1 はじめに

住宅ローン控除特例措置
(画像=チェスターNEWSより)

令和元(2019)年10月に消費税率が8%から10%に引き上げが予定されています。この消費税率の引き上げに伴い、令和元(2019)年度税制改正では、住宅に対する税制上の支援措置として住宅ローン控除の特例が創設されました(租税特別措置法41条⑬~⑰等)。

この住宅ローン控除の特例措置について、以下で簡単に説明いたします。

2 特例措置の適用要件

(1)趣旨

令和元年度税制改正で創設された住宅ローン控除の特例措置の趣旨は、令和元年10月の消費税率引き上げに際して需要変動の平準化に万全を期する点にあります。

(2)特例の適用要件

今回の住宅ローン控除の特例の適用要件は次のようになります。

①個人が住宅の取得等で「特別特定取得(以下の(3)で説明)」に該当するもの かつ ②その住宅の取得等した家屋を令和元年10月1日から令和2年12月31日までの間にその者の居住の用に供したこと

(3)特別特定取得とは

特別特定取得を説明する前に、特定取得について簡単に説明します。

従来の住宅ローン控除において、「特定取得」とは、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等(消費税額及び地方消費税額の合計額)が、消費税及び地方消費税の税率引き上げ後の8%又は10%の税率により課されるべき消費税額等である場合の住宅の取得等のこととします(租税特別措置法41条⑤)。

この規定が制定された当時、消費税率が5%であったのですが、「特定取得」とは、消費税及び地方消費税の税率引き上げ後の8%又は10%で課されるべき消費税額等である場合の住宅の取得等、つまり、税率引き上げ後の8%又は10%の消費税額で住宅を取得した場合を指します。

他方、住宅ローン控除の特例の適用要件にある「特別特定取得」とは、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等相当額が、その住宅の取得等に係る課税資産の譲渡等につき「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」第3条の規定による改正後の消費税法第29条に規定する税率により課されるべき消費税額及びその消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額の合計額に相当する額である場合のその住宅の取得等としています(租税特別措置法41条⑭)。

現在、消費税率は8%ですが、消費税及び地方消費税の税率引き上げ後の10%の税率で課されるべき消費税額等である場合の住宅の取得等、つまり、税率引き上げ後の10%の消費税額で住宅を取得した場合を指します。

なお、特別特定取得に該当する場合、特定取得の場合と同様、確定申告書に工事の請負契約書の写しや売買契約書の写し等で「特別特定取得」に該当する事実を明らかにする書類を添付する必要があります(租税特別措置法施行規則18の21)。

3 特例措置の控除期間  ~現行の10年から13年に拡大~

特例措置が適用された場合、適用年1年目から10年目までは従来の住宅ローン控除の適用があり、11年目から13年目に令和元年度税制改正で創設された特例措置による税額控除を受けることとなります。

適用年の11年目から13年目までの各年の住宅ローン控除額は、次の各区分に応じて、以下の①又は②のいずれか少ない金額を控除することができます。

(1)一般の住宅の場合
(2)認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合
(3)東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例の対象となる再建住宅の場合

①住宅借入金年末残高 × 1%( (3)の区分の場合は1.2% ) ②建物購入価格 × 2% ÷ 3年

もっとも、上記??の「住宅借入金年末残高」「建物購入価格」については、上記(1)(2)(3)の各区分毎に限度額があります。

(1)の一般住宅の場合は、4,000万円を限度
(2)の認定住宅等の場合は、5,000万円を限度
(3)の再建住宅の場合は、5,000万円を限度

4 具体例

例えば、令和元年11月に自己資金2,000万円と住宅ローン8,000万円を資金にして一般住宅を1億円(建物4,000万円、土地6,000万円)で取得したとします(令和元年12月に入居)。

上記の事例の場合、適用年の1年~10年目については、各年40万円を限度に従来の住宅ローン控除を適用することができます(※)。

※従来の住宅ローン控除では、毎年の年末時点で住宅借入金残高の1%が控除されることとなっていますが、各年の控除限度額が40万円(認定長期優良住宅等の場合は50万円)となっています。

適用年の11年目~13年目については、上述した計算式のように、①住宅借入金年末残高×1%と、②建物購入価格×2%÷3年のいずれか少ない額となります。

上記の事例の①については、一般住宅の場合の限度額が4,000万円のため、計算式には4,000万円をあてはめて、4,000万円×1%のため、40万円が①の額となります。

そして、上記の事例では、②が、建物価格4,000万円×2%÷3年のため、約26.6万円。

①又は②の少ない方の額となるため、適用年の11年目~13年目については、年26.6万円を控除することができるということになります。

(提供:チェスターNEWS