「電話しなくていい」のはビッグネームだから
最近、(トップクラスの)著名なビジネスパーソンのなかに、電話に出ないことを公言する人がいます。その影響か、電話をあまり使わない人が世代を問わず増えています。
ここで、誤解してはいけないのは、電話に出ないと公言する人たちは、その多くがビッグネームだということです。彼らは、情報は自ら取りに行かなくても集まり、ビッグネームゆえに交渉も容易です。だから、情報の取捨選択だけに集中すれば良いのです。
しかし、一般のビジネスパーソンは、情報を自ら取りに行く必要もあれば、タフな交渉だって必要です。そう考えれば、時間を有効活用できる「電話」を積極的に使うべきだと、私は思います。
むしろ私は、電話をする人が少なくなった今こそ、気軽に電話をして、仕事の効率を上げるチャンスだと考えています。自分を差別化することにもなりますしね。
優先順位は、「対面>電話>チャット>メール」
もう一つ、最近の変化として挙げられるのが、ビジネスチャットツールの登場です。
チャットツールとは、インターネット上で個人同士がリアルタイムにコミュニケーションを行うツールのことで、それがビジネスの世界にも進出しています。有名なものでは、「Slack」「Chatwork」「LINE WORKS」などがあります。
チャットには、メールにはないメリットが色々とあります。
たとえば、メールでは、重要なメールからメルマガまで、すべてのメールが1つの受信トレイに集約されるので、特定のテーマを探すのに時間がかかり、それが生産性を落としてしまっています。一方、チャットツールでは、仕事のテーマごとにグループが分かれているので、「あのメールどこだっけ……?」と探す手間が省けます。
また、リアルタイムでのやり取りにも優れ、ファイルや資料の共有も簡単です。このように、メールより便利な点も多いので、積極的に使っていくべきツールだと思います。
しかし、冒頭で述べた「仕事が進むスピード」や「1回のやり取りで伝えられる情報量」については、「対面」「電話」にまだまだ遠く及びません。というわけで、「対面→電話→チャット→メール」の順に、優先度を意識しておくのが良いと言えそうです。
ところで、メールやチャットなどの文字コミュニケーションの長所はなんでしょうか。
私は次の3つがあると思います。
1.文章が残るので、証拠能力があること
2.同じ文面を複数の人に一斉同報ができること
3.相手の時間を拘束しないこと
このどれかが必要な状況なら使いましょう。
そうでなければ、電話したほうが得策です。
河野英太郎(こうの・えいたろう)
日本アイ・ビー・エム部長/Eight Arrows代表取締役/グロービス経営大学院客員准教授
1973年、岐阜県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学水泳部主将。グロービス経営大学院修了(MBA)。〔株〕電通、アンダーセンコンサルティング〔株〕(現・アクセンチュア〔株〕)などを経て、日本アイ・ビー・エム〔株〕にて、コンサルティングサービス、人事部門、専務補佐、若手育成部門リーダー、サービス営業などを歴任。2017年に〔株〕Eight Arrowsを起業し、代表取締役に就任。著書に、ベストセラーとなった『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』『99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。(『THE21オンライン』2019年03月08日 公開)
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