の動きですが、本日に関してはほぼ影響なし、もしくは若干のポンド安といった動きになりそうです。

メキシコ国境の壁建造費用57億ドルを巡る暫定予算案不成立による連邦政府機関の閉鎖については、本日で31日目となり、過去の閉鎖期間の記録を更新しています。トランプ米大統領は、不法移民を救済する制度の延長など移民規制を緩和することを条件にメキシコ国境での壁建設予算を民主党に認めるよう求める妥協案を示しましたが、ペロシ下院議長は「受け入れられない」と拒否していることもあり、完全に袋小路に陥っています。

ただ、ドル円については、ムニューシン米財務長官による対中制裁関税の引き下げ示唆や、米中次官級通商協議での進展報道を受けて、1月30-31日に予定されているライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と劉鶴中国副首相による米中通商協議への期待感が高まっており、余程のネガティブサプライズがない以上は、堅調に推移するのではないでしょうか。ただ、イベント前に大きくポジションが大きく傾くとは考えづらいため、108-109円のレンジが109-110円のレンジに移行したイメージです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日提出されるメイ英首相の代替案が、承認されることはないでしょう。「合意なき離脱」の可能性は引き続き残されているものの、ここにきて「合意なき離脱」の可能性が低くなったと考えられます。基本的にはソフトブレグジットが現実的ですが、場合によっては国民投票の再実施、総選挙といったシナリオも否定できません。本番は、21日でなく再採決の29日の方でしょうか。

本日21日は、ポンドの動きがマーケットを牽引しそうですが、22日-25日にはダボス会議が開催されるため、再びドルへの注目が高まりそうです。昨年のダボス会議では、ムニューシン財務長官がドル安容認発言をしたことから、ドルが急落するサプライズがありましたが、今年は米国からの参加者はいないため、昨年のようなドル安歓迎発言などは出てこないと思われます。また、ダボス会議への参加者がいないことで、一層米中通商協議への関心が高まっていることも、ドル円がサポートされる要因になるでしょう。

トルコリラについては、ホワイトハウスから「米・トルコ首脳は二国間貿易の延長を議論した」「米・トルコ首脳はシリアについて交渉による解決を継続することで合意した」との発言もあり、底堅い動きになっています。トルコリラ円についても20.50円付近がサポートとして意識されそうなため、まずは21円を目指す動きになりそうです。米国・トルコの関係改善が何よりもトルコリラ買いを誘発するため、下値は底堅くなっていると考えてよさそうです。

ドル円はコアレンジが109-110円に移行

前週末のドル円の高値は109.887円、ほぼ想定していた高値と面合わせですが、109.10円の押し目を付けることがなかったため、押し目待ちに押し目なしの状況になりました。下値の底堅さが確認できる一方で、110円がレジスタンスであることが確認できたのは収穫です。109.80円付近での売り戦略、損切りは110.10円に設定し、利食いは109.20円付近とします。

海外時間からの流れ

17日には、ムニューシン米財務長官から中国に対する制裁関税の一部か全てを取りやめる案を提起したとの報道でドル買いが強まっていますが、前週末には、追加で「今月上旬に北京で行われた米中通商協議で、中国は米国からの輸入を拡大する6カ年計画を提示」「中国は米国からのモノの輸入を年間で計1兆ドル超引き上げ、対米貿易黒字の縮小を図る計画を示した」との一部報道が加わりました。米中通商協議への期待は為替市場よりも株式市場の方が好感している節があるため、株高からのリスク選好地合いが引き続き継続しそうです。

今日の予定

本日は中国・第4四半期GDP、独・12月生産者物価指数などの経済指標が予定されています。ただ、米国の経済指標については、政府機関閉鎖の影響で発表されるかどうかは直前にならないと分からないので、この点にはご注意ください。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。