2018年の相続法改正により、相続に関する法律が大きく変わりました。配偶者の居住権を保護する法律など、多岐にわたり改正された部分がありますが、今回、特に注目したい点は、遺言制度に関して、大きく見直しが入った点です。2019年より施行される新しい遺言制度について、何が変わったのか、今後どうなるのかについて、解説していきます。

遺言制度に関する法律の改定の概要は?

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(画像=fizke/Shutterstock.com)

今回、相続法の中でも、遺言制度に限って、法改正のポイントを解説していきます。遺言制度という観点では、2つの改定のポイントがあります。

1つは、遺言執行者の権限が明確になった、ということです。今の法律でも、遺言執行者は、遺言の内容の実現については強い権限を持っていましたが、その権限の範囲は明確化されていませんでした。それが、今回の改正で、「遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と明記されることで、範囲が明確にされることになりました。

2つ目は、自筆証書遺言に関する変更です。これまで、自筆証書遺言は、財産目録も含め、「すべて」自筆で書くことが求められていました。しかし、これが緩和されることになったのです。今回は、この変更について、さらに詳しく解説します。

遺言書の種類は3種類

では、そもそも、遺言書には、どういった種類があるのでしょうか。代表的なものは3つあります。

1つが自筆証書遺言で、遺言者が全文・日付・氏名を自筆で書き、押印して作成する遺言になります。自分ひとりで作成できる分、費用や手軽さという点でメリットがある遺言ですが、専門家を介さないため、法的に有効などうかのリスクや、遺言の管理等がたびたび問題になります。

もう1つが、公正証書遺言です。公正証書遺言は、公証人が作成し、公証役場で保管する遺言になります。公証人を通すことで、もっとも法律的には遺言が正しく運用される形になります。しかしながら、遺言の秘匿性の観点と、費用がかかるという面はデメリットと言えるでしょう。

最後が秘密証書遺言です。秘密証書遺言は、遺言者が記載、押印した上で、公証人役場に持ち込み公証人および証人立会いの下で保管する遺言になります。偽造・隠匿の観点からはメリットもありますが、法的に有効かどうかのリスクは存在します。さらに、費用がかかることもデメリットです。

今回の法改正で変わるのは、自筆証書遺言のところになります。

自筆証書遺言書に関する変更点はどこ?

では、具体的に、自筆証書遺言のどの部分が変わるか解説しましょう。実は、遺言自体を自筆で書き、押印する必要がある、という点は変わっていません。変わったのは、「財産目録」に関する部分になります。

これまでは、財産目録も、「すべて」自筆で書く必要がありました。そのため、財産が多い場合、非常に手間がかかり、なかなか自筆では遺言が書けない、というケースも多くありました。

今回の法改正では、財産目録は、「PC等での作成もOK」「通帳等のコピーもOK」という形になりました。しかし、この目録には、最後の署名押印のみ、自筆で行う必要があります。これにより、手間が大幅に軽減される一方で、自筆で署名することから、偽造等の心配も少なくなる、ということが予想されます。

ただし、この変更が有効になるのは、2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言のみになります。なぜなら、法律の施行が同日からだからです。もし、2019年1月13日以前にPC等で目録を作成していた場合は無効になります。この法改正を見越して遺言を作成していた場合、再度作り直しが必要になることには留意しておくべきでしょう。

相続法改正のポイントで、遺言を検討してみても良いかもしれない

今回の法改正で、遺言に関しては、これまでよりも、作成のハードルが下がったと言えるでしょう。自分が死んだ後のことは、考えたくない部分もありますが、自分の子孫が財産でもめないようにすることも、親としての立派な役割です。遺言を検討する、いい機会かもしれないですね。(提供:JPRIME

文・J PRIME編集部


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