海外投資家が日本株市場に戻ってこない。昨日、東京証券取引所が発表した3月第4週(3月25日~3月29日)の投資部門別株式売買動向(東京・名古屋2市場、1部、2部と新興企業向け市場の合計)によると、海外投資家は9週連続で売り越した。今年になってからわずか1週しか買い越しの週がない。

しかし、集計はあくまで3月分までだ。来週に発表される4月第1週の集計分は買い越しに転じていると期待する。というのは、海外投資家の売買動向には季節性があり、例年4月は突出した買いが見られるからだ。

海外投資家の売買差引(2000年以降の累計額)

海外投資家の売買差引(2000年以降の累計額)
(画像=東京証券取引所のデータをもとにマネックス証券作成)

日本では4月は新年度のスタートで年金基金など中長期の投資家が新年度の企業業績に目を向けやすい時期だからということが、その背景としてよく言われる。実際に、4月に次いで買越額が多いのは11月と10月で4~9月期決算の発表の時期だ。

兆しは見える。3月第4週売越額は744億円だった。前の週は3785億円の売り越しだったから、依然売り越しながらも売り越し額は相当縮小している。

ところが今年は例年のような「4月の外国人買い」が不発に終わるのでは…という声が一部にある。理由はシンプルで、足元の景況感が悪く、当然企業業績も芳しいものにならないから、というのだ。確かに、世界景気の減速が懸念されるなか、我が国の景況感も一段と悪化している。4月1日に日銀が発表した3月の短観では、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は12となり、前回の2018年12月調査から7ポイント低下。2四半期ぶりの悪化で、低下幅は12年12月以来6年3カ月ぶりの大きさだ。

これだけ景況感が悪ければ、「4月の外国人買い」は今年は期待できないか、とも思われるが、そうとも限らない。というのは、2016年4月もしっかりと海外投資家は日本株を買い越した実績があるからだ。2016年の春は、いまよりはるかに景況感が悪かった。前年の2015年夏にチャイナショックが発生、株価も大きく落ち込んだ。2015年末から16年初めにかけては景気減速を背景に原油価格が急落し再び株安を招いた。海外投資家も16年の年初からずっと売り越しが続き、特にその年の3月第2週には1兆2000億円弱という1週間の額としては記録的な大幅売り越しとなった。ところが、4月になるとやはり買い越しに転じたのであった。

前述した通り、チャイナショック、原油安と続き、その2か月後にはEU離脱を問う英国の国民投票という不透明感を伴う大きなイベントを控えていたにもかかわらずである。

そして今年の外国人買い不発予想の根拠となっている景況感はいまより悪かった。具体的に言えば、短観のDIが6年ぶりの落ち込みといっても水準で言えば、今はまだ「12」。16年の4月に発表された3月短観は、その前回12月の「12」から半減となる「6」という水準であった。こうした状況にもかかわらず、外国人はやはり4月には買い越した。2016年は景気循環の面では悪化していた景気が年央で底入れし、年後半から回復に向かった。現在の状況は2016年に類似しているように見える。足元の景況感は悪いが、米国半導体メーカーの景況感改善や中国PMIの反転など一部に年後半の景気回復を予見させる要素も散見される。こうしたことを考慮すれば今年も「4月の外国人買い」を期待してよいのではないか。4月の海外投資家の買い越しは2000年以降昨年まで18年連続だ。多少景況感が悪くても途切れるようなアノマリーではないと思われる。

広木 隆
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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