株主優待には一定の株価下支え効果がある場合も

日本株銘柄フォーカス
(画像=cosma/Shutterstock.com)

3月26日(火)に3月末決算銘柄の権利付き最終日をむかえます。株主優待や配当など株主としての権利を獲得したい場合、26日の取引終了時点で銘柄を保有している必要があります。

筆者は株主優待について、個人投資家の皆様にとってメリットの多い制度だと考えています。その理由は大きく3つあります。それは(1)株主優待には一定の株価下支え効果がある(2)目先の株価に左右されずに中長期的に銘柄を保有しやすくなる(3)家族に投資を応援されやすくなることです。

(1)の株主優待には一定の株価下支え効果があるについてですが、もちろん「株主優待を出す銘柄の株価は下がらない」と申し上げているわけではありません。そうではなく、企業の業績が一時的に悪くなった際などにも優待目的の買いが入ってきやすいため、優待を出さない銘柄に比べると株価が下がりにくい効果があるということです。以下の表をご覧ください。

日本マクドナルドホールディングスの業績推移
(画像=マネックス銘柄スカウター)

上の表は日本マクドナルドホールディングス(2702)の2007年12月期以降の業績推移です。覚えている方も多いと思いますが、日本マクドナルドは異物混入などもあって深刻な客離れを起こし、業績が大きく落ち込みました。表の赤色の線で囲った部分です。その後は積極的な新商品の投入や巧みなマーケティングの成果などから業績はV字回復しました。表で青色で囲った部分です。それでは日本マクドナルドの株価の推移をご覧ください。

日本マクドナルドホールディングスの株価推移
(画像=マネックス証券投資情報サイト)

業績の悪かった赤色の時期も株価が大きく下げていないことがご覧いただけると思います。その後業績が回復するに従って株価は大きく上昇しました。本来企業の業績と株価は密接に連動します。日本マクドナルドほどの劇的な業績の落ち込みがあれば株価は大きく下落していて当然です。しかし、日本マクドナルドの株主優待は非常に人気があるため、少しでも株価が下がると優待目当てで買っておこうという投資家が買いを入れてきたため、株価が下がりにくかったと考えられます。

続いて(2)の目先の株価に左右されずに中長期的に銘柄を保有しやすくなるという点です。少しでも株価が下がると不安な気持ちになるという方は多いと思います。反対に少しでも株価が上がると売ってしまい、大きな利益につながらなかった経験を持つ方も多いのではないでしょうか。筆者も当然どちらの経験もあります。上でも述べたとおり、企業の業績と株価は密接にリンクします。ということは、長期的に業績が成長していける企業であれば長期的に株価は上がっていくはずです。

株主優待から少し話がそれますが、2002年末のTOPIXは843.2ポイント、10年後の2012年末のTOPIXは859.8ポイントとほぼ同水準でした。では、この期間で上昇していた銘柄・下落していた銘柄の割合はどの程度だと思われますか?以下の表をご覧ください。

2002年末と2012年末の株価を比較した際の上昇比率や騰落率

2002年末と2012年末の株価を比較した際の上昇比率や騰落率
(画像=QUICKデータよりマネックス証券作成 2002年末時点で上場しており2012年末の株価と比較できた2,184銘柄について集計)

10年間でTOPIXはほとんど変わっていないにもかかわらず、全体の6割以上の銘柄が上昇しその平均騰落率は60%近くになっています。さらに、時価総額の小さい小型株に絞ると7割近くが上昇して平均騰落率は71%になっています。このように株価指数が冴えない時期でも、株式投資で長期的なリターンを得ることは可能です。長期的に株式を保有することは苦手だという方も、株主優待という定期的にプレゼントが送られてくる楽しい仕組みを活用すれば長期間銘柄を保有しやすくなるのではないでしょうか。

最後に(3)家族に投資を応援されやすくなるという点ですが、まだまだ日本では「株式投資はギャンブルである」という考え方を持つ方が多く、株式投資をしていても家族から良い顔をされない場合があると思います。筆者も10年ほど前にマネックス証券に就職すると伝えたところ、「ギャンブルのようなことをやっている証券会社に就職するのはやめなさい」と家族から反対されました。しかし、株主優待という定期的に送られてくるプレゼントを使ってご家族やご友人をもてなしてあげれば、きっと株式投資の楽しさが理解されやすく、応援してもらいやすくなるのではないでしょうか。

業績好調で3月に株主優待の権利が取れる銘柄は

だいぶ前置きが長くなってしまいましたが、本レポートでは3月26日に保有していれば株主優待の権利を取得できる銘柄から、業績が好調で割高感も低い銘柄をご紹介します。

具体的なスクリーニング条件は以下のとおりです。

・東証に上場
・3月26日に保有していれば株主優待の権利を得られる
・直近16四半期のうち12四半期以上で前年同期比増収、経常利益が増益
・予想PERが20倍以下

3月に株主優待の権利が取れる業績好調で割高感の低い銘柄

3月に株主優待の権利が取れる業績好調で割高感の低い銘柄
(画像=3月20日時点のQUICKデータよりマネックス証券作成)

ピックアップされたのは表に示したとおり、大和ハウス工業(1925)、アビスト(6087)、全国保証(7164)、ユニゾホールディングス(3258)、日進工具(6157)、東海旅客鉄道(9022)、あらた(2733)、テクノクオーツ(5217)、リックス(7525)、旭情報サービス(9799)、新日鉄住金ソリューションズ(2327)、マツモトキヨシホールディングス(3088)、セーレン(3569)、パピレス(3641)、早稲田アカデミー(4718)、セントラルスポーツ(4801)、ノリタケカンパニーリミテド(5331)、セイノーホールディングス(9076)、中央倉庫(9319)、KDDI(9433)、日本空港ビルデング(9706)、サンドラッグ(9989)の22銘柄でした。

中でも筆者はマツモトキヨシホールディングス(3088)、パピレス(3641)、セイノーホールディングス(9076)、中央倉庫(9319)、日本空港ビルデング(9706)の5銘柄に特に注目しています。最後に5銘柄の概要と株主優待の内容をご紹介しますのでご参考いただければ幸いです。企業概要と業績推移の出所はマネックス銘柄スカウター、株主優待の出所はマネックス証券ウェブサイトです。

●マツモトキヨシホールディングス(3088)

■企業概要

大手ドラッグストアチェーン。首都圏の一等地の店舗を中心に、繁華街や駅ビル都市型ドラッグストア・郊外型のドラッグストア・調剤併設型のドラッグストア、医療モールや大型病院前の調剤専門薬局を運営。グループ店舗数1617(2018年9月)。次世代ヘルスケア店舗・PB商品開発・免税店対応店舗拡大を推進。オークワ、キョーエイ、イズミ、スーパーバリューなどと積極的にフランチャイズ契約。2009年ローソンと業務提携、2012年仙台中心のダルマ薬局・2013年杉浦薬品・ぱぱす・示野薬局を子会社化。2015年初のアウトレットモールへの出店、ヘルスケア店舗開設、海外第1号店をタイにオープン。オリジナルブランド「matsukiyo」発表。2018年京成ストアとフランチャイズ契約。

■業績推移

マツモトキヨシホールディングス(3088)
(画像=マネックス証券)

■株主優待

マツモトキヨシホールディングス(3088)
(画像=マネックス証券)

●パピレス(3641)

■企業概要

電子書籍販売サービス会社。電子書籍の販売(600社超の出版社から電子書籍を収集、ネットワーク経由で情報端末利用者に配信)、提携店を通じた電子書籍販売、電子書籍投稿&編集プラットフォーム運営を営む。電子書籍(小説、趣味・実用書、ビジネス書、コミック、写真集等)販売のプラットフォーム「電子書店パピレス」「電子貸本Renta!」「分冊販売の犬耳書店」を運営。アメリカ・中国・台湾・韓国など各国のキャリアや電子書籍サイトと提携、漫画コンテンツを提供。2012年電子書籍投稿サイト「upppi」開設。2013年複合カフェ運営のランシステム<3326>と提携。2015年「Yahoo!ブックストア」運営のGYAOと合弁会社設立。2018年インフォコム<4348>と資本業務提携。

■業績推移

パピレス(3641)
(画像=マネックス証券)

■株主優待

パピレス(3641)
(画像=マネックス証券)

●セイノーホールディングス(9076)

■企業概要

西濃運輸(路線トラックの業界最大手)を中核とする持株会社、大垣本社。輸送事業(宅配・引越・貸切運送、貨物利用運送、倉庫、国際輸送)、自動車販売(カーディーラー)、物品販売、不動産賃貸事業を営む。物流拠点間の路線トラック便/貨物輸送で国内トップシェア。主力は小口商業貨物である宅配「カンガルー便」・引越・貸切等の貨物自動車運送。2009年西武運輸を西武グループより買収。2013年大規模災害発生時の相互協力で福山通運<9075>と業務提携。2015年関東運輸をグループ会社化。2016年トヨタホーム岐阜を完全子会社化。阪急阪神ホールディングス<9042>と資本業務提携に向け協議開始。2018年防災・減災の新事業を開始。

■業績推移

セイノーホールディングス(9076)
(画像=マネックス証券)

■株主優待

セイノーホールディングス(9076)
(画像=マネックス証券)

●中央倉庫(9319)

■企業概要

京都が地盤の物流会社。倉庫業(倉庫証券、保税蔵置場、トランクルーム、定温・定湿保管、危険品保管、流通加工、賃貸)、運送業(貨物利用運送、貨物自動車運送)、国際貨物取扱業(梱包、通関)の3事業を営む。京阪神・東海・関東・中国・北陸地区を中心に多機能倉庫を配備、総合物流センターを展開。国際物流では各拠点にインランドデポ(内陸保税蔵置場)を配備、ワンストップサービスを提供。その他、ビジネスサポート部門ではトランクルーム・美術品専用ロッカー等のサービスを提供。2005年安田倉庫と業務提携。2016年現業部門を会社分割によって新設(中央倉庫ワークスを設立)。

■業績推移

中央倉庫(9319)
(画像=マネックス証券)

■株主優待

中央倉庫(9319)
(画像=マネックス証券)

●日本空港ビルデング(9706)

■企業概要

旅客ターミナルビルの管理・運営会社。羽田空港国内線・国際線旅客ターミナルビルのオーナー企業として施設の家賃収入・管理運営・警備業務、旅客サービス・物品販売・飲食サービスを展開。成田・関西・中部国際空港では物品販売・飲食サービスを営む。ロボット等最先端技術の開発・導入、ビジネスモール開発を推進。2011年JALUX<2729>、双日<2768>と空港リテール事業で資本業務提携。2014年三越伊勢丹と市中免税店会社を共同設立。2015年ビックカメラ<3048>と免税販売の合弁会社設立(Air BIC)。2017年パラオ国際空港の運営事業に参画。2018年東京国際空港ターミナルを連結子会社化。

■業績推移

日本空港ビルデング(9706)
(画像=マネックス証券)

■株主優待

日本空港ビルデング(9706)
(画像=マネックス証券)

以前のレポートでご紹介した銘柄の株価パフォーマンス

最後に以前のレポートでご紹介した銘柄の株価パフォーマンスをお示しします。

3月8日付レポートでご紹介した第3四半期決算で業績好調な内需関連企業で割高感のない銘柄の株価パフォーマンス

3月8日付レポートでご紹介した第3四半期決算で業績好調な内需関連企業で割高感のない銘柄の株価パフォーマンス
(画像=3月20日時点のQUICKデータよりマネックス証券作成)

表の通りご紹介した18銘柄の平均騰落率は+3.6%と同期間のTOPIXの+2.7%を上回るパフォーマンスを示しています。また、下の表は特に注目の5銘柄としてご紹介した銘柄です。

特に注目の5銘柄としてご紹介した銘柄の株価パフォーマンス

 特に注目の5銘柄としてご紹介した銘柄の株価パフォーマンス
(画像=3月20日時点のQUICKデータよりマネックス証券作成)

平均騰落率は+3.4%と18銘柄の平均よりも若干下がってしまいましたが、いずれの銘柄もプラスリターンを確保しTOPIXを上回る騰落率を得ることができています。

益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2007年にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツ作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。

【関連リンク マネックス証券より】
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