外国人投資家の投資スタンス

米国経済,日本株
(画像=Bankoo/Shutterstock.com)

金融緩和のスタンスがあまり変わらない状況であれば、基本的に、米国と日本の株価は連動する。背景には、米国経済が良くなれば日本経済も良くなり、米国経済が悪くなれば日本経済も悪くなることがある。

もう一つ、日本の株式市場で売買をしているのは、個人や年金基金等の日本の法人と色々あるが、その中で一番売買のウェイトが大きいのは、外国人投資家である。日本の株売買の6割から7割が外国人投資家によるものである。中でも、母国が米国の外国人投資家が多い。

彼らの中には、日本経済の状況を見て投資をする投資家もいるが、米国経済さえよくなれば、米国人投資家は、それだけ運用する資金に余裕が出てくる。そうなると、リスクを取って、色々な資産を買いやすくなる。結局、米国経済が良くなって、米国人投資家の懐が温まってくれば、必然的に日本の株も買われることになる。逆に、米国経済が悪くなって米国の株価が下がると、米国人投資家は損失が発生し、その損失を穴埋めしなくてはいけない。そうなると、海外に投資をしている資産を売ることによって米国にお金を還流させるわけである。

つまり、米国経済が悪くなれば、外国人投資家が日本の株を売って米国に資金を戻すため、そのような資金の流れからも連動性が高いということがいえる。そうしたことから、米国経済に振り回される日本市場ということになり、特に株式市場は米国の要因が大きくなるのである。

金利の関連性

米国と日本は、金利もかなり連動している。金利というのは、国債の利回りのことである。日本国債における外国人の売買比率は日本株ほど高くはないが、それでも連動する。

国債とは、政府がお金を調達するために発行する債券のことであり、利息が何%で満期まで持っていたときにいくら元本が返ってくるかということが決まっている。それに対して、買うときの値段が変動することによって、最終的に返ってくるお金との関係から、利回りが計算される。

そうすると、国債の人気が出れば、その時点で買う国債の値段が上がることになる。つまり、満期まで持っていたときに返ってくるお金に対して、買うときの値段との差が少なくなるため、その場合は利回りが低くなる。

このため、国債の人気が上がって国債が沢山買われると、金利は下がるということになる。逆に国債の人気が下がると、その時点で買う国債の値段は下がる。満期に戻ってくる金額は決まっているため、その差が大きくなる。つまり、国債の利回りが大きくなるのである。

国債の人気が出るのは、基本的には景気が悪い時である。簡潔に言えば、株はリスク資産、国債は安全資産である。株は個別企業が発行しているため、無配になることや倒産するリスクもある一方、その企業の成長性が高ければ、無限大に株が上がるという期待もある。いわゆるハイリスク・ハイリターンである。それに対して、国債は政府が発行しているため、基本的に安全性が高い。満期まで持っていれば、元本と利息が確実に入ってくる。このため景気が悪い時は、株だとリスクが大きいということで、運用先として、安全な国債にお金が集まってくるのである。

逆に景気が良い時には、株のほうが儲かる可能性があるということで、国債が売られて金利が上がる。そうなると、米国と日本の経済は連動性が高いため、当然米国の経済が悪くなって金利が下がれば、日本の景気も悪くなり、金利も下がるのである。

もう一つの側面として、専門用語で「裁定が働く」ということがある。意味を説明すると、世界の投資家というのは、グローバルな視点で、どの国の金融資産で運用すれば一番儲かるかということを考えて運用する。

例えば、同じ安全資産である米国の国債と日本の国債を持っているときに、米国の金利が上がったとする。そうなると、米国の国債で運用した場合の利回りが高くなるため、資金のシフトが起こる。つまり、日本の国債が売られるため、日本の金利は上がることになる。一方で、米国の国債は買われるため、米国の金利は下がるという圧力がかかる。

つまり、世界の先進国で考えれば、国債の実質利回り、つまり物価の変動分を除去した実質的な金利の水準は、どこかの国だけが突出して儲かるような金利にとどまることは基本的にあり得ないと言う事になる。それが「裁定が働く」ということなのである。結局、世界の金利は連動している部分があるため、金利の指標においても、米国経済の影響が大きいのである。

永濱利廣(ながはま としひろ)
第一生命経済研究所 経済調査部 首席エコノミスト 1995年早稲田大学理工学部卒、2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年4月第一生命入社、1998年4月より日本経済研究センター出向。2000年4月より第一生命経済研究所経済調査部、2016年4月より現職。経済財政諮問会議政策コメンテーター、総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事兼事務局長、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使。

【関連記事】
分散投資に注目のコモディティETF。メリットとデメリットを解説
短期投資におすすめの手法と金融商品は?注意すべき点も解説
株式投資で成功するために欠かせない「セクター」の考え方とは?
何%で売却する?株式を売るタイミングはこう決めよう!
「投資を10万円ではじめたい!」何から始める?どんな投資先がある?