前日については、ドル円が109円を窺う動きを見せ、一時108.798円まで上値を拡大したものの、その後は上値が意識される展開になりました。米・5月生産者物価指数については、ほぼ市場予想通りだったこともあり影響は限定的になりましたが、トランプ大統領が「ユーロなどの通貨がドルに対して下落し、米国は大きな不利益を被っている」「米国の政策金利は高過ぎるほか、馬鹿げた量的引き締めも加わった」などの見解を示すとドル円は108円半ば付近まで下落し、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が「トランプ大統領はドル下落を呼び掛けていない」と発言したものの、市場に与えるインパクトは小さく、ドル円は108円半ば付近での動きが中心になっています。

トランプ大統領がメキシコ製品に対する輸入関税発動の見送りを決めたことから、市場のセンチメントが改善したものの、米中貿易摩擦に関する懸念は依然として消えていません。G20大阪サミットにて会談が予定されていることから、それまでは、ドル円は108円台での動きが中心になりそうです。中国の習近平国家主席が、この会談に応じない場合、新たな対中関税を発動すると警告したこともあり、状況によっては、新たな火種が発生する可能性があるため、動きたくても動けないというのが正直なところなのかもしれません。

直近堅調地合いとなっていたトルコリラに牽制を入れたのが、格付け会社フィッチ・レーティングスの見解です。「米国がトルコ経済制裁を発動させた場合、通貨リラのセンチメントに大きな影響を与えるだろう」、「トルコ政府の構造改革がしっかりと進展するかには懸念が残る」、「トルコ中銀が、為替相場の介入のために外貨準備を使用していたとしたら問題となるだろう」との見解を示し、第2四半期は前期比マイナス成長になるとの見通しを公表しました。フィッチの見通し公表以降、トルコリラの上値も重くなっており、エマージング通貨全体が膠着状態に入っています。G20大阪サミットまでは、様子見姿勢が強まるかもしれません。

今後の見通し

FXプライム,市況解説
(画像=PIXTA)

英国の次期首相が誰になるのか、これから情報が錯綜してくると思いますが、BOEの見解としては、ソーンダーズ委員が政策金利は市場が想定しているよりも速く上昇する必要があるかもしれないとタカ派的な発言をしていた経緯がありますが、ここにきて、英国の合意なきEU離脱は長期的な成長見通しを引き下げる懸念を増幅させるとややハト派寄りの発言にシフトしてきています。ブロードベント委員は、政策金利は市場が織り込む前に引き上げる必要があると一貫してタカ派寄りの発言をしていますが、ボリス・ジョンソン氏が現段階では首相に一番近いポジションにいるということが、こういったところにも影響しているのかもしれません。ボリス・ジョンソン氏の優勢は引き続き、ポンド売り要因として捉えられそうです。

ECBのデギンドス副総裁が「世界的に不確実性が高まっているが、ECBは引き続き警戒の手を緩めない。ECB理事会は景気を下押しするような衝撃が発生した場合には断固として行動を起こし、必要に応じて全ての政策ツールを調整する用意がある」と発言し、ECB理事会のメンバーであるカジミール・スロバキア中銀総裁は、ユーロ圏が景気後退あるいはデフレに向かっている懸念はないと指摘したうえで、現時点で追加的な景気刺激策の必要はない、との認識を明らかにしました。ユーロに関しては、イタリアの予算案問題がネックであり、急落リスクは依然として燻りますが、状況としては好転してきていると考えることができそうです。

G20サミットまでは、小動きが継続しそうだ

昨日の動きを見ても、上値は109円が意識され、かと言って、下値を攻める動きにも至っていません。108円台半ばが主戦場になりそうなため、引き続き利食い、損切りのラインは継続し、108.30円のドル円ロング、利食いは108.90円、損切りは107.90円に設定します。ただ、108.90円での利食いに達するようであれば、本来の戦略である途転売りを考えています。

海外時間からの流れ

トランプ大統領が米国の金利は高すぎるとのツイートを行っていることもあり、再びトランプ政権がFRBに対して利下げを要求するような形になっています。ただ、主要各国の中央銀行は金融緩和方向に政策スタンスを傾斜させており、FRBも同様の動きを反映する可能性が高そうです。一部では6月の利下げも噂されていますが、大方の見方では7月での利下げの可能性が高そうです。

今日の予定

本日は、トルコ中銀(TCMB)政策金利発表、米・5月消費者物価指数などの経済指標が予定されています。要人発言としては、ドラギ・ECB総裁、デギンドス・ECB副総裁の講演が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。