2016年10月から社会保険(健康保険、厚生年金)の加入対象が広がり、扶養に入るか外れるか迷われる方も多いと思います。厚生年金の扶養に入る条件はどうなっているのか、どこに注意したらよいのでしょうか。
厚生年金の扶養は配偶者だけ
扶養とは、自分の力だけでは生活を維持できない者に対する生活上の援助のこと。扶養に入るという場合、大きく分けて「税法上の扶養(所得税、住民税)」と「社会保険上の扶養」の2通りあり、それぞれ適用条件が異なります。
さらに、社会保険上の扶養には、健康保険と厚生年金の2通りがあります。健康保険は、一定の条件に当てはまれば親や子でも扶養に入れることができますが、厚生年金は健康保険と適用条件が異なり、扶養に入れるのは配偶者のみです。
事実婚など内縁関係の配偶者も対象になりえます。内縁関係にある人を扶養に入れる際には、「内縁関係にある両人の戸籍謄(抄)本」、「被保険者の世帯全員の住民票」など、内縁関係を確認するための書類が必要です。
なお、日本では同性の結婚は認められていないため、同性パートナーは内縁関係と異なり、厚生年金の扶養に入ることはできません。
厚生年金の扶養の収入条件
2016年10月から社会保険の加入対象が広がりました。勤務先に社会保険が完備されている場合、週20時間以上働いていること、1年以上の雇用期間の見込みがあること、さらに月収が8.8万円よりも多いなどの条件を満たすと、企業の厚生年金への加入が義務付けられます。
勤務時間や月収で社会保険の加入義務に該当しない人でも、年収130万円以上になると厚生年金の扶養に入れません。その場合、自らで国民年金に加入することになります。
厚生年金の扶養に入るための手続き
厚生年金の扶養に入るための手続きは、配偶者(被保険者)の勤め先で行います。勤め先を経由して、日本年金機構に「被扶養者(異動)届 国民年金第3号被保険者該当関係届」を提出します。
厚生年金の扶養に入ると、「第3号被保険者」となります。毎年1回、誕生月に届く「ねんきん定期便」で「第3号被保険者」の記載を確認しましょう。もし日本年金機構や外部委託する業者から年金保険料支払いの催促の連絡がきたとしたら、厚生年金の扶養手続きができておらず、国民年金保険料が未納の状態になっています。配偶者の勤め先に、手続きの確認が必要です。
扶養から外れる場合も、同様に配偶者の勤め先経由で行います。
もらえる年金は「国民年金」のみ
厚生年金の扶養に入って「第3号被保険者」となると、国民年金のみに加入している状態になります。厚生年金の扶養に入っていても、あなたが将来もらえる年金は、国民年金のみで厚生年金をもらえるわけではありません。
「第3号被保険者」の国民年金保険料は、配偶者が加入する年金制度が負担します。つまり、配偶者があなたの国民年金保険料を払っているのではありません。配偶者が払っているのは、自分の厚生年金保険料のみで、「第3号被保険者」の国民年金保険料は免除されています。
「国民年金」のみで将来もらえる年金(老齢基礎年金)の満額は、2019年4月から月額6万5,008円、年間で約78万円です。正直なところ、この金額で生活するのは厳しいと言わざるを得ないほどの少額です。とはいえ、そもそも国民年金保険料が免除されていて、少額でも65歳から亡くなるまでもらえると考えれば、第3号被保険者はお得であるといえます。
扶養から外れるメリットもある
扶養から外れるというと、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)の負担が増えるなどのデメリットに注目しがちです。しかし、最大のメリットは、将来もらえる年金が増えること。
社会保険に加入すると、将来、老齢基礎年金に加えて、厚生年金がもらえます。例えば、月収8万8,000円だと、毎月8,000円(年額9万6,000円)の保険料で、1年間だけ加入した場合でも毎月500円(年額6,000円)をプラスした年金が終身で受け取れます。65歳から20年間年金をもらうとすると、扶養に入っていた場合よりも12万円多くなる計算です。
さらに、障害状態になったときも、国民年金のみよりも多くの年金をもらえます。障害基礎年金は、障害等級1級または2級の場合に支給されますが、障害厚生年金は、障害等級3級の場合も支給され、最低保証額も設けられています。
もし、厚生年金の扶養から外れて手取り収入が減ったとしても、将来は得になるケースが多いでしょう。人生100年時代、目先の手取り収入だけではなく、長い目で見て働き方を選択したいものです。
所得税の扶養控除も活用して
厚生年金の扶養は、将来の年金を配偶者の厚生年金制度で補助してくれるというものでした。一方、もうひとつの扶養である税法上の扶養は、配偶者にとってお得な制度となります。
所得税の扶養控除の収入条件は、103万円以下です(給与収入の場合)。自分が年間収入103万円以下で働けば、配偶者が支払う所得税が軽減され、お得になるというわけです。扶養に入ることを検討しているなら、税法上の扶養もあわせて確認しておきましょう。
扶養内で働いて自由な時間を増やすか、たくさん働いて扶養を外れて将来に備えるか。どちらがよいのかは、あなたの考え方次第です。
文・正田きよ子(ファイナンシャル・プランナー)/fuelle
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