税制優遇があり、「もうひとつの年金」として人気のiDeCo(個人型確定拠出年金)では、保有資産を売却して別の資産を買い付ける「スイッチング」が可能だ。長期運用において利益確定などに有効な手段だが、手数料はかかるのだろうか。

iDeCoにおけるスイッチングは「利益確定」につながる手法

イデコ,スイッチング
(画像=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

iDeCo(イデコ)は、加入の申し込みや掛金の拠出、運用する金融商品選びなどをすべて本人が行い、60歳以降に掛金や運用益を受け取ることができる制度だ。

2017年1月から20歳以上60歳未満の全国民が任意で加入できるようになり、企業年金がある会社員も対象となった。国民年金や厚生年金などに加え、老後に備えるための制度として利用者が年々増えており、2018年には加入者が100万人を超えた。

都市銀行や地方銀行、信用金庫、証券会社のほか、生命保険会社や損害保険会社でもiDeCoを取り扱っており、取り扱う運用商品や口座管理手数料などを比較して、運用する金融機関を選ぶ。

受け取りが60歳以降という特徴からiDeCoは「長期運用型」の私的年金と言えるが、長期運用型だからこそ気を配りたい点がある。それは各商品のリスク変動によって投資先を変更することだ。

投資先の変更には「配分変更」と「スイッチング」(預け替え)という方法があるが、特にスイッチングでは、それまでの運用で発生した利益分を売却して元本確保型の商品を購入することで運用利益を確保することができるので、より安定的な実績を出すためにもよく理解しておきたい。

スイッチング手数料は無料だが、信託財産留保額が差し引かれることも

iDeCoの加入者が個人の判断でスイッチングをした場合、手数料が掛かるかどうかは金融機関によって異なる。一方、保有する投資信託を売却しようとしたときにその投資信託に信託財産留保額(売却時手数料)が設定されている場合、売却額から信託財産留保額が手数料として差し引かれる。

信託財産留保額が設定されていない投資信託もあるが、設定されている場合は、「基準価額の何%」というように一定割合が決められており、一般的には0.3%程度だ。

何度もスイッチングすると、運用利益の圧迫につながる

このように、信託財産留保額が設定されている投資信託を利益確定のためにと頻繁に何度もスイッチングすると、手数料として差し引かれる信託財産留保額がコストとして積み重なっていくことになる。せっかくの利益も、度重なるスイッチングで目減りしてしまってはもったいない。

むやみにスイッチングを重ねて利益が減るのを防ぐため、ある程度の期間をあけたり、頻度を一定にしたりと、自分でルールを作っている人もいる。スイッチングを行う時期を、自分の誕生月やiDeCoの購入月などに決めるのもいいだろう。

スイッチングの頻度については、3ヵ月に1回以上できるよう法律で定められている。運用管理機関ごとに、その範囲内でスイッチングが可能な頻度が「毎月」や「毎日」と定められており、回数制限も運用管理機関によって異なる。

始めるときに関心がなくても、スイッチングの理解が必須なワケ

これから新たにiDeCoを始める人で、現時点でスイッチングに関心がない人も、スイッチングの理解は必須だ。長期的な運用では、年齢を重ねていくうちに本人のリスク許容度も変わるため、いずれ構成資産のバランスの再検討をしていくことが重要になる。そのときは、スイッチングが選択肢の一つとなるだろう。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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