
個人でのブルワリー設立の難しさは?
順風満帆に見える『ガハハビール』だが、やはり苦労や不安もあったという。「醸造所設立にあたって、賃料が安いことのメリットは計り知れない」と馬場さんは語る。ちなみに、酒類等製造免許の申請には2つのポイントがある。
1、年間で6キロリットルを販売できる計画があること
2、醸造する場所が決定していること
最低でもこの2点が申請時に必要なため、まず店と醸造所になる物件の契約を済まさなければならない。つまり、免許が下りるまでは、クラフトビールを製造できないのに賃料は発生するという苦しい状態が続くのだという。「酒類等製造免許が下りるまで8か月かかりました。それまでは辛かったですね。ランニングコストを低く運営できる体制は、資本がない個人でのマイクロブルワリー設立には必須かもしれません」と当時を振り返る。
実際、醸造用のタンクなどは業務用の寸胴鍋を加工したり、ビアタップの取りつけなどを可能な限り自分達で行ったりして、費用を浮かす工夫をしたという。

ブルワリー設立には、やはり相応の準備や労力が伴う。しかし、まったくの夢物語でもないことを、馬場さんら先駆者たちが身をもって証明してくれている。「嬉しい誤算が重なったし、運がよかった。仲間やお客さんに恵まれたと思っています」と馬場さんは語るが、「居酒屋ブルワリーパブ」というコンセプトをブレずに貫いたことが、いい結果に結びついているように思えた。
最近はブルワリー併設の飲食店を出店しようと計画する人も少なくない。ブルワリーが併設されているだけで飲食店としては十分に魅力的ではあるものの、馬場さんのように、クラフトビールを提供するだけではなく、そこに新たな価値をプラスすることが、今のクラフトビール戦国時代には必要なことなのかもしれない。

馬場哲生(ばば・てつお)
1978年生まれ。映画監督を目指し映像関係の仕事に携わるが、結婚を機に飲食業に転職。海鮮系の居酒屋で料理修業を積み、2015~2016年「麦酒工房」で店長を務める。2017年6月に『横十間川酒造 ガハハビール』をオープン。馬場さんの豪快な笑い方、ガハハ笑いが店名の由来。
『横十間川酒造 ガハハビール』
住所/東京都江東区南砂2-3
電話番号/03-6659-7043
営業時間/10:00~22:00
定休日/月曜、第1・3・5木曜
席数/20
(提供:Foodist Media)
執筆者:あきのきりん