株価は想定以上に反発も警戒を継続
筆者は昨年の11月22日に急減速する中国経済が日本企業の業績悪化に波及するリスクについて言及し、キャッシュ比率を高める、業績堅調なJ-REITへの投資をご紹介するなど「守備の意識を高めたポートフォリオを構成したい局面」というレポートを書きました。11月22日に21,646円だった日経平均は12月25日に19,155円まで下落しましたが、J-REIT指数はその後年初来高値を更新するなど一定程度正しい見通しをお示しできたのではと考えています(グラフ参照)。
その後もスタンスを変えることなく中国発の業績悪化に警戒という見通しをお示ししてきましたが、株価は急反発し3月4日に日経平均は21,822円まで上昇しました。率直に申し上げてここまでの戻りは筆者の想定外であり、反発を予想できなかったことをお詫びいたします。お役に立てずに申し訳ありません。
ただし現在も警戒を解くべきではないとの考えに変わりありません。半導体大手のルネサスエレクトロニクス(6723)が中国の需要の落ち込みを理由に最大2ヶ月間工場の操業を停止すると発表するなど、中国経済の鈍化は日本企業の業績に徐々に現れています。ルネサスは7日にストップ安となり、その他の半導体関連企業の株価も軒並み売られました。8日の前引け時点でルネサスは反発していますが、その他の半導体関連企業の多くは8日も大きく売られています。さらに8日のお昼に発表された中国の貿易統計は市場予想を大幅に下回る弱い内容で、日本株は大きく売られています。
1-3月の外需関連企業の業績は非常に厳しい内容が予想されますし、本決算で発表される来期の業績予想にも期待しないほうが良いでしょう。引き続きキャッシュ比率を高めにする、内需関連企業を中心に投資するなどの対応をとるべきとのスタンスです。
本日の銘柄フォーカスでは、このような状況認識のもと引き続き企業の業績悪化リスクに警戒しながら、直近決算で好調を維持した内需関連企業をご紹介いたします。
第3四半期決算で業績好調な内需関連企業で割高感のない銘柄は
具体的には以下の条件でスクリーニングを行いました。
・東証上場の3月末決算銘柄
・東証33業種が水産・農林業、陸運業、不動産業、食料品、小売業、情報・通信業、建設業、電気・ガス業、サービス業、その他製品、医薬品、倉庫運輸関連のいずれかに属する
・直近の第3四半期(10-12月)決算まで3四半期以上連続で増収経常増益
・自己資本比率が50%以上と財務健全度が比較的高い
・通期の足元5年間の経常利益が1度も前期比で減益になっておらず一定の成長性、安定性がある
・予想PERが20倍以下と大きな割高感がない
上記の条件で銘柄をピックアップしたところ以下の18銘柄が抽出されました。
中でも筆者は日東富士製粉(2003)、幼児活動研究会(2152)、アルゴグラフィックス(7595)、丸全昭和運輸(9068)、メイテック(9744)の5銘柄に特に注目しています。最後に5銘柄の概要をご紹介しますのでご参考いただければ幸いです。企業概要と業績推移の出所はマネックス銘柄スカウターです。
●日東富士製粉(2003)
■企業概要
製粉会社(三菱商事の子会社、国内4位)。小麦その他農産物を原料に業務用製品(小麦粉・ふすま・プレミックス粉・冷凍生地)、家庭用製品(小麦粉製品・乾麺)の製造販売。日系冷凍食品メーカー(アジア地域への製造拠点移転)への対応に注力。その他、ケンタッキーフライドチキン(トップフランチャイジー)や牛角等のフランチャイジー店舗運営。2006年日東製粉と富士製粉が合併。2009年増田製粉所と業務提携(2017年TOBにより増田製粉所を完全子会社化)。2012年水産飼料事業を日本農産工業に譲渡。主要取引先は三菱商事。
■業績推移
●幼児活動研究会(2152)
■企業概要
幼児体育・幼児教育会社。幼稚園・保育園の園児を対象とした正課の体育指導、スポーツクラブ運営による課外の体育指導、保育所の経営、イベント企画(合宿、遠足等)、コンサルティングを提供。正課の体育指導・講師派遣、終業後の課外スポーツクラブ(サッカー・新体操・チャイルドクラブ)の運営、認証保育所や現代寺子屋「YY塾」の運営などを営む。2009年保育所経営に参画。
■業績推移
●エイジス(4659)
■企業概要
実地棚卸サービス専門会社。流通小売業店舗(大型スーパー・大型チェーン店・コンビニエンスストア・ホームセンター等)に特化したサービス(実地棚卸サービス、リテイルサポートサービス)を提供。サービス内容は店舗棚卸・集中補充・棚替え・改装・人材派遣・マーチャンダイジング・カスタマーサービスチェック・集中補充・調査など。棚卸サービスで業界トップ、東アジアを中心に海外棚卸サービス拡大を推進。
■業績推移
●アルゴグラフィックス(7595)
■企業概要
テクニカルソリューション会社。PLMソリューションとして設計分野から金型・加工分野までものづくり全般の業務プロセスを支援(3次元設計・CAD応用技術、システム構築支援、最適プロダクト提供等)。製造業各社に対する機械系CAD・CAEシステム(製品設計・情報管理・科学技術計算・モデリング・解析業務、製品ライフサイクル管理)が主体、主力製品のダッソーシステムズ社が開発した3次元CADシステム「CATIA」をベースにソリューション提供。その他、HPCソリューション(専門性の高いハイレベルな技術計算処理)、EDAソリューション(半導体・電気回路の設計作業の自動化支援)、サーバーソリューションを提供。2008年住商情報システム(現SCSK)と業務資本提携。
■業績推移
●丸全昭和運輸(9068)
■企業概要
横浜本社の物流サービス会社。物流事業(貨物自動車運送・港湾運送・鉄道利用運送・倉庫業・通関業、3PLサービス、グローバル物流)と、構内作業・機械荷役(移送・組立・充填・倉庫保管・入出荷作業)を営む。主力は化学品・鉄鋼・建機・機械などの産業材の物流サービス。3PL情報システム「MLPシステム」はプロセスの一元的管理、貨物情報のリアルタイム公開など業務効率化やコスト削減に貢献。2015年日本電産の物流子会社を買収・連結子会社化。主要荷主はキャタピラーグループ、昭和電工、富士フイルム、JFE。
■業績推移
益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2007年にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツ作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
【関連リンク マネックス証券より】
・優秀な人の予想が当たるわけではない
・評価の高い最高益更新予想の12月決算銘柄は
・2019年2月米国雇用統計プレビュー
・上値が重い展開 - 株価の目途は?
・みずほ大幅下方修正。見た目ほど悪くはないが…:5つの疑問と将来性