数字がないと、「声の大きな人」の意見が通る
「数字で話す」ことができれば、このような問題を避けることが可能になります。
「みんな」とは具体的に何パーセントの人で、その人たちは本当にボリュームゾーンと言えるのか。もし、本当に売れていないのだとしたら、具体的には他の製品よりどのくらい売れていないのか。それによる損失はいくらくらいになるのか。こうした数字があって初めて、議論は前に進みます。
数字を用いて話をすることは、一見「強者の戦略」に思えるかもしれません。ただ、実際にはむしろ、数字で話すことは「弱者の戦略」と言っていいでしょう。
なぜなら、感性的な議論になると最後に勝つのは必ず「声の大きい人」だからです。
声の大きい人とは、いわゆる「立場が上の人」「年齢が上の人」。こうして結局、現場の人や若い人の意見は握りつぶされ、旧世代の意見が採用される。こうした組織はいつまでも変わることができません。多くの人がそんなフラストレーションを抱えているのではないでしょうか。
「数字で話す」ことは、そうした状況を打開するための強力な武器となるのです。
「もっと数字を上げろ!」と言いつつ、数字を使わない愚
ビジネスは「数字を追いかけること」の連続だと言えます。目標売上〇〇億円、目標利益〇千万円を目指す、固定費の〇〇%の削減を目指す……。そのわりに、現場ではあまりに感性的な言葉が飛び交っているというのが現実ではないでしょうか。
「もっと訪問件数を増やせ」「もっと安くしろ」「最近、どうも顧客の反応が鈍いから、なんとかしろ」……。こうした「旧来型」の上司にありがちな指示は何かを言っているようで、実際には何も言っていないのと同じです。
具体的な行動につなげるためには、「あいまいな指示を数字に落とし込んで語る」ことが不可欠なのです。訪問件数をもっと増やせという「もっと」とは、具体的に何件なのか。もしそれが1日5件だとして、なぜそれが5件なのか。そこまでブレイクダウンして数字で語ることで、現場は動き出すのです。
さらにいえば、「そもそも、訪問件数を増やせば本当に売上は上がるのか」という疑問を持つ人もいそうです。もし、部下にそう聞かれたら、ちゃんと「数字で」答えることができるでしょうか。
あなたが経営者や上司なら、自分の指示を常に「数字」に落とし込むクセをつけましょう。一方、あなたの上司が残念ながら「数字で話せない」人ならば、あいまいな上司の指示を自分の中で数字に落とし込むクセをつけることです。