前日については、海外時間に国際通貨基金(IMF)が、2019年の世界成長率予想を下方修正したほか、米中間の通商摩擦や長引く米政府機関閉鎖などを懸念して「リスクは成長減速に傾いている」などと警告したことが嫌気され、NYダウは一時460ドル超下落しました。また、FT(フィナンシャル・タイムズ)の記事にて「中国提示の予備協議案を米国側が拒否した」との報道がリスク回避の動きを強め、ドル円は一時109.15円付近まで下落しました。ただ、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が「もともと予備協議は計画していない」と同報道を否定すると、すぐさま109.45円付近まで反発する慌ただしい動きとなりました。

前日の動きはFT紙の誤報ではありましたが、マーケットが米中通商協議への関心が非常に高いという事実だけは確認することができました。ポンペオ・米国務長官は、米中通商協議は良好な結果が得られるとの楽観的な見方を示したうえで、米中間の衝突は避けられるとの見解を述べました。1月30-31日に予定されている米中通商協議について同氏は「通商協議がうまくいくことに楽観的だ。良好な結果が得られるだろう」と語っていることもあり、依然としてリスク選好イベントであることには違いなさそうです。

英国のEU離脱代替案については、労働党が国民投票を再び実施する動議を提出しました。メイ英首相は、EU離脱案を修正することを提案しましたが、野党の労働党はメイ英首相が非現実的な意見を繰り返してることに反発しています。メイ英首相は国民投票の再実施などについて否定的な考えを繰り返しているうえ、合意なき離脱も辞さない構えとのスタンスを変えていません。英国議会は今後の措置について29日に審議・採決する予定ですが、問題の先延ばしがポンド買いの材料になっていたとを考えると、物事が決まりだすとポンド売りに傾く可能性が大いにありそうです。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

本日は、日銀政策決定会合が予定されています。大方の予想として据え置きがコンセンサスとなっており、注目は展望レポートということになりそうです。原油価格の下落を受けて、2018-2019年度の物価見通しを引き下げるとの見方が一般的であり、ここから大きな乖離はないものと考えています。現状を考えると2019-2020年度の成長見通しについても変化はないものと考えられるため、基本的には無風イベントとして捉えられそうです。動きがあるとすれば、黒田日銀総裁の定例会見でしょうか。楽観論を繰り返す内容が続くようであれば、多少円高方向に向かうかもしれません。

注目されている日米通商協議については、日米貿易不均衡是正に向けて自動車関税や数量規制、為替条項の導入などが注目ポイントになっていますが、事前段階で重要視されている日本の12月対米貿易黒字については、5,678億円の黒字となりました。2017年12月の対米貿易黒字は7,122億円であることを踏まえると、中国同様に大幅な譲歩を余儀なくされることはないかもしれません。

今月30-31日に開催予定の米中閣僚級通商協議に関しては、7-8日の米中次官級通商協議などで知的財産権問題が進展していないことで、FT紙の誤報ではありましたが、予備協議案中止との報道でリスク回避の動きが強まりました。大方な部分では楽観視されてはいますが、知的財産権問題、この点がクリアにならない限りはリスク回避の動きが強まりやすいという教訓が前日の動きだと思われます。

109.20円にてドル円ロングメイク

ドル円の上限、下限の目安こそ想定通りの動きではありますが、ポジションメイクの時点で戦略がうまく機能していません。レンジとしては109-110円、コアレンジを109.20-109.80円付近で想定していることもあり、今度は109.20円でロングメイクです。損切りのラインは108.90円下抜け、利食い目安は109.80円を想定しています。

海外時間からの流れ

英国のEU離脱代替案、米中通商協議など、来週はメインイベントが多数控えていることもあり、今週は動きづらい状況になっています。株価主導での動きでもドル円のレンジを崩すことができなかったことを踏まえると、今週中のレンジ抜けはないと考えた方がいいかもしれません。ただ、FT紙のような前のめりの報道が想定外にマーケットを動意づかせる点だけは注意が必要になりそうです。

今日の予定

本日は、日銀金融政策決定会合/黒田日銀総裁定例会見、加・11月小売売上高などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。