「退職して配偶者の扶養に入ったから、税金や社会保険料を自分で払う必要がなくなる」とお考えなら要注意です。「突然、高額な納税通知書が届いてびっくりした……」ということにならないよう、「扶養と住民税の仕組み」についての基礎知識を学んでいきましょう。
所得税と住民税、扶養の違い
これまでお勤めをして税金や社会保険料を給与天引きで納めていた方が、お仕事を辞めると税金や社会保険料をどのように納めるか、ご存じですか?
退職すると、今まで会社が「源泉徴収」という形で代行してくれていたことを、自分で行わなくてはなりません。しかし、一部の方は確定申告や社会保険料の支払いをしなくて済む仕組みがあります。(ただし、正社員雇用だった場合、退職した翌年の確定申告は必要である場合がほとんどです。その場合は、翌年の確定申告は自分でする必要があります。)
・結婚して配偶者の扶養に入った
・定年退職した後、子どもの扶養に入った
このような「誰かに扶養されている方」は、生計を支えている人の税金・社会保険の仕組みに一緒に入ることができます。そのため、「扶養に入ったからもう税金は払わなくていい!」と思われる方がいらっしゃるのですが、実は、一部誤解があるのです。それが以下の2点についてです。
・昨年まで働いていた方は、昨年分の住民税について、支払い通知が来る可能性がある
・「所得103万円までは、パートをしても税金は一切かからない」は所得税の話で、住民税は別
所得税では問題ないのに、住民税は扶養に入ってからも影響があるのはなぜなのかを理解するために、住民税と所得税との違いを確認しておきましょう!
管理する窓口の違い
「所得税」は国に納める税金です。所得税を管轄するのは税務署になります。
それに対して「住民税」は、地方自治体に納める税金です。住民税もさらに「県民税・市民税」と分かれています。この住民税を管轄するのは市役所などの地方自治体(市役所など)です。
「住民税の通知についてわからないことがあるから、税務署に行かないと!」と思いがちですが、住民税について税務署は管轄外になります。
「今年の所得」と「前年の所得」
所得税はその年の所得に対して計算します。会社にお勤めの方の場合、毎月の給与から「これくらい」という所得税額をあらかじめ差し引かれます。
このときの計算はあくまでも概算のため、実際の年税額との差を「年末調整」して、年末に正しい税額に計算し直します。多くの方が「払い過ぎ」の状態になるため、還付を受けることになります。
一方、住民税は「その年の所得」に対しての計算ではありません。「前年の所得」に対して決められます。はじめから確定した金額のため、年末調整はありません。
支払時期の違いがあるため「昨年会社を辞めて扶養に入ったのに納税通知書が来る」といったことが起こるのです。
控除される金額の違い
所得税も住民税も、「一定金額までは税金がかかりません」という基準があります。それが「基礎控除」です。この基準が所得税と住民税で少し異なります。
「平成30年度税制改正」で、2020年以降の所得分に適用される基礎控除額が変わることが決まっています。
【2019年までの所得分に適用される基礎控除】
・所得税……38万円
・住民税……33万円
【2020年以降の所得分に適用される基礎控除】
・所得税……48万円
・住民税……43万円
ただし、お勤めの方や、年金で所得のある方は、給与所得・年金所得の基礎控除額がそれぞれ10万円下がるため、実質的な税額には変わりがありません。2020年以降は、所得2,400万円以上の方は基礎控除が3段階に分けて減額されます。
住民税には、所得金額に関係なく定額で課税される「均等割」と、前年の所得金額によって課税される「所得割」がありますが、この「均等割」について非課税となる金額は、市町村によって異なります。詳しくは、住民票のある自治体の市民税課で確認してみましょう。
社会保険料と税金の扶養は「別物」です
「扶養の範囲内で働こう」と思っていたのに、住民税がかかってしまったら「健康保険やパートナーの所得控除などからも外れてしまったのでは?」と不安になりますよね。でも、社会保険料や所得控除などと住民税の扶養の基準は違います。住民税がかかってしまったからといって、他も一緒に外れるわけではありません。
扶養の範囲内で働くとは、所得税・住民税がかからない範囲、扶養者の社会保険・所得控除が受けられる範囲で働くということ。この4つの中で、非課税限度額が一番低いのが住民税なのです。
納税期限を過ぎないように注意しよう!
住民税(市県民税)の普通徴収納付期限は、4期に分かれて分納できるように設定されています。納税通知書に記載されている納付期限までに対応しましょう。
万が一、納付期限を過ぎてしまうと、延滞した日数によって延滞金が課されます。これは、きちんと納期内に納めた納税者との公平を保つための措置で、悪意なく「うっかり忘れていた」だけであっても免除されることはありません。
「こんなはずではなかった」と後悔することがないよう、税金関連書類はしっかり管理することをおすすめします。
文・沼田絵美/fuelle
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