本記事は、野田和裕氏の著書『人生を全力で生き抜くためのデスマインド』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

デスマインドを持つと、時間を大切にできる
「時間はすべての人に平等に与えられた唯一の資源」とも言われます。しかし、多くの人が本当に時間の重要性を実感するのは、「自分の人生の持ち時間は限られている」と気づいた瞬間です。その時点に至るまでは、私たちはつい日々の忙しさや日常の流れに身を任せてしまい、本当に大切なことを後回しにしがちです。そんな中で、デスマインドを意識することは、時間を大切にする生き方を可能にし、人生の質を大きく向上させる鍵となります。
あなたには、「いつかやろう」と思っていることはありませんか? 旅行、趣味、子どもの頃からの憧れだった何かへの挑戦、友人や家族との再会……。それらは本当に「いつ」やるのでしょうか? あなたが積極的に行動を起こさない限り、「いつか」という日は永遠に来ません。あなたが何もしないのに、向こうから「いつか」と思っていたチャンスが転がり込んで、「いつかやろう」と思っていたことがするすると実現する。そんなことはあり得ないのです。
なぜ断定できるのか。あなたはずっと「いつかやろう」と思いながら、実際にはそれをしていません。もしかしたらこれまでにも、「今だ」という瞬間があったかもしれません。それでもあなたは「それはまた、いつか。今じゃない」と思ってきたのではないでしょうか。ということは、まさにあなたが思っていたとおりの「いつか」ドンピシャのオファーが来たところで、「うーん、今じゃなくて、いつか、ね」と先延ばしにしてしまう可能性が限りなく100%に近いのです。「いつかやろう」というのは、自分がやりたいこと、したいことを「今ではない未来」に先延ばしにしているだけです。まるで自分の人生が永遠に続くかのように。
けれども、ここまで述べてきたとおり、人生は有限です。しかも、身体も頭も元気に動く時間というのは、そんなに長くはありません。何の行動を起こすこともなく、死の間際になって「ああ、あれをすればよかった」と悔やんでも、もう遅いのです。あなたは、そんな悔いの残る人生の終わりを迎えたいですか?
あるコピーライターが書いた名コピーがあります。「いつかやろうは、バカヤローだ」。言葉は美しくありませんが、これが人生の真実ではないでしょうか?
でも、もしあなたがデスマインドを持っていたら、「いつか」を「今」に変えられます。
デスマインドを意識するということは、「自分の死」を直視し、「限られた時間をどう使うか」に向き合うということです。この視点を持つと、「いつかやりたいこと」が「今やるべきこと」へと変わります。それは、デスマインドが、「もし今日が人生最後の日だとしたら、何をするだろう?」と問いかけてくるからです。これに答えようとすると、日常の中で後回しにしていた「いつか」が突然、「すぐにやるべきこと」として目の前に現れてくるのです。
例えば、「いつか海外旅行に行きたい」と思っているだけでは、忙しさや金銭的な不安を理由に、動けないまま終わってしまう可能性は高いでしょう。しかし、デスマインドを持つと、「その『いつか』を『本当』にするために、今すべきことは何か?」という具体的な行動に目が向きます。結果として、貯金を始めたり、休暇の計画を立てたり、現地の様子を調べたりと、小さな一歩が踏み出せます。
こうしてデスマインドは、「いつか」を実現するきっかけになります。そして、「いつか」を実現したら、その先に待っているのは、単なる達成感だけではありません。それは人生における充実感そのものです。「やりたいことをやった」「大切な人と過ごせた」という体験は、後悔を減らし、未来に希望を持てる自分を作り出します。
また、「いつか」の実現は、思いもよらなかった新たな可能性を切り開くことにもつながります。例えば、ずっと興味があった分野に挑戦することで、新しい経験や人間関係が得られるかもしれません。さらに、こうした「いつか」の実現が重なれば、人生全体の質が上がります。「いつか」を実現することは、多くの価値を人生にもたらすのです。
デスマインドを意識することで、「いつか」が「今」に変わると、日々の時間の使い方に対する意識も変わります。日常生活においても、「この時間をどう使うべきか」を考える視点が自然に生まれるのです。
例えば、これまで漫然とテレビやスマホを見て過ごしていた時間が、家族との会話や趣味の時間に変わるかもしれません。仕事に追われていた時間が、自分の成長やリフレッシュのための時間になることもあるでしょう。
あなたは、大切な家族や友人と過ごす時間、趣味に打ち込む時間、そして何気なく過ごすひとときすらも、実はとても価値のあるものだと気づいていらっしゃいますか?
自分の人生がいつか終わりを迎えると意識することで、こうした時間がどれだけ素晴らしいものかに気づくことができます。日常の中で「こんなことは当たり前」と見過ごしてしまいがちな瞬間も、死を意識することで「この瞬間は二度と戻らない貴重な時間だ」と思えるようになります。
デスマインドは、「あなたの人生で何を捨て、何を大事にするべきか」を教えてくれるのです。
あるとき、私がご葬儀で対応した故人の男性は、長い人生をかけて家族を支えてきた方でした。彼は、家族や友人との時間を何よりも大切にし、最期の時には「本当に幸せな人生だった」と微笑んでいたとご家族から伺いました。
こうした方に出会うたびに、「自分の人生もこのようでありたい。そのためには、地味なことの連続でも、その一瞬一瞬を大切にしていきたい」と強く感じるのです。

1974年福島県生まれ。東京基督教大学神学部卒業。祖父は、甲子園出場で有名な聖光学院高等学校の創設者。祖父の代よりキリスト教の精神に則った教育・福祉関連事業 (全国40事業所、従業員数1000人)を展開する実業家一族に育ち、幼少の頃からキリスト教精神を学ぶ。
2006年、31歳でキリスト教に特化した葬儀会社を創業。これまでに延べ4000人の葬儀をサポートし、創業20年目を迎える。現在、鎌倉・京都・大阪・東京の4オフィスまで事業を拡大し、日本最大のキリスト教葬儀社となっている。
セミナー実績は、日本全国のキリスト教系の団体500ヶ所で開催、延べ1万人が参加し、わかりやすい内容で定評がある。キリスト教系メディアでの取材も多く、クリスチャン経営者として国内で高い知名度を誇るひとりである。 著書に『ビジネスで勝ち抜くための聖書思考』(ぱる出版)がある。※画像をクリックするとAmazonに飛びます。