ほかの法律と同じく、贈与税にも時効があります。時効になる年数はケースによって異なりますが、成立するにはさまざまな条件があり、実際に成立することは少ないといわれています。はたして、めったに成立しない理由とはなんなのでしょうか? 

贈与税の時効とは何か

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(画像=Syda Productions / Shutterstock.com)

贈与税の時効とは、贈与されたときから一定期間経過し、贈与税の支払い義務が消滅することです。起算日は、贈与された年度の翌年3月16日となります。この場合の年度は、暦年(1月1日~12月31日)ではなく、確定申告上の年度(3月15日期限)で起算します。通常、時効は、当事者からの意思表示があり、認められて初めて成立しますが、税金の場合は、期日に到達した時点で自動的に時効が成立したものとして扱われるという規定があります。

反対に「払います」と意思表示した場合でも、税金債務の特別ルールにより、時効の利益を放棄することはできません。時効になる年数は相続税が5年なのに対し、贈与税は6年と規定されています。ただし、贈与税はケースによって7年に延長される場合があります。その違いを見てみましょう。

贈与税の時効が6年になるケース

時効が6年になるのは、贈与税の納税義務があることを知らなかったケースです。ここでいう「知らなかった」とは、贈与された事実を知らなかったという意味です。ただし、知らなかったという主張が認められるのはかなり難しいといわれています。なぜなら、贈与とは贈る側と贈られる側の合意があって成立するものであり、知らないうちに贈与されていたということは通常ないからです。

祖父母が孫の知らないうちに教育費を銀行振り込みで渡していた場合もありますが、この場合は、贈与ではなく「名義預金」として扱われます。

贈与税の時効が7年になるケース

一方、時効が7年になるのは納税義務があることを知りながら、意図的に納税しなかったケースです。さらに、脱税と認定された場合は、本来納税すべき金額に「重加算税」が課されます。しかも、脱税した金額が大きい場合は重加算税に加え、刑事罰が科されるケースもあるのです。

ほかにも、「延滞税」「無申告加算税」「過少申告加算税」などのペナルティがあり、無申告による代償はかなり大きなものとなります。もっとも、税務署が一つ一つの贈与をその都度チェックするわけではないので、贈与された時点で税務調査が入ることはありません。発覚するのは、不動産登記をしたときや相続が起きて相続税の申告をしたときです。不動産登記をすると、登記手続き完了時に法務局から税務署に通知が行きます。また、相続税を申告したときには税務調査が入ることがあるので、この2つのケースが税務署に贈与を知られるタイミングといえます。

時効が成立するのはまれである理由

ところが、そのような基準があったとしても、実際に時効が成立することはまれといわれています。その理由は、時効には「中断」という制度があるからです。税務署から督促状が来た場合、送付された時点から時効の計算はリセットされます。つまり、税務署に申告漏れの贈与を発見されれば、その時点で振り出しに戻るため、実際に時効が成立するのは、極めてまれなケースとなるのです。

さらに、生前贈与の場合、仮に7年間が経過し、時効が成立したとしても、被相続人が亡くなって相続が発生したときに課税されることがあります。生前贈与は被相続人から相続人への「貸付金」とみなされるため相続財産に加算され、その分相続税を多く払うことになるのです。名目が「贈与税」から「相続税」に変わるだけで、実質的には時効が成立した分も課税されると考えた方がよいでしょう。

贈与税にも時効がある点について見てみましたが、時効は気付かないうちに成立してこそ許されるもので、はじめから意図して成立させることは困難であることを肝に銘じるべきでしょう。(提供:相続MEMO


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