FOMC声明後のパウエルFRB議長の定例会見を受けて、米利下げ観測が大幅に後退し、ドル買いが入りやすい地合いになっています。この動きを受けて、前日はドル買いユーロ売りが強まり、ユーロドルでは、一時1.11721ドルまで下値を拡大しました。ただ、ドル円については、111.662円で上値が抑えられており、112円のレジスタンスラインが引き続き意識されました。ユーロドルについては、欧州時間に1.12188ドルまで上昇したものの、その後は1.12ドルを下抜けており、今後は1.12ドルがユーロドルのレジスタンスラインとして意識されるかもしれません。
ドル円に関しては、「米中貿易協議が行き詰った可能性がある」との中国メディアの報道を受け、NYダウが一時250ドル超の下落となったことで111.354円まで下値を拡大しましたが、本日のアジア時間ではトランプ大統領が「米国には中国と素晴らしい通商合意を結べるよい機会がある」と発言していることもあり、一旦は下げ止まったものの、引き続き株価が軟調に推移するようであれば、テクニカル的にも112円では上値の重さが確認できるため、じりじりと下値を拡大するかもしれません。
前日の動きで特徴的だったのが、コモディティ主導で資源国通貨が軟調に推移したことです。WTI原油先物価格が4%超下落し、銅先物価格も約2カ月ぶりの安値を更新しました。資源国通貨と呼ばれる豪ドル、NZドルのオセアニア通貨、他にはカナダドルと南アランドの下落が目立ちました。南アランドについては、来週8日に総選挙を控えていることもあり、値動き自体が神経質になっていることも、下落の一因として考えられそうです。
今後の見通し
本日は、米雇用統計が予定されています。非農業部門雇用者数については、19.0万人増予想になっており、ADP雇用者数の数字も強かったことで、ある程度強い数字が出てくるものと考えられます。通常日でも米雇用統計が予定されている日は、米雇用統計待ちの動きとなり値動きが小さくなる傾向が強いですが、本日も日本と中国が休場となっていることで、米雇用統計までは引き続き小動きとなりそうです。
前日発表されたスーパーサーズデー(BOE政策金利発表、MPC議事要旨公表、四半期ごとのインフレリポート公表)では、インフレリポートにて2019?21年のGDP見通しがいずれも上方修正されたほか、「インフレを保つために1回以上の利上げが必要な兆候」との見解が示されるとポンド買いが強まる場面が見られましたが、すぐさま1年後と2年後のインフレ率は下方修正されたことが発表され、ポンドは急落し、乱高下する動きとなりました。ただ、その後はカーニー英中銀総裁が「見通し通りなら予想以上の利上げが必要」と発言したことを受け、ポンドドルでは1.3020ドル付近がサポートになっています。
スーパーサーズデーの内容は非常に濃いものでしたが、噛み砕くとBrexit次第という内容でした。BOEのインフレ見通しと市場のプライシングの間には相違もありますが、それを背景にカーニーBOE総裁は(市場織り込み以上の)利上げの必要性を訴えました。Brexitが5月に解決に向かうとの基本シナリオに沿うのであれば、8月の利上げが現実的となり、それも、(市場織り込み以上の)利上げになりそうです。
FOMC後の111.60円でドル円は上値が一旦抑えられた
FOMC声明、パウエルFRB議長会見時に示現したドル円111.60円水準を僅かに上抜けたものの、ドル円はこの水準まで反発後、再び上値が重くなっています。ドル円は狙い通り、111.60円にてショートのポジションメイクです。決してドルの地合いが弱いわけではありませんが、それ以上にドル円の上値が重くなっていることと、株安による円買いが円高を演出しそうです。利食い、損切り水準も変更なく、利食いは110.70円付近、損切りは112.10円上抜けです。
海外時間からの流れ
本日発表された豪・3月住宅建設許可件数(前月比)が市場予想-12.0%に対して結果が-15.5%と市場予想を下回りました。豪ドル下落の初動としては、大手銀行が住宅ローン金利を引き上げたことを受け、政策金利引き下げの観測が高まったことにあります。今回の経済指標により、住宅市場の弱さが年内利下げをサポートする可能性があるため、引き続きオセアニア通貨は上値が重くなると見ています。
今日の予定
本日は、トルコ・4月消費者物価指数、英・4月サービス業PMI、ユーロ圏・4月消費者物価指数、米雇用統計、米・4月ISM非製造業景況指数などの経済指標が予定されています。また、要人発言として、エバンス・シカゴ連銀総裁、クラリダ・FRB副議長、ウィリアムズ・NY連銀総裁、ボウマン・FRB理事の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。