所定の手続きを経ることで税制上の優遇を受けられる、生命保険料控除制度。加入中の保険種類や保険料にもよるが、最大12万円の所得控除を受けられる。所得税・住民税を上手く節約するためにも、この制度について正しく把握しておきたい。

生命保険料控除制度とは?新旧制度で何が違う?

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(画像=William Potter/Shutterstock.com)

納税者が加入している生命保険・介護医療保険・個人年金保険の保険料を支払った場合、所定の手続きを経ることで一定額の所得控除を受けられる。これを「生命保険料控除制度」といい、2013年12月31日以前に締結された契約なのか、2014年1月1日以後に締結された契約なのかによって、控除額の算出方法が異なる。

2014年1月1日以後に締結された契約の生命保険料控除制度

新生命保険料控除制度が適用される2014年1月1日以後締結の契約は、「生命保険」「介護医療保険」「個人年金保険」の3つに区分される。そして、これらの保険の控除額はそれぞれ、以下の計算式によって算出される。

・年間保険料2万円以下……支払保険料等の全額
・年間保険料2万円超4万円以下……支払保険料等×1/2+1万円
・年間保険料4万円超8万円以下……支払保険料等×1/4+2万円
・年間保険料8万円超……一律4万円

新生命保険料控除制度では、最高で12万円の所得控除を受けられることになる。

2013年12月31日以前に締結された契約の生命保険料控除制度

旧生命保険料控除制度が適用される2013年12月31日以前締結の契約は、「生命保険」と「個人年金保険」の2つに区分される。そして、これらの保険の控除額はそれぞれ、以下の計算式によって算出される。

・2万5,000円以下……支払保険料等の全額
・2万5,000円超5万円以下……支払保険料等×1/2+1万2,500円
・5万円超10万円以下……支払保険料等×1/4+2万5,000円
・10万円超……一律5万円

旧生命保険料控除制度においては、最高で10万円の所得控除を受けられることになる。

新旧制度は併用可能

新制度が適用される保険と旧制度が適用される保険の両方に加入している場合、生命保険と個人年金保険については、次の3パターンから選択して控除額を算出できる。

・パターン1:新制度が適用される保険のみで控除額を計算(上限4万円)
・パターン2:旧制度が適用される保険のみで控除額を計算(上限5万円)
・パターン3:新制度・旧制度適用の保険両方につきそれぞれの控除額を計算して合算(上限4万円)

加入している保険の種類や保険料によっては、パターン2を選択することで控除額が大きくなることがある。そのため生命保険料控除額を計算する際は、新制度と旧制度を上手く使い分けることも大切だ。

生命保険料控除を受けるために必要な手続きとは

生命保険料控除を受けるには、確定申告書の「生命保険料控除」の欄に必要事項を記入し、控除証明書を添えて提出する必要がある。ただし、控除を受ける者が給与所得者である場合、その年の年末調整において給与支払者に控除証明書等を提出するとともに、控除を受けたい旨を申告すれば控除を受けられる。

控除証明書は再発行が可能

生命保険会社によって異なるが、控除証明書は10月中旬から発送が始まる。控除証明書を紛失してしまった場合は、生命保険会社に再発行を依頼できる。年末調整や確定申告の期限に間に合うよう、加入している保険の控除証明書が揃っているかどうか早めに確認しておきた。

契約者が妻の生命保険も控除の対象になるのか

生命保険料控除の対象になるかどうかは、その保険金の受取人が以下に該当するかどうかによって判断される。

・保険料の払込をする者
・保険料の払込をする者の配偶者
・保険料の払込をする者の親族

生命保険料控除を受けるうえで、保険契約者が誰であるかは関係ないのだ。そのため妻が契約者となっている保険であっても、上記の要件を満たせば生命保険料控除の対象になる。

生命保険料控除制度は、簡単な手続きで税制優遇を受けられる優れた制度である。これまで何となく控除の手続きをしてきた人も、これを機に新旧制度の違いや、より有利な申告方法などについて再考してみてはいかがだろうか。

文・曽我部三代(保険業界に強いファイナンシャルプランナー)/MONEY TIMES

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