本記事は、野田和裕氏の著書『人生を全力で生き抜くためのデスマインド』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

ライフスタイル
(画像=Song_about_summer / stock.adobe.com)

人様に迷惑をかけない生き方よりも大切な生き方がある

日本では、「人様に迷惑をかけないように生きることが大切」という考え方が深く根付いています。幼い頃から折に触れて「他人に迷惑をかけないように」と教えられた方は多いでしょう。その結果、多くの日本人が、周囲に迷惑をかけないことを美徳として生きています。それ自体は素晴らしいことです。社会の調和を保つために、他人に配慮し、自分の行動を慎むことは重要な価値観です。

しかし、私は時折思います。「人様に迷惑をかけないように生きること」が最も大切なことなのだろうか。もっと重要な生き方があるのではないか、と。

私は、「自分の命は与えられたものだ」と認識しています。命が偶然に生まれたのではなく、私という存在がこの世に生を受けたのは、神が「その命を使って、全力で生きなさい」と使命を託したのだと考えています。それは私だけではありません。生きる者すべてが、自分にしかできない、他の誰にもできない、「何か」の使命を神から託されているのです。

だから私は、「人様に迷惑をかけないように生きること」よりも、自分の使命を見つけ、それを全力で果たすことこそが、人生で最も大切な生き方だと信じています。

私がこの考えに至った背景には、もちろんクリスチャンの家庭で育ち、神学を専門に勉強する機会に恵まれたことも影響しています。しかしそれだけではなく、実際に日常の中で「これこそが自分がやるべきことだ」と気づく瞬間が積み重なって今がある、という経験をしたことが、きっかけとして最も大きいと感じています。

人生には、予期しないチャンスや挑戦の場面に巡りあうことがあります。私はそのとき、迷わず手を伸ばし、受け取り、チャレンジすることが重要だと思っています。無理かもしれない。自分には大きすぎるかもしれない。そう思っても、目の前に掴むべき「使命」が現れたということは、偶然ではなく何らかの意味があるはずだからです。

クリスチャンは「神のなさることは、すべて時にかなって美しい。」(伝道者の書3章11節)という言葉を大切にしています。これは、神が定めた時や計画には、人間の理解を超えた美しさと完全さがあることを示しています。

この言葉は、困難な状況に直面しているときでも、「神の計画には意味があり、最善が用意されている」と信じる力を与えてくれます。また、人生の移り変わりや試練までもが、神の大いなるデザインの一部であり、そのすべてが「時にかなって美しい」という希望を伝えています。

だからこそ、自分の目の前に現れたチャンスを、精一杯手を伸ばして受け取り、きっと支えてくださる神を信じて、チャレンジをする。そういう生き方をすることが重要だと考えているのです。

私が30代前半で独立してキリスト教専門の葬儀社を設立したのも、「自分がこうした仕事に目が向いたのは、神がそういう気持ちを私の中に芽生えさせてくださったからだろう。だとしたら私の果たすべき使命はここにある」と考えたからです。周囲からは「今さらキリスト教専門の葬儀社なんて、苦労するばかりだよ」というアドバイスも受けました。それでも私は「自分の中にこういう考えが湧いたということは、神がその考えを私に授けてくださったからに違いない」と信じ、その時その時で、さまざまなチャンスを精一杯、手を伸ばして掴んできました。

だからこそ、20年近くキリスト教専門葬儀社の経営者として仕事を続けることができ、おかげ様でいくつもの支社を出せるほどに成長できている、と信じています。これはもちろん神の計らいであると同時に、それを信じてチャレンジしてきた私を、神が支えてくださったからだと確信しています。

ところが、人はつい「これをやったら人様に迷惑をかけるのではないか」と考え、行動をためらってしまうことがあります。しかし、「自分の命は与えられたものだ」という視点で考えると、それをすること自体が、自分に託された使命を果たす絶好のチャンスなのかもしれません。周囲に迷惑をかけることを恐れるあまりにその機会を逃すのは、人生において最も重要な「使命を果たす」というチャンスを、みすみす手放してしまうことになるのではないでしょうか。

もちろん、神に託された使命を果たすのは簡単なことではありません。ハードルはどんどん上がっていきます。だから私も「自分はこれでいいのだろうか」と問いかけない日はありません。この問いによって、自分の選択に迷いや不安を抱くこともあります。しかし、この問いがあるからこそ、自分を振り返り、より良い生き方を追求することができるのだと思います。

大切なのは、迷いや不安がある中でも、その瞬間ごとに「全力で生きる」ことです。一瞬一瞬を大切にしながら、与えられた命を最大限に生かす努力をすること。それが、私の考える「人様に迷惑をかけないように生きること」の枠を超えた生き方です。

もちろん、迷惑をかけることが良いと言いたいわけではありません。ただ、迷惑をかけることを恐れるあまり、自分が本当にやるべきことや挑戦するべきことを諦めてしまうのでは、せっかく与えられた命を十分に生かしきれないのではないかと考えているのです。

そもそも人は、人生の中で少なからず周囲に迷惑をかけながら生きています。親が子を育てるとき、教師が生徒を導くとき、大人になって新しい挑戦をするとき …… どの場面においても、迷惑をかけずにはいられません。しかし、その迷惑の中にこそ、人と人とのつながりが生まれ、感謝の心が育まれるのだと考えています。

私たちは皆、自分の命に託された「何か」の役割を果たすために生きています。その役割は、1人1人違うものです。他の誰にも真似できず、代わりに果たしてもらうこともできません。だからこそ、1人1人が自分の役割を果たすべく全力で生きることこそが、人生において最も重要なことだと私は信じています。

『人生を全力で生き抜くためのデスマインド』より引用
野田和裕(のだ・かずひろ)
葬儀終活実践アドバイザー/株式会社ライフワークス代表取締役

1974年福島県生まれ。東京基督教大学神学部卒業。祖父は、甲子園出場で有名な聖光学院高等学校の創設者。祖父の代よりキリスト教の精神に則った教育・福祉関連事業 (全国40事業所、従業員数1000人)を展開する実業家一族に育ち、幼少の頃からキリスト教精神を学ぶ。
2006年、31歳でキリスト教に特化した葬儀会社を創業。これまでに延べ4000人の葬儀をサポートし、創業20年目を迎える。現在、鎌倉・京都・大阪・東京の4オフィスまで事業を拡大し、日本最大のキリスト教葬儀社となっている。
セミナー実績は、日本全国のキリスト教系の団体500ヶ所で開催、延べ1万人が参加し、わかりやすい内容で定評がある。キリスト教系メディアでの取材も多く、クリスチャン経営者として国内で高い知名度を誇るひとりである。 著書に『ビジネスで勝ち抜くための聖書思考』(ぱる出版)がある。

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