不動産投資には、利回りやキャッシュフローなどといった指標がたくさんあります。いずれも収益物件の実力や投資の成否を評価するためのものです。その中のひとつである「IRR」という指標について、今回は解説したいと思います。
あまり聞きなれない指標なのでご存知ない方も多いと思いますが、実はIRRこそ不動産投資の成否を判断するのにとても便利な指標であり、使い方を理解することで不動産投資をより正確かつ現実に即した形で評価することができます。
IRRってなに?
IRRとはInternal Rate of Returnの頭文字を並べたもので、日本語では内部収益率と訳されています。ここでいう「内部」とは不動産投資における収益物件のことで、その収益物件を購入し、運用をして、最後に売却するといった一連の流れをすべて算入することで求められる数値です。
つまり、IRRを計算できるようになると、不動産投資の真の姿と収益物件の真の実力が分かるということです。
不動産投資にIRRが役立つ理由
実際の計算方法は後述しますが、IRRには時間価値という概念があります。時間価値とは、同じ金額のお金や資産であってもそれがいつ手に入るかによって価値が異なるという概念です。
例えば今ある1億円と10年後の1億円とでは、今ある1億円のほうが高い価値を持っています。なぜなら、今ある1億円には今後10年間にわたって運用をする余地があるため、10年後には1億円以上の価値になっていると考えられるからです。
賃貸経営の1年目に入るキャッシュフローと、10年後に入るキャッシュフローが同額であっても、1年目に入るキャッシュフローのほうが投資家にとっては価値のあるキャッシュだということが、IRRには反映されているわけです。
利回りという指標だけなら、ある1年間のキャッシュフローからしか数値を求めることができませんが、IRRであれば空室率の変動や家賃の変化といった不確定要素も考慮されているため、不動産投資に対する評価の正確性が高くなります。
IRRの計算方法
IRRを計算するために必要な数値は、「物件購入費用」「毎年のキャッシュフロー」、そして「売却価格」です。IRRをrと仮定して表記すると、例えば5年分のIRRを求めるには以下の数値をすべて足すことになります。
①物件購入費用
②1年目のキャッシュフロー ÷ (1+r)の1乗
③2年目のキャッシュフロー ÷ (1+r)の2乗
④3年目のキャッシュフロー ÷ (1+r)の3乗
⑤4年目のキャッシュフロー ÷ (1+r)の4乗
⑥5年目のキャッシュフロー ÷ (1+r)の5乗
⑦物件売却価格
そして、「①+②+③+④+⑤+⑥+⑦ = 0」になる方程式を作ることで、rを求めることができます。このrがIRRであり、5年間の不動産投資のトータル収支を時間価値も考慮した数値となって表れます。
しかし、これだけだと計算が複雑でよく分からないという方も多いと思います。そこで、「100万円を10年間運用して50万円の運用益を得た」という資産運用を上記の計算式に当てはめて計算してみました。
計算の結果、1年目に50万円の運用益が出た場合はIRRが約5.97%となり、10年目に同じ50万円の運用益が出た場合のIRRは約3.86%となりました。「100万円を運用して10年間で50万円の運用益」という結果は同じであっても、早く50万円の運用益が出ているほうのIRRが高くなります。これは運用益である50万円の時間価値が異なるからです。
これを手計算で求めるのは容易ではありませんが、Excelを使えば上記の計算も瞬時に行うことができます。
Excelを使えばIRRは簡単に計算できる
こうした計算に長けているのが、表計算ソフトのExcelです。Excelがなくても類似の表計算ソフトがあればIRR関数が実装されています。こうした表計算ソフトの縦列に、「投資金額」「毎年の運用益」「回収金額」の数値を並べます。先ほどの100万円運用の事例では、各セルに入るのは以下の数値になります。
①-100万円
②50万円
③~⑩0万円
⑪100万円
100万円を投じるため、最初の①はマイナス100万円です。②~⑩が運用期間となり、最後に投資金を回収するため⑪はプラス100万円です。前者の計算では1年目である②に50万円を入れましたが、後者の計算では②から⑨までに0万円が入り、最後の⑩に50万円が入ります。あとはその7つの数値をドラッグで選択し、関数ウインドウからIRRを選択するだけです。
ただし、上記のように5年程度のIRR計算だとわずかな差しか出ないので、同じ数字しか表示されないと思います。この場合は、小数点以下の桁数を増やして差が分かるようにしてください。
IRRを高めると不動産投資の価値が高まる
ExcelなどでIRRを計算してみると、「どうすればIRRを高めることができるか」が分かるようになります。不動産投資に当てはめると、運用開始直後に多くのキャッシュフローを出すことが出来ればIRRの数値が大きくなります。これは時間価値の高いキャッシュが増えた結果によるものです。
このようにIRRが理解できると、利回りよりさらに正確で現実に即した不動産投資の評価ができることがお分かりいただけると思います。売却までを含めたトータル収支を向上させるのが不動産投資の本質ですが、IRRを使えばそれを数値化することができます。(提供:Owners Innovation)
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