なぜ、日本の職場には「数字で話す」文化が根付かないのか

数字,斎藤広達
(画像=THE21オンライン)

「数字を上げろ!」「証拠を数字で示せ!」……職場で日々飛び交う、こんなセリフ。ただ、そのわりに日本人の多くは本当の意味で「数字で話す」ことができていない……。そんな問題意識から新著『数字で話せ』を執筆したのが、経営コンサルタントの斎藤広達氏だ。自らも「数字が苦手な文系人間」だった著者が、日本の職場にはびこる「数字で話せない人々」の問題を解き明かす。

「みんな言っているよ」のみんなとは、誰?

「今度の商品は、多くの顧客から『使いにくい』と言われている。営業部もみんなダメだと言っている。これじゃあ営業がいくら頑張っても売れない。最近、いつもこうだ。どうにかしてくれ!」

社内にて飛び交うこんなセリフ。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

「多くの」「みんな」「いつも」……こうしたセリフは何の疑問も持たれずに、仕事の場で多用されています。詳しく聞いてみると、数百ある取引先のうちの2~3社から「使いにくい」と言われただけ、ということだったりします。正しくは「一部の顧客から、ダメだと言われている」でしょう。

どんな組織でも必ず「両極端な意見」が現れるもの

もちろん、たまたま聞いた2~3件の意見が、全体を表している、という考え方もできます。

ただ、人の意見というものは必ず「正規分布」──つまり、良いほうにも悪いほうにも極端な意見が数%は出てきます。そこだけを拾えば、「この商品は全然ダメだ」という結論にも、「この商品は素晴らしい」という結論にも導くことが可能です。

感覚的な個人の感想を述べてくれることは差し支えないのですが、現場の意見を針小棒大に誇張して、社内の他部門を攻撃する人もいます。過去に実績を上げてきたプライドの高いベテランほど、この傾向が強いのが困ったものです。