守るべきは守りながら、新たな飛躍への挑戦も
――最後に、今後の展開について教えてください。
中原 昨年、向こう5年間の計画を立てました。ですから、今からだと4年後までの目標になりますが、国内では100店舗を目指しています。米国では、年に3店舗ずつ増やして、18~19店舗にしたいと考えています。
――店舗を増やすために、何か新しい戦略は考えているのですか?
中原 新商品の開発などはしていきますが、変えてはいけないところもあります。例えば、効率だけを考えればセントラルキッチンを設けたほうがいいのでしょうが、手間がかかっても、店舗ごとに調理をしたほうが美味しい商品が作れますから、そこを変えるつもりはありません。
また、フランチャイズのオーナー募集の広告を大々的に展開したりもしません。当社の商品が本当に好きな、本気のオーナーだけに加盟していただきたいからです。
――米国では、どのように店舗を増やそうと?
中原 現地法人の直営店を増やしていきます。現地法人の社員が、「自分の故郷にも出店したいからフランチャイズ契約をさせてほしい」と言うようなことが、もしあれば、それも考えますが。
――御社は『バル・デ・オジャリア』というスペインバルも運営しています。
中原 麺食に入社する際、条件として、「新しいこともさせてほしい」と言っていたんです。レストラン系の店を開きたいと思っていたところ、シェリー酒に詳しい有名な方がやっている店が、あまり経営がうまくないために閉店しそうだという話を聞き、経営を引き受けることにしました。それが『バル・デ・オジャリア』です。銀座店は、シェリー酒の品揃えが世界一多い店としてギネスに認定されています。
――他にも新業態は考えていますか?
中原 3~5店舗ほどを展開していて、事業承継に困っている外食企業は多くありますから、そういった企業のM&Aをする可能性はあると考えています。
外食企業が第2、第3のブランドを立ち上げる際には、仕入れ先を同じにして調達コストを下げるなど、もともと持っているブランドとの相乗効果を狙うケースが多いのですが、そのほとんどは失敗していると思います。お客様の視点に立った発想ではないからです。当社が新業態を考えるときは、『喜多方ラーメン 坂内』との相乗効果を狙うという発想はしません。
ただ、『喜多方ラーメン 坂内』の焼豚に使っている豚肉はスペイン産で、毎年、マラガに買い付けに行っているのですが、その取引先のスペイン人が来日した際に『バル・デ・オジャリア』に招いたりはしています。その意味では、結果的に相乗効果が生まれているとも言えますね。
――その他、この先で考えている展開はありますか?
中原 当社が輸入している豚肉は年間720トンにも上ります。ラーメン店で、これだけの豚肉を輸入しているところは、他にないでしょう。この豚肉の輸入力を活かして、他のラーメン店に食材として豚肉を販売することも考えています。
また、5~6店舗の規模のラーメン店なら、採用や社員教育、あるいはシステムを当社に任せていただくこともできるのではないか、という青写真を描いたりもしています。
中原 誠(なかはら・まこと)
〔株〕麺食代表取締役社長
1973年生まれ。埼玉県出身。東京都立大学卒業後、〔株〕第一勧業銀行(現・〔株〕みずほ銀行)に入社。起業を志し、28歳で退職。飲食業のノウハウを修得するため、〔株〕ベンチャー・リンク(現・〔株〕C&I Holdings)に転職。その後、現場体験を求め、〔株〕グローバルダイニングへ。3年間勤めたのち、父・明氏が経営する〔株〕麺食に入社。2012年、代表取締役に就任。《人物写真撮影:まるやゆういち》(『THE21オンライン』2019年04月07日 公開)
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