(本記事は、中川奈美氏の著書『自分も相手も幸せになる最高の気遣い』=自由国民社、2018年10月17日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
言葉以外の6つの要素で、言葉以上に語る
1.笑顔
笑顔は魔法です。
笑顔があるだけで、居心地の良さが生まれます。
笑顔があるだけで、その場が明るくなります。
心を開きやすくなります。場が和みます。
話しかけやすくなり、コミュニケーションも活発になります。
接客のプロは楽しいから笑うのではなく、組織を代表してお客様におもてなしをするプロとして、お客様、相手の方に居心地の良さを提供し、コミュニケーションを活発にするために「おもてなしの笑顔」を送るのです。
そのために、口角が上がり易いよう表情筋も鍛えます。私は、初めのころは毎日のように「スマイルトレーニング」(※2)をいたしました。
お客様の前では常に笑顔を保ちますが、忙しく作業をしていたり、考えているときには「真顔」になりがちです。この「真顔」の時にも、お客様は見ているのです。また、自分の表情は自分では鏡や写真に映さなければ見えないのですが、周囲の人には良く見えていて、様々な影響を与えています。笑顔でしっかりおもてなしの表情管理を行いましょう。
(※2 )中川のスマイルトレーニング ミッキーやミニー、ウイスキー等、最後に「い」のつく言葉を言い、「い」を10秒ほど伸ばします。この際口角の上の部分に少し力を入れます。口角が上がりやすい筋肉作りにお勧めです。「嬉しい」「ラッキー」等ハッピーになる言葉も良いですね。
2.アイコンタクト
穏やかなアイコンタクトは、信頼関係を築くうえでとても大切です。
そして笑顔でのアイコンタクトは、承認表現の基本でもあります。
また、真摯さや相手に向き合う心の姿勢も表現することができます。
好印象な、明るく穏やかなアイコンタクトを送りましょう。前髪やサイドの髪の毛が目にかかり、アイコンタクトの邪魔にならないように整えたいですね。
3.姿勢
正しい姿勢は清潔感や信頼感、プロフェッショナル感に繋がります。
また、凛とした雰囲気や、相手に向かう心の姿勢も映し出します。
立っているときも、座っているときも、背筋が伸びていることを意識しましょう。
椅子の場合、椅子に腰かける位置により、姿勢よく座れる位置とそうでない位置がありますよね。姿勢よく座れるよう、特にソファに腰かける際は、骨盤を立てて座れる位置と脚で支えることができる位置に注意しましょう。
また、会話をする際には背筋を伸ばしたままの直立ではなく、少し柔らかい雰囲気を出して話しやすくするように、相手の方に耳を傾けるように、少し前のめりになるような前傾姿勢を意識しましょう。
4.ボディランゲージ
身振り手振りに始まり、体から発生するサインは多くのことを表現し、相手の方に伝えています。
ですので、相手に何かを伝えたいと思うときには、全身で伝えるようにしましょう。
人は多くの情報を視覚から受け取っています。
ジェスチャーや身振り手振りがあるほうが、イメージがつきやすかったり、会話に躍動感が生まれます。
逆に、腕を組む、足を組むという状態は、心理学的にも「思考を自分に向けて自分の中で考えたいとき」に行う動作ですので、意識的にしないようにしましょう。
相手の方とコミュニケーションをとる際には、自分をオープンにして、思考を相手に向け、全身でコミュニケーションをとると伝わりやすいですし、心の距離も縮まります。
5.ペーシング
相手の方とのコミュニケーションをより良いものにするためには、しっかりと相手の方を理解することが大切です。自分の目線理解でなく、「相手の目線理解で」です。
そのためには、たくさんのことを話していただけなければなりません。態度で「あなたのことをもっと理解したいです」ということを表現します。
そのためにお勧めなのが「ペーシング」です。
これは、相手の方にペースを合わせること。言葉のリズム抑揚を合わせます。また心のテンションも合わせます。表情は心の状態が表現されることが多いので、表情も同じように相手の方と合わせます。そうすると相手の方の心の状態も理解できていきます。
それから、人はお話をするときに、顔が上下に動くように頷きながら話をすることも多いですね。この顔の動きも合わせます。
そして、例えば、相手の方が「そうね〜」と片手を頬に当ててお話をしていたら、全く同じことまではしなくても、例えば自分は片腕を立て、手を顔の方に近づける等、ジェスチャーも合わせるのです。
これはミラーリングともいわれています。このように相手に合わせることにより、共感性と一体化が生まれ、とても話しやすい雰囲気を作ることができます。
とてもオススメです。ぜひ、なさってみてください。全身で相手の方への共感を表現しましょう。
6.うなずき、あいづち
アイコンタクト、笑顔、傾聴姿勢と並んで、しっかりと相手の方のお話を聞き、伝えるためには、「うなずき」は欠かせません。また、自分が言ったことに対して「うなずく」ことにより、説得力が高まる場合も多くあります。
うなずきは、相手の方が話す際、こちらの言葉が挟めないペースで進んでいるときにも、同調や同意を示すことができますし、納得や理解を表現することもできます。
簡単なことなのですが、うなずくことなく会話を進める場面も様々なシーンでお見受けします。ぜひ、うなずき力アップを図ってみてはいかがでしょう。
また、あいづちの中に「復唱のあいづち」というものがあります。相手の方のお話からキーワードとなる言葉を復唱します。
例えば、「今度の連休、温泉に行くの」とおっしゃったら「温泉ですか」「温泉、良いですね」等、また「温かくなってきたから明るい色で薄手のカーディガンが欲しいと思って」とおっしゃったら「明るい色で薄手のカーディガンでございますね」と復唱します。
このことにより、しっかりとした情報共有ができ、また相手の方にとって、きちんと分かってくれているという安心感にもつながります。
この6つのエッセンスを活用し、さらにコミュニケーションを良くしていきましょう!
前職の成功体験は全部忘れて、一から出直す
成功体験はとても大切ですよね。
成功体験は自信にもつながりますし、身を持って、成功事例を体験から学ぶことができます。
そこからの学びは大切ですが、その体験への執着はお勧めしません。
今のお仕事を始めたのは、地元にいる従姉から、あるブライダル関連のお仕事をしていらっしゃる方とのご縁をいただいたのがきっかけでした。
その方は「伊勢の働く女性にビジネスマナーや立ち居振る舞いを教えてあげて」とおっしゃって、マナー講師として私にセミナーをご依頼くださいました。初め私は「講師なんてやったことはないし、無理〜!」と思いました。
その後、ご依頼主の方にまずはお会いして、お話を伺いました。その方は、私に「客室乗務員だったんだからできるでしょ?」とおっしゃいました。
インフライトインストラクターとして、フライトに同行して新人指導をしたことはあっても、一般の方にマナーを教えたことはないですし、自信もありませんでした。
ただ、その方の熱意や「伊勢の女性を元気にして、伊勢を元気にしたい」という想いに大変感銘を受けました。結果、何かできることがあるなら、お手伝いさせていただきたいと思い、マナー、接客、コミュニケーションを一から学びました。
自分で行う行動と、人に指導したり伝えることは違います。ですので、一からスタートです。客室乗務員時代のことは一度すべて忘れました。
接客のコンサルタントの師匠から、接客・マナーを学び、プラスしてマナーの教室2ヵ所で学びました。コミュニケーションや指導法に関しても、一から学びました。フレッシュな気分で、客観的にマナーや接客・おもてなしを見つめ、今の時代に何が必要かも考えました。
すると、学び終える頃には、過去、客室乗務員時代だった頃に行っていた行動が理論的に見えたりもして、面白い体験でした。
過去のことは過去のこと。皆様にご参考事例として挙げることはしますが、それに浸っていては前に進めません。
今の時代に合った、皆様のお役に立つ育成、指導、お仕事をしようとすると、必然的に自分も時代に合わせて、前進していなかければならないのです。皆様のどのようなお仕事もそうではないでしょうか?
例えば、営業職の方。
バブルくらいまでは、たくさん商品説明をしてアピールをして、良いものであると分かっていただき、ご購入いただく。それがたくさんのご購入につながったと思います。
営業側がたくさんお話(説明)をする接客・営業で成功できたと思います。
その後、バブルが崩壊し、皆様の購買意欲も下がり、物にもあふれた頃には、ニーズを聞き出し、その方の価値の見つけ方を理解し、その方のスタイルに合った説明や商品特徴でないとご購入いただけなかったのではないでしょうか?
そのためには、お客様のお話を聴く。ニーズの掘り出しを行うことがとても重要となりました。聴く接客・営業が成功したのです。
そして今はさらに、お客様に寄り添う。
もちろん聴くことも引き続き大切ですが、信頼関係とより良い人間関係を築き、継続顧客になっていただくことが大変重要です。お客様と長いお付き合いをさせていただけるような関係性を作り上げることが大切とされています。
成功からも、失敗からも、過去から学ぶことはとても多いと思います。その学びは必ず肥やしです。
ただ、過去から学んだらそれに浸っている暇はないので、次に前進です。
お仕事をしていると、常に新たなインプットが必要と感じます。
ですので、日々、新たな気持ちでスタートをしたいですね。