テスラ(NASDAQ:TSLA)の株価をめぐり、アナリストの議論が活発になっている。

モルガン・スタンレーのAdam Jonaアナリストは昨年テスラの目標株価を379ドルと設定したが、最悪のケースでは10ドルになると予想株価を引き下げた。

同アナリストは投資家との電話口で以下のように述べた。

「テスラはかつて成長株と見られていた。しかし過剰供給やキャッシュフロー悪化、モデルYの不振といった事実がある。資金調達目標を増額したが賛同は得られていない。リストラも多く信用性が憂慮されている」

別のアナリスト2名は株価が36ドルまで下落すると予想している。またテスラの危機を揶揄して「コードレッド」と呼ぶアナリストもいる。

この悲観的な分析はテスラの株価が今年急落したことから来ており、我々は今後も下げ相場が続くと予想する。

10日の終値は212.88ドルで、同株は今年36%以上値下がりしている。同社の時価総額は前年夏季以来およそ300億ドル低下している。

Tesla price chart
(画像=Investing.com)

今年上半期の弱気相場の要因となった2つの悪材料は以下の通り。

1. 楽観的な成長予測

テスラ株価は、同社がマス市場に向けて安価な電気自動車を提供し業界に革命を起こすだろうという投資家の信頼を常に反映してきた。そして技術力やユニークな製造哲学により高い収益性を維持してきた。

しかし今年初めにこの信頼が揺らぐことになった。終わらない内部課題やマスクCEOの失策、そして市場ダイナミクスの変遷が背景にあった。

安価な小型EVセダンのモデル3の売上は、割引措置にも関わらず10-12月期から1-3月期にかけて大きく減少した。

高級EVのモデルS・モデルYに至っても売上が半減する結果となった。

Sanford C. Bernstein & Co.のアナリストは、テスラはじきに競合優位性を持つヨーロッパ自動車メーカーとの競争にも曝されるだろうと指摘している。

テスラは構造的に低収益化している。背景には高コスト、予想外に狭い市場、そして技術での差別化が困難になってきたことがある。

対照的に、ダイムラー(OTC:DMLRY)のメルセデス・ベンツブランドやBMV(OTC:BMWYY)は継続して堅調なキャッシュフローを生んでおり、EV事業も拡大する見通し。

需要の急増に加えテスラのサプライチェーン問題が解決されない限り、同社のEV事業は利益を上げられないことが考えられる。

しかし同社の出荷台数が四半期比で31%減少したことで、EV事業がすでにピークに達しつつあるという懸念がますます強くなった。

市場がテスラに対し極端に反応した理由は、テスラの直近の成長予測の信頼性への疑念が拭えないことにある。

今までの同社の成長予測があまりに楽観的なシナリオに基づいていたとするなら、市場がテスラ株に固執する理由がいよいよ無くなってくるだろう。

2. キャッシュフロー悪化

テスラの市場心理悪化の主な要因としては現金の枯渇があり、負債も増加している。

テスラの負債総額は220億ドルで、累積損失は60億ドルに迫っている。

株主が懸念しているのは、モデル3の需要が伸びず、コストコントロール不能になった場合にどうやって負債を返済するのかという点だ。

テスラは1-3月期、普通株主に帰属する7億200万ドルの損失を計上した。

1株あたりの調整後損失額は2.90ドル。

同社は1-3月期に約9億5000万ドルの現金損失を計上し、2017年以降の50億ドルの現金消費がさらに膨れ上がった。

テスラは5月初旬、7億5000万ドル分の普通株と160億ドルの社債発行による23億5000万ドルの資金調達を発表した。

モルガン・スタンレーは、この資金は1年で使い切られるだろうと予想している。

テスラは4-6月期の収益は望み薄とし、代わりに7-9月期の収益を前向きに見積もっている。

この見通しは、生産量が出荷台数を「大幅に上回る」だろうとしつつ今年の出荷台数を40万台に上方修正したガイダンスを裏付けている。

総括

テスラ株の急落とともに、株主の信用が失われている事実が浮き彫りになっている。背景には同社製自動車の需要縮小や、事業運営のための内部キャッシュフロー創出能力が減退していることがある。

今年36%以上下落した後で、同株はなおも苦境に立たされている。(提供:Investing.comより)

著者:ハリス アンワル