不動産投資の「成績」を知るための指標に、利回りがあります。利回りには表面利回りと実質利回り合があり、表面利回りは所有物件から得られる家賃収入を物件の取得価格で割ることで求めます。
実質利回りは、所有物件から得られる年間のキャッシュフロー(諸費用を差し引いた手残り)を物件の取得価格で割って求めることができます。
より実態に即した判断をするためには、実質利回りを軸に考える必要があります。実質利回りを高くする方法には、以下の2つがあります。
・分子であるキャッシュフローを大きくする
・分母である物件取得価格を低く抑える
理想は、この2つを両立させることでしょう。それを実現できる可能性があるのが、リノベーション物件です。不動産のリノベーションについて、こんな仮説を立ててみました。
「格安の中古物件を購入して、リノベーションで付加価値を高めれば、利回りの高い不動産投資が成り立つのでは?」
これはおそらく、多くの人が一度は考えたことがあることでしょう。果たしてこの仮説は立証されるのでしょうか。リノベーションによる不動産投資が持つポテンシャルについて、考えてみたいと思います。
そのままでは集客力が弱い格安物件
不動産市場では、需要と供給の関係によって価格が決まる「神の見えざる手」が機能しています。価格の安い中古物件には必ず、その安い理由があります。投資用物件として格安で売りに出されている物件は、それだけ安くしないと売れないほど集客力が弱いと推測できます。
したがって、このような格安物件を購入し、そのまま賃貸に出しても、空室率や家賃の下落に悩まされて思い通りの結果を出すのは難しいでしょう。
そこで、リノベーションの登場です。そのままでは投資価値の低い格安物件をリノベーションによって再生すれば、投資物件として再生できるかもしれません。
リノベーションでどこまで再生できるか
リノベーション技術の進歩は目ざましく、建物の躯体と構造部分以外はすべてリノベーションすることができます。間取りやデザインコンセプトの変更、水回りの位置を変えることもできるので、格安の中古物件を限りなく新築に近い状態にまで再生することができます。
格安物件をリノベーションするメリット
格安物件を仕入れてリノベーションをすることには、主に3つのメリットがあります。
・格安物件を投資価値の高い物件に再生できる
・築年数の古い物件は好立地である場合もあり、好立地+高付加価値の物件になる
・入居者の価値観が多様化しており、あえて古さを残した住居を好む人のニーズを満たせる
「あえて古さを残した住居を好む人のニーズを満たせる」については、それを事業として成立させている一例に、京都の町屋カフェがあります。築年数が100年を超えるような町屋をリノベーションによって再生し、町屋の風合いを残しながら店舗として活用しています。
多くの成功事例があるため、すぐにでもチャレンジしたくなるかもしれませんが、格安物件だけに物件選びはシビアになる必要があります。とはいえ、リノベーションによって付加価値を高めて利回りを向上させることは十分可能でしょう。
リノベーションで再生した物件の事例
実際にリノベーションによって物件を再生した事例には、どのようなものがあるのでしょうか。自治体や企業などが手がけているリノベーションの事例をご紹介します。これらの事例には、リノベーションを不動産投資に生かせる多くのヒントがあります。
・堀川団地 再生まちづくり(京都府住宅供給公社)
https://kyoto-juko.jp/horikawa/
慢性的な空室に悩まされていた京都市内の堀川団地をリノベーションによって再生し、新たな定住者を獲得するプロジェクトです。集客力が弱くなってしまった賃貸物件を再生して付加価値を高めるというコンセプトは、一般的なリノベーション投資とまったく同じです。
・だから、笠岡市で暮らしたい。(岡山県笠岡市)
https://www.city.kasaoka.okayama.jp/site/teijyuu/18000.html
市内に空家を所有しているオーナーと、笠岡市への移住を希望する人をマッチングするサービスです。移住希望者の募集と、空家をリノベーションによって再生することがセットになっており、リノベーションの成功事例として参考になります。
・ReReRe Renovation!(株式会社リノベリング)
https://re-re-re-renovation.jp/projects/
全国各地でリノベーションを手がける企業の事例集です。建物や物件単体のリノベーションだけでなく、町やエリア全体のリノベーションも手がけており、「町を再生する」というテーマに取り組む姿勢は、不動産投資家にとっても示唆に富んでいると言えるでしょう。(提供:Owners Innovation)
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