前日については、注目されていたECB理事会後のドラギECB総裁の定例会見にて「地政学要因や保護主義の脅威、新興国市場の脆弱性、金融市場のボラティリティに関連する根強い先行き不透明感により、ユーロ圏の成長見通しを巡るリスクは下向きに傾いた」と発言したことにより、ユーロは急落しました。ユーロドルでは、1.13ドル付近まで下落し、その後のNY時間で1.13ドルを割り込み、一時1.12897ドルまでユーロ売りが加速しました。前日寄稿させて頂きました通り、金利の見直しは2019年秋以降との内容が前回の理事会後に公表されていたにも関わらず、一部の銀行レポートよりマイナス金利の見直しがされるのではないかとの思惑が強まったことで、想定以上にユーロの失望売りが入ったものと考えられます。また、ユーロ圏のPMIの数字が軒並み悪化し、ユーロ圏の景気減速が確認されていたことも、ユーロ売りをサポートしたと考えられます。
ドルについては、ロス米商務長官が「米中間の貿易問題解決には程遠い」と発言し、米中通商協議の難航が意識されたことで、一時109.425円までドル円は下落したものの、クドロー国家経済会議(NEC)委員長が「トランプ米大統領は中国との貿易協議について楽観」「1月雇用統計は著しい伸びが示される可能性」と発言したことで、一気に下落分を取り戻す動きとなりました。ドル円は再び109円台半ばから後半での動きが続いていますが、日米通商交渉が米中通商協議や米政府機関の一部閉鎖を理由に2月以降に先送りされる可能性が指摘されており、引き続きドル円は動意に欠ける動きになるかもしれません。
米上院での共和党と民主党の各予算案は、予想通り採決のための動議は通過することができませんでした。このこと自体は予想通りであったため、特段材料視されていませんが、米政府機関閉鎖が継続されることによる経済損失は、争点である壁建設費用57億ドルを上回ることはほぼ確実視されています。この状況下が継続するようであれば、米国はゼロ成長になるとの指摘もあることから、状況によってはしびれを切らしたドル売りが突発的に入ることは警戒した方がいいかもしれません。
今後の見通し
英国のEU離脱代替案については、最大野党・労働党が混乱を招く「合意なき離脱」を回避する修正案を支持する可能性が高いとの意向を示し、本日の東京時間では英民主統一党(DUP)がメイ首相の離脱案支持を非公式に決定したとの一部報道が出てきていることから、英国のEU離脱代替案については、若干の安心感が出てきています。期限が目前に迫り、ようやく「合意なき離脱」になった場合の経済損失を正面から向き合っているのかもしれません。こちらの再採決は、来週の29日に予定されています。
今月30-31日に開催予定の米中閣僚級通商協議に関しては、7-8日の米中次官級通商協議などで知的財産権問題が進展していないことが唯一の懸念材料でしょうか。比較的楽観論を繰り返しているクドロー国家経済会議(NEC)委員でさえも、「米中通商協議では、知的財産権やテクノロジーの問題にも対応が必要」との認識を示しています。この問題が解決されないまま棚上げになってしまうと、ドル円は110円が強固なレジスタンスとなり、109円を下抜ける動きに発展するかもしれません。
狭いレンジのドル円から上昇基調が強まっているポンド円に方向転換
109.80円でのショート、利食いを想定していた109.20円台には届きませんでした。基本的には非常に狭いながらもレンジで推移しているため、どうこうする水準ではないですが、ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも大きな値幅を掴むにはあまりにも困難なため、109.60円で一旦利食い、通貨ペアの変更を検討します。方向感が出ている通貨ペアについては、ポンド円が筆頭候補として挙げられます。テクニカル的にも143.40円のラインを上抜けてから上昇基調が強まっていることもあり、143.40円付近まで引き付けての押し目買い戦略。損切りは143円割れである142.90円下抜け、利食いについては、4時間足レジスタンスである144.50円付近を想定します。
海外時間からの流れ
本来であれば無風通過がコンセンサスであったECB理事会が、マイナス金利の見直しがあるのではないかとの一部期待感により、ドラギECB総裁が従来通りの内容の発言を行っただけでユーロ売りが強まる展開になりました。本日は、独・1月IFO景況指数が予定されています。前日のユーロ圏の経済指標悪化がユーロ売りを強めるベースを形成したこともあり、重要視されそうです。また、独ハンデルスブラット紙が「ドイツ政府は今年の経済成長見通しを1.8%から1.0%に下方修正」と報じた内容の裏付けになるかどうかという点でも重要なポイントになりそうです。
今日の予定
本日は、独・1月IFO景況指数などの経済指標が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。