「戦力外の人材」を武器にするには?

「働き方改革は経営者の仕事」というのが高岡氏の主張だが、現場のマネジャーが何もしなくていいわけではない。ホワイトカラーの生産性を向上させるためには次の2つの意識を持つことが大切だという。

一つは、仕事と作業を分けて考えることだ。

「私の言う『仕事』とは、大きな価値を生み出すクリエイティブな仕事のこと。『作業』とは、慣れたら誰でもできるような仕事のことです。例えば、パワーポイントで資料を作ることは、別にそれ自体は価値を生みませんから『作業』です」

生産性を高めるためには、「仕事」に優先して取り組むことが、重要だが、実際には、「作業」ばかりやっている人が多いという。

「本来なら、仕事と作業をする役割を分担すべきだと思いますが、優秀な正社員まで作業ばかりやっていることも少なくありません。そうした状況を変えるには、マネジャーが上手く仕事を配分することが重要です」

もう一つは、「仕事ができないと思われている人を活用する」ことだ。同社では人事異動について話し合う際、役員や部長が、「うちの部に優秀な人材をください」と言うのは厳禁だという。

「優秀な人がいれば、仕事の結果が出るのは当たり前。管理職の仕事は、仕事ができない人でもうまく活用して、成果を出すことです」

もっとも、「できない」というのは、その部下を活用する上司に原因があることも少なくない。高岡氏は、ネスレコンフェクショナリーの社長時代に、それを実感したという。

「この会社は、『キットカット』を日本で販売していた企業との合弁会社で、そこから営業部員が100人ほど出向してきました。いわば、親会社を追い出されてしまった人たちだったのです。しかし、一緒に仕事をしてみると、仕事ができないなんてことはない。結果的に、この営業部員たちの頑張りによって、日本一のシェアを達成できました。上司が上手く生かしてあげれば、できない部下なんていませんよ。

これは、多様な人材をマネジメントするダイバーシティの問題とも深く関わります」