ファッションだけではない、トレンドを一番早く発信する場
日本を代表する大規模ファッションイベント「東京ガールズコレクション」(以下、TGC)。ファッションに関心がない人でも、1度は耳にしたことがあるだろう。実はこのイベント、モデルがランウェイを歩くショーだけでなく、最先端のテクノロジーが使われる場としても注目されている。TGCを企画・制作する〔株〕W TOKYOの執行役員で、TGCの実行委員会チーフプロデューサーを務める池田友紀子氏に、TGCとテクノロジーの関係を聞いた。
第1回から時代に先駆けたシステムを導入
――TGCで最先端のテクノロジーが使われるようになったのは、いつからなのでしょうか?
池田 2005年8月に開催された第1回からです。当時はまだガラケーの時代でしたが、いち早くECのシステムを取り入れて、ファッションショーを見ながら、ショーで使われているアイテムをその場で買える「販売連動」を行なっていました。
――そのときのECのシステムは、どのようなものだったのですか?
池田 TGC公式サイトのショーレポートページから公式ECサイトに飛ぶようにしていました。
――これまで様々なテクノロジーが導入されてきましたが、特にインパクトが大きかったのは?
池田 最近で言うと、例えば、昨年春夏の第26回で導入した、キャッシュレス決済の『Origami Pay』があります。会場内の販売ブースで使えるようにし、来場者に体験していただきました。それから1年ほど経って、ようやく世の中にもキャッシュレス決済が浸透してきているように感じます。
同じく第26回では、12K の技術の実証実験の場としても協力しました。12Kのスクリーンを表参道ヒルズの特別会場に設置して、スーパーライブビューイングを行ないました。12Kでのライブ映像伝送は世界初で、グッドデザイン賞を受賞した取り組みです。
また、AIやドローン、インタラクティブ動画などを使った企画にも、この1~2年の間に取り組んできました。
――インタラクティブ動画とは?
池田 第26回から計2回導入したサービスで、モデルがランウェイを歩く動画をイベント事後に配信し、それを観ながら、動画の中のモデルが着用しているアイテムを長押しするとアイテム購入ページに飛ぶことができるというものです。
――これらの企画は、どういう経緯で立ち上がったのでしょう?
池田 12Kについては、4K・8Kおよび超高臨場感技術の提供を目指す総務省のアクションプランを、NTTグループ、IMAGICA GROUPが共同で開発、事業化を進めている、オールジャパンで推進する体制として設立された映像配信高度化機構(Next Generation Contents Distribution Forum)のプロジェクトとして、TGCのコンテンツが採択され、実現に至りました。ファッションショーを映して、洋服の生地の質感がどう表現されるのかを確認するなど、技術の実証実験の場として使っていただいた形です。
2013年春夏の第16回では、NHKスーパーハイビジョンにてパブリックビューイングを開催したこともあります。NHKではかつてBSでディレイ放送もしていただいていて、4Kや8Kなど、その時々の最新の技術で撮影していただいています。
Origami Payについては、キャッシュレス決済を推進している経産省との取り組みです。
――企業だけでなく、官公庁ともつながりがあるのですね。
池田 そうですね。経産省とはCOOL JAPANの取り組みの一環で、2014年のタイ・バンコクでのイベント開催でもご一緒しています。また、2017年秋冬の第25回では、文化庁が推進している「beyond2020プログラム」の認証を受けて、このプログラムを推進するための映像やステージを作りました。
2015年には「TGC地方創生プロジェクト」を発足し、地方自治体と組むことも多くなりました。今年は、1月の静岡や4月の熊本など、計4回の地方開催を実施します。
――企業も官公庁もTGCに注目しているということですが、その理由はなんでしょうか?
池田 回を重ねるごとに、ますます注目していただけているように感じており大変嬉しく思います。今は、目の前でファッションショーを見るだけでなく、会場内外問わずにTGCを見ながらSNSで発信して楽しむようになっています。ですから、会場に集まる若い女性だけでなく、それ以外の方たちにも情報が広がります。TGCの歴史と情報の広がりのおかげで高い認知度を獲得できていることが我々の強みの一つだと思っています。その認知度が理由ではないでしょうか。
また、ファッションに限らず、トレンドに敏感な人が集まる場ですから、新しいものを多くの人たちに実際に使っていただく実証実験の場に適していると思います。