本記事は、野呂 エイシロウ氏の著書『道ばたの石ころ どうやって売るか? 頭のいい人がやっている「視点を変える」思考法』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

「すごいことを言おう」と思うと何も言えなくなる心理
あなたが友人も含めた複数人のグループでどこかに遊びに行ったとします。
そのなかに、あなたとは初対面の人がいて、共通の友人が「こいつ、めっちゃ面白いヤツだから! よろしく!」と言ってあなたのことを紹介してくれました。
共通の友人は、褒め言葉として言ってくれたようですが、あなたのプレッシャーは爆上がりです。
「えっ、そんな紹介されても、普段もたいして面白いことなんて言ってないよね」と内心思いますが、後の祭り。
とりあえず、初対面の人と挨拶を交わしますが、さっきの「面白いやつ」が呪縛となって次の言葉がスムーズに出てきません。結局、たいして話が盛り上がらないまま終わってしまった、なんて「あるある」じゃないでしょうか。
「面白いことを言おう」とか「すごいことを言おう」と思うと言葉が出てこなくなる体験は、プライベートだけでなく、仕事でもあり得ます。
会議の席で、なかなかいい意見が言えないという人は、「カッコいい」「素晴らしい」ことを言おうとしているのではないでしょうか。そう考えた途端に何を言ったらいいか分からなくなります。
自分で自分の発言のハードルを上げているのです。
だいたい、上手いことを言おうとすると視点を広げられなくなります。すごい意見でないといけないと思えば、思考の自由度がなくなります。考えを広げたり、深めたりできなくなるからです。
誰しも、他人から尊敬されたい「名誉心」のようなものは持っていると思います。しかし、だからといって「自分を大きく見せようとする」という人は、視点を変える発想が苦手なようです。
視点を変える発想ができる人は、得てして腰が低いものです。
本来、視点を変えようとするのであれば、自分の考えに制約を設けないほうがいいのです。そもそも「すごいことを言おう」なんて思わないほうがいいのですが、つい見栄を張って、カッコいいところを見せようとするのも人の性さがかもしれません。
こういう時に有効なのが、発言する前にハードルを下げておくことです。
例えば、「まだフラッシュアイデアなんですけど……」とか「まだ頭の中で整理がついていないのですが……」など前置きしておけば、少々、突拍子のない意見だったとしても言いやすいですし、聞くほうも心の準備ができているので批判したりしません。
私も仕事柄、さまざまな企業の会議に出させていただいていますが、周囲から「野呂さんのことだから、きっとすごいことを言うんじゃないか」と期待されている空気をまざまざと感じることがあります。こういう時に、期待に応えて目の覚めるような斬新な意見を言うなどということは1ミリも考えません。むしろ、期待されないように努力をします。「さっきまで何も思いつかなくて、ホントすみません」という感じで自分のハードルを下げています。
こういうふうに、期待値を下げておくことを、心理学では「ローボールテクニック」と言います。いきなり高い球を投げるより、低い球から徐々に慣らしていったほうが捕球しやすい、という意味です。
例えば、サブスクのサービスではよくある「最初の3カ月は無料」というケースもそうですし、「〇〇円で飲み放題」という居酒屋の張り紙につられて入ったらチャージ料がかかったみたいなケースも、ローボールテクニックのやり方です。
つまり、最初は低くということですから、会議や打ち合わせなどでも、「まだ整理ができていないのですが……」「アイデアベースでお話しするなら……」というふうにアイデアを投げておいて、きちんと準備をした企画案を言うのも手です。
準備をした自信の案があるのであれば、ハードルを下げておくとギャップが生まれ、聞いている人は驚いて、「すごいじゃないか」と称賛してくれるかもしれません。
また、ハードルを下げたうえで、いくつものアイデアを出してもいいでしょう。本命の案は最後にしたほうが言いやすいと思います。
視点を変えるためには、自分をすごく見せるよりも、むしろダメに見せるほうがいいのです。逆に、すごいところを見せてやろうと意気込む人ほど、たいしたアイデアは出ないものなのです。

『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。『ザ!鉄腕!DASH!!』『奇跡体験!アンビリバボー』『ズームイン!!SUPER』などにたずさわる。常に「面白い企画」を求められる状況に身を置いた経験から、独自の「視点を変える」思考法を編み出す。放送作家と並行して“戦略的PRコンサルタント"として活動中。一部上場企業をはじめ、数多くのクライアントの課題解決をサポートしている。
- 本当に頭がいい人は「普通の意見」を言わない
- 「普通のことしか言えない」人の頭の中
- 頭のいい人は「手段」よりも「目的」を意識する
- 普段から「コレ」をやれば視点を変えられる
- 視点がすぐに切り替わるテクニック
- 視点が変わると生き方が変わる