前日公表された日銀金融政策決定会合では、大方の予想通り据え置きとなりました。また、注目の展望レポートでは、世界経済に対するリスクが強調されたものの、今後の経済成長及びインフレ率見通しに変更がない事が示されました。2018-2020年度のインフレ率見通しは下方修正され、特に19年度の修正幅は大きくなりました。これは、原油価格の下落が主因と説明されており、ほぼ全ての項目において市場の予想通りだったことで、動意は限定的になりました。黒田日銀総裁が今回の原油価格の下落は2014年時に比べ、一時的かつ小規模のため、期待インフレ率に対する影響は限定的と発言しましたが、こちらは材料視されませんでした。これで、上がっては消え上がっては消えしている「出口戦略」についても、当面は現状の金融緩和策が継続される可能性が高いため、円安に振れやすい状況になったと考えられます。

英国のEU離脱代替案については、最大野党・労働党が混乱を招く「合意なき離脱」を回避する修正案を支持する可能性が高いとの意向を示しました。これで、「合意なき離脱」は回避されるとの見方が強まっており、ポンドは全面高になっております。労働党内で発言力の高いジョン・マクドネル議員が、BBCの番組でクーパー議員らがまとめた案について、「合意なき離脱」に伴う混乱を避ける手段として妥当との認識を示し、「来週の議会採決で党として正式に支持するだろう」と発言したこともポンド買いをよりサポートしたものと考えられます。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

暫定予算案が不成立となっていることで、米政府機関閉鎖が過去最長の34日となりました。マコネル米上院共和党院内総務が、トランプ大統領が提案した妥協案と民主党によるつなぎ予算案の採決を行うと発言しており、目先はこの採決の動向が大事になりそうです。ただ、トランプ大統領はの妥協案は、幼少期に親と共に不法入国した「ドリーマー」と呼ばれる若者の在留資格を3年間延長するという従来の内容、民主党案は政府機関の資金を2月8日まで手当てする「つなぎ予算案」となっていますが、トランプ大統領が要求しているメキシコ壁建設費は含まれていません。どちらの法案も可決される見込みは今のところなく、仮に民主党案が可決されてもトランプ大統領が署名するとは考えにくく、政府機関閉鎖期間がさらに延長されそうです。

ただ、政府機関の閉鎖に伴う経済的損失は1週間で12億ドルと言われており、今週末で5週間が過ぎることで60億ドル超となります。争点である壁建設費用57億ドルを上回ることになるため、さすがにこのままずるずると問題を先延ばしにすることはないだとうという見方もあります。どちらの法案もすぐに可決という流れは想定しにくいですが、何かしらの落としどころを模索するという内容にはなると思います。ただ、これでは抜本的な解決には至らないため、基本的にはドル円は昨日上値が抑えられた110円が意識され、下値においても109円を下抜けるような動きにはならない公算です。

本日の注目材料としては、ECB理事会、そしてドラギECB総裁の定例会見でしょうか。一部では、マイナス金利の見直しがされるのではないかとの見方からユーロ買いが強まっていますが、直近のECB理事会ではマイナス金利の見直しについては、2019年後半になるだろうと示唆されていたこともあり、本日ECBが判断を下す可能性は低いとみています。「経済状況は改善しつつも、リスクは存在しており、依然として下振れの可能性がある」という、これまでとあまり変わらないスタンスになるのではないでしょうか。その際は、これまでの期待感から買われたユーロが反落し、ユーロドルで1.13ドル前半から半ば付近に落ち着くと考えています。

政府機関閉鎖問題完了まではレンジ継続か

ドル円109.20円のロング、109.80円での利食いにて手仕舞です。一時110円を上抜けるラインまで上昇したものの、ほぼワンタッチで反落していることを考えると、ドル円の110円レジスタンスはかなり意識されているのでしょう。今後は戻り売りポイントとして一層意識される可能性があり、109.80-90円付近から上値が重くなりそうです。よって、本日の戦略としては109.80円台での戻り売り戦略、損切りは110.10円上抜け、利食いについては109.20円台とし、レンジ継続と考えます。

海外時間からの流れ

「合意なき離脱」が回避されそうなことでポンドは買われやすい状況になり、日銀が金融緩和策を継続する可能性が高いため、円安になり易い状況になっています。こうなると、米国の政府機関閉鎖問題が完全にリスク選好の動きを邪魔しています。ドル円においても、110円のラインを上抜ける時は、政府機関閉鎖解除がセットとして捉えられているかもしれません。

今日の予定

本日は、独・1月製造業PMI/サービス業PMI(速報値)、ユーロ圏・1月製造業PMI/サービス業PMI(速報値)、欧州中銀(ECB)政策金利発表/ドラギ・ECB総裁定例会見、米・新規失業保険申請件数などの経済指標が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。