ユーザーに近い発想で企業への提案も

――企業や官公庁からのアプローチを受けるだけでなく、TGCのほうからアプローチすることもある?

池田 第25回でAIを使った企画を2つ実施しましたが、いずれもこちらから企業に提案したものです。

一つは、「IBM Watson」のテクノロジーを使った「コグニティブドレス」です。来場者やLINE LIVEでショーを観ている方に「#マイナビウエディング」というハッシュタグをつけた投稿をTwitterにしていただき、そこからワトソンが感情を分析して、その感情に合わせて、ランウェイを歩くモデルが着ているドレスの色が8秒ごとに変わるというもので、世界初のショーとなりました。

東京ガールズコレクション
Twitterへの投稿からIBM Watsonが感情を分析し、その感情に合わせて色が変わるコグニティブドレス ©マイナビ presents TOKYO GIRLS COLLECTION 2017 AUTUMN/WINTER

もう一つは〔株〕9DWと共同開発したもので、SNSで多くの人に支持されるファッションコーディネートをディープラーニングさせたAIが、来場者のスナップコンテストの審査員を務めるというものでした。これも世界初の試みです。

――提案をしたとき、企業の反応はいかがでしたか?

池田 例えば日本IBMさんの場合は、それまでまったくお付き合いがありませんでしたから、アポイントをとるところから始めました。話をすると、リアルイベントで大々的にユーザーを巻き込んだ取り組みに興味を持っていただき、全面的にご協力をいただきました。

――どんな企業やテクノロジーを選んでアプローチしているのでしょうか?

池田 TGCはトレンドを発信する場であり続けたいと考えています。これから私たちの生活にテクノロジーがどんどん溢れてくると思うので、TGCでは若い女性に興味を持ってもらえて、世界中で楽しめる、面白いテクノロジーを探していますね。

――最後に、テクノロジーに限らず、TGCがこれから取り組んでいこうと考えていることを教えてください

池田 まず、先ほど少し触れた地方や海外での開催については、さらに積極的に進めていきたいと考えています。

また、SDGsについても、引き続き推進していきます。SDGsというのは、持続可能な開発のための17の目標のことで、2015年に国連で採択されました。TGCは、その年に「国連の友Asia-Pacific」と提携し、翌年2016春夏のステージでモデルが17の目標を書いたプロップを持つショーを行うなど、SDGsの推進に努めてきました。最近、ようやく注目を浴びるようになってきましたが、当時はほとんど知っている人がいなかったですね。昨年には、ニューヨークの国連本部で、世界初のSDGs推進ファッションセレモニーを開催しましたし、今年1月の静岡での開催はSDGsを若年層に普及するためのものでした。

それから、来年開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、スポーツに関係したことも積極的に取り組んでいきたいと考えています。過去にはTGCで招致活動を目的としたステージを展開したり、昨年にはパラスポーツのイベント「お台場 BEYOND フェス produced by TOKYO GIRLS COLLECTION」を東京オリンピック・パラリンピックの中心となるお台場・臨海地区で開催したりもしています。

――幅広いですね。お話をうかがって、TGCへの見方が変わりました。ありがとうございました。

池田友紀子(いけだ・ゆきこ)
〔株〕W TOKYO執行役員 東京ガールズコレクション実行委員会チーフプロデューサー
1986年、静岡県出身。2009年、聖心女子大学文学部英語英文学科卒業。大学卒業後、外資系化粧品会社を経て、〔株〕F1メディア(現・〔株〕W TOKYO)へ入社し、2016年より現職。100万人が共有し熱狂するイベントメディア東京ガールズコレクションのクリエイティブ・コンテンツの統括をはじめ、自社メディア「girlswalker」のリニューアルプロジェクトや、企画のプロモーション・イベントプロデュース等を担当。(『THE21オンライン』2019年03月23日 公開)

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