事業内容が違っていても、ビジネスは変わらない

太陽ホールディングス,佐藤英志
(画像=THE21オンライン)

――佐藤社長は監査法人からキャリアを始めています。太陽ホールディングスの経営に関わるようになった経緯をお教えください。

佐藤 トーマツに在籍していた1991年に監査を担当したのが、太陽ホールディングス(当時は太陽インキ製造〔株〕)との関係の始まりです。

95年に独立したのですが、そのとき、太陽ホールディングスは台湾の拠点となる子会社・台湾太陽(台湾太陽油墨股?有限公司)の立ち上げを準備していて、私に会計顧問の依頼がありました。それ以来、長く関係が続き、2001年に台湾太陽の監察人(監査役)に就任し、2008年に太陽ホールディングスの社外取締役に就任しました。その後、社内の取締役になって、CFOの役割を担っていました。

――社長に指名されたときは、どう思いましたか?

佐藤 そのときには、「次は自分が社長になるんだろうな」と思っていましたね。

自分で起業した会社の社長をずっとやっていましたから、社長がするべきことはわかっていました。会社の規模が違っても、社長がするべきことは同じです。

――社長になったら事業領域を広げようということも、CFOのときから考えていた?

佐藤 具体的な事業領域までは考えていませんでしたが、ソルダーレジストの他に、化学と親和性がある事業が何本か必要だとは感じていました。1,000人を超える規模になっているので、ソルダーレジスト一本でやっていると、もしソルダーレジストの市場がなくなったとき、速やかに他の事業に移ることができませんから。

――ソルダーレジストの市場がなくなる可能性も考えていた?

佐藤 エレクトロニクスの一つの部品が1000年後にもあるとは、誰も思わないでしょう。100年後でも危うい。当社が約40年もソルダーレジストでやってこられたのは奇跡的だと思いますよ。

――USENやギャガの経営に携わった経験もありますが、それが現在に活きているところはありますか?

佐藤 若い頃は、業界にはそれぞれの特殊性があるものだと思っていたのですが、USENやギャガでの経験で、そんなものはないということがわかりました。商慣習には違いがありますが、それ以外のことは何も変わりません。

業界に長くいる人は「この業界は特殊だから」と言うのですが、そういう人の意見に従った結果、失敗したことが何度もありました。業界の外から見て、シンプルに考えたほうが、利益が出るのです。

例えば映画業界では、配給会社が制作会社から映画を買いつけるとき、特に大作だと、かなり大きな額のイニシャルを支払います。それが当たり前のこととされているのですが、計算してみると、どう考えても利益が出ないのです。そこでギャガでは、イニシャルを支払わないで済むビジネスだけをやるようにしました。制作も自社でやったり、他の会社が買った映画の配給を手伝う形にしたりしたのです。

――太陽ホールディングスでも、社内では当たり前とされていたことを、利益が出るように変えたのでしょうか?

佐藤 もともと利益が出ていたのですが、世界シェアを5割も持っているのですから、もっと利益率を高められるはずだと思いました。例えば、原価をベースに値付けをするのではなく、お客様が買いたい価格で値付けをするなど、改善を繰り返してきましたが、まだできることはあると思っています。

お客様が買いたいものを、買いたい値段で売って、利益が得られるようにするのが、ビジネスの基本です。このシンプルな見方が、業界を問わず、大切なのです。

そして、そのビジネスを社員が楽しそうにすることも大切です。楽しくないと続きません。

――利益についての考え方には公認会計士というバックグラウンドが影響しているのではないかと思いますが、「社員が楽しんでいないといけない」という考え方は、どこから来ているのでしょうか?

佐藤 自分で起業した経験ですね。楽しくないからということで、社員がどんどん辞めていったことがあったのです。

――そのときは、どのように対応したのですか?

佐藤 会社の理念に共感してくれる人だけを採用することにしました。今、太陽ホールディングスでも同じことをしています。