本記事は、野呂 エイシロウ氏の著書『道ばたの石ころ どうやって売るか? 頭のいい人がやっている「視点を変える」思考法』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

道ばたの石ころ どうやって売るか? 頭のいい人がやっている「視点を変える」思考法
(画像=snowdrop/stock.adobe.com)

視点を変えれば「自分が輝ける道」が見つかる

これからの時代は、フリーランスだけでなく会社勤めの人であっても、人とは違う「自分だけの立ち位置」を見つけることは重要です。そうすれば、代わりの利かない人材になれますし、あなたがどんな発言をしようとも、「あの人だから信頼できる」「あの人の言うことは間違いない」と思われます。
では、そうした自分だけの立ち位置、言い換えれば「自分の生きる道」をどうしたら見つけることができるでしょうか。そうした悩みにも、「視点を変える」思考法は有効です。

私が駆け出しの放送作家だった時に、会議についていけなかったお話をしました。
参加者がみんな、とにかくものすごい勢いでしゃべるのです。もう33回転のレコードを45回転で聞いている感じでした。

私は学生時代に地元の名古屋で、アルバイトではありますがテレビ番組の制作に関わったりしていましたから、少しは自信がありました。でも、東京でテレビ番組の会議に出た瞬間、「東京と名古屋はこんなに違うんだ。高速道路を横断しているようだな俺。これはもう死ぬぞ」と思ったくらいです。
半年間は減っていくお金とも闘いながら、何とか食いつなぐ生活をしていました。
タンカを切って東京に出てきたし、名古屋に帰るにも恥ずかしい。そこから面白さって何だろうと真剣に考えました
努力を積み重ねて、徐々にヒットを生み出すようになって、放送作家と呼ばれる位置に登ることができたのですが、次の壁が待っていました。それは私がどうやってもかなわない人たちの存在です。

テレビ業界にはすごい方がいて、たとえば小山薫堂さん、秋元康さん、おちまさとさん、鈴木おさむさんなど、これはどうやったってかなわないなという人が業界のトップに君臨しているのです。

私もこの業界でかなり登り詰めたけど、さすがに彼らのような頂点にはいけないと思った時に、視点を変えて考えてみました。
放送作家で頂点を極めるのが無理なら、別の山を登ろうと思ったのです。そこで思いついたのは、放送作家がまだ誰も目をつけていなかった「ビジネスに放送作家としてのノウハウを活かす」ことです。
このビジネスの山は、おそらく放送作家で登っている人はほとんどいないと思います。もしも私が放送作家業界の山を登り続けていたとしても、その頂上の景色を見ることはできないかもしれません。でも、違う山を登り始めて頂上を目指す位置につけたのです。

この考え方は、あなたがその世界で「人とは違う自分」を探す際のヒントになります。
例えば、あまたの経営者が目指す山を仮に富士山だとします。2022年の国税庁の調査によると、全国に法人数は291万5,000社近くあります。仮に290万人の社長がいるとしましょう。富士山は290万人が登っている山です。
このうち6割が赤字の会社といわれています。つまり、174万人が6合目までにひしめき合っています。5合目までバスで行けますから、ギリギリ赤字の社長も登り始めてちょっとのところです。
残りの4割の社長は頂上を目指して登っているわけですが、仮に同じ速度で登っているとするならば、9合目まで登っている人が約123万人、9合目から頂上を目指している人は約3万人です。
ただし、富士山の頂上から眺めている〝兆〞という年収を稼ぐ社長は、たった5人です。
ちなみにその5人は、ファーストリテイリングの柳井正さん、ソフトバンクの孫正義さん、キーエンスの滝崎武光さん、サントリー会長の佐治信忠さん、ディスコの関家一馬さん(とその一族)です(2024年長者番付)。

ここで考えてほしいのは、あなたはこんな山を登りたいかということです。私にはとてもじゃないですが無理です。しかも、私の場合は同じ発想をしていると飽きてしまう自分を知っているだけに、別の山を探します。もちろん、別の山ですから麓(底辺)から登り始めます。でも、同じ山を登っている人の数が違うので、努力すれば頂上に行ける山かもしれない。

そこで私が選んだのは、「放送作家+ビジネス」という山。その山に今の自分がいます。頂上かどうかは分かりませんが、自分が生きやすい山にいることは確かです。

さて、そんな山ですが、考え方の基本としては、あなたがどんなコミュニティーの中で活躍できるかを思い浮かべてみればいいでしょう。

山には必ず頂上がありますが、それぞれの山には高さ、そして登る人の数が存在します。これは言い換えれば「ヒエラルキー」そのものです。
私の場合はテレビ業界の放送作家というヒエラルキーのなかで、とてつもない巨人が頂上にいて、別の山も探し始めた訳です。

ビジネスパーソンにとって分かりやすいヒエラルキーは、会社における肩書です。
例えば、企業に入って係長、課長、部長、役員、社長といった山に登り詰める人もいます。ただ、この山で頂点を極める人は総従業員の中でたった1人です。
しかも、会社が合併されれば山を登る人の人数は増えますし、ましてや会社が倒産という憂き目にあえば、登る山すらなくなってしまいます。
今、会社が安定とは限らない、そんな時代に生きています。だからこそ違う山、自分が生き残るために必要な山を登らなければならないのです。
それは、人とは違う自分を発揮できる山です。できれば登る人の少ない山を探すことです。社内には「宴会部長」や「サークル部長」など低い山があると思いますが、それはそれでいいと思います。でも、それが仕事のできる人かどうかや収入に直結するかどうかは別です。
では、あなたにとっての山とは何でしょうか。それを考える時に、今までお話ししてきた「視点を変える」という考え方が活きてきます。

まずは、今いる(あるいは目指そうとしている)山を考えてみてください。そこにはどれくらいの人がいるのか。会社では? 業界全体では? 収入では?
さらにその山は、あなたにとって生きやすいのか? 生き残れるのか? 高いのか低いのか? 頂上にたどり着けるのか?
視点を変えられない人にとって、会社で自分を活かす道、収入を増やす道は「出世レース」で勝つことしか思い浮かばないかもしれません。会社の出世レースという山を登るのであれば、最終的に同期で頂点を極められるのは1人です。いや、1人もいないかもしれません。会社の規模にもよりますが、かなり厳しい山でしょう。
あなたは、それに挑みますか? 出世レースに敗れたらあなたはただの負け犬なのでしょうか?
そこで視点を変えて、出世レース以外のところに目を向けてみれば、肩書にとらわれず自分を活かす道があります。
特定のジャンルのスペシャリストになってもいいですし、営業パーソンであれば「このお得意先は自分でなければ首を縦に振ってくれない」でもいいでしょう。あるいは、可能であれば社内で新規事業に取り組んでもいいでしょう。

例えば、語学が得意な人は「語学の山」というのがあります。「英語の山」は人が多いと思いますが、「中国語の山」「韓国語の山」などはそれよりも低い山になるはずです。もちろん学んでいる人の少ない外国語ならさらに低くなります。海外事業を手掛けている会社であれば、こうした山を登ってもいいと思います。

また、他に「テクニックの山」というのも考えられます。「パワポの山」「エクセルの山」「アプリの山」など、専門化していけば山が低くなっていきます。

さらに「本の山」「雑学の山」といったものもあるでしょう。どんなジャンルの本や雑学に強いのか、あなたに聞けばOKという立場になれれば、頂上に登ることも難しくないかもしれません。

そこで、あなたが登りたい山を探すための参考になりそうな山を挙げてみます。
最後に、もしその山を登るのが困難だと感じたらどうすればいいでしょうか。
簡単です。その山からさっさと下りて、違う山を登ればいいのです。そして、どんどん違う山の入り口に向かえばいいだけですから。

・語学の山……英語・中国語・韓国語など(今ならヒンドゥー語やイスラム語などできれば、仕事につながるかもしれません)
・テクノの山……PCネットワーク(チャットワークやslackなど)、ソフト(パワポ、エクセルなど)、アプリ(SNS系、便利なアプリ)
・数字の山……原価計算、商品価格(物の値段)、税金(お得な仕組み)
・雑学の山……トレンド、生活ハックなど役立つ雑学
・政治経済の山……株式、日本・世界経済全般、金融知識
・本の山……小説、ビジネス書(仕事術、自己啓発など)

道ばたの石ころ どうやって売るか? 頭のいい人がやっている「視点を変える」思考法
野呂 エイシロウ
1967年愛知県生まれ。愛知工業大学卒。放送作家・戦略的PRコンサルタント。
『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。『ザ!鉄腕!DASH!!』『奇跡体験!アンビリバボー』『ズームイン!!SUPER』などにたずさわる。常に「面白い企画」を求められる状況に身を置いた経験から、独自の「視点を変える」思考法を編み出す。放送作家と並行して“戦略的PRコンサルタント"として活動中。一部上場企業をはじめ、数多くのクライアントの課題解決をサポートしている。
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