不動産投資を進めていくと、究極の目標が見えてきます。それは、「不動産所得だけで生活すること」です。しかし、数室所有しているだけでは、この目標は達成できません。家賃収入からローン返済や諸経費の支払いをして、残ったお金(手残り)がいくらあれば生活できるのか。その金額が最終的に所有すべき物件数や部屋数を決めるのです。
究極の目標を達成するまでの道のりは長いですが、そのために最も大切なことは、金融機関から融資を受け続けることができるかどうかです。これが途切れてしまうと物件数を増やすことができず、計画が頓挫してしまいます。
特に1棟物の場合、どのような物件から始めるかがとても重要です。なぜなら、金融機関は1棟目の経営状況を確認し、それをもとに2棟目以降の融資をするかどうかを決めるからです。
銀行の視点で考える重要ポイント
融資を受け続けるためには借入人の属性も重要ですが、「どんな物件だったら融資を受けられるか?」と考えることも大切です。
金融機関によっても、タイミングによっても物件評価は異なりますが、一般的に金融機関が物件で重視するポイントは、キャッシュフローと銀行評価(銀行から見た物件評価・積算評価)です。
ここで言うキャッシュフローとは、言うまでもなく所有物件が生む手残りのことです。手残りを生まない物件は返済が滞る可能性が高いため、融資が受けられないことが多いです。また、2棟目以降の購入を考えると、手残りが頭金の原資になるので、順調に手残りが貯まる物件を選択しなければなりません。
銀行評価は、物件の担保価値そのものです。レバレッジ効果の高い物件を購入し、その物件から得られる手残りを原資にして、2棟目以降を購入するという計画を立てることが重要です。
稀に売り急がなければならないなどの理由で、土地の担保評価額以下で売りに出される物件があります。そのような物件を購入すると、自己資金に高いレバレッジをかけることができます。
キャッシュフローの重要性
不動産投資物件の指標は、いくつかあります。年間家賃収入を物件の購入価格で割った表面利回り、家賃収入から借入金返済や固定資産税など諸経費を差し引いた手残りを購入価格で割った実質利回りなどです。
それらの指標ももちろん大切ですが、それ以上に大切なのがキャッシュフローです。キャッシュフローがマイナスになるということは、手残りがマイナスになるということです。そのような状態に陥ると、お金を増やそうと思って始めた不動産投資によって、逆に自分の財布からお金が出ていくことになります。
キャッシュフローを減らす出費の一つに、修繕費があります。大きいものはエアコン修理、共用部の管理や修繕、壁面の塗替え、エレベーターがある物件では定期点検費用などです。小さなものだと、電球取り替えや壁紙補修など。これらは、確実に手残りを減らす要因です。
つまり、家賃収入から借入金(元利金)や修繕費、租税公課、管理費などを差し引いたものがマイナスにならず、どれだけ手元に残るかがとても大切なのです。
逆に言えば、キャッシュフローがプラスである限り、不動産投資で破綻することはありません。
銀行による担保価値の評価
キャッシュフローが重要であることは、おわかりいただけたかと思います。次に大切なのは銀行による担保価値の評価方法です。
金融機関は、貸付金が回収不能(借りる側から見ると、借入金が返済不能)となった場合は物件を差し押さえ、貸し倒れを回避します。この時に使うのは物件の購入価格ではなく、それに一定の掛目を乗じたものであり、それが担保価値で判定した融資限度額なのです。
掛目は、金融機関によって異なります。担保掛目が7割や8割のところでは、残額は自己資金で賄う必要があります。自己資金を多く温存できれば、2棟目の購入が早く実現します。この考え方は、投資効率の観点でも非常に大切です。
また、キャッシュフローとも密接な関係があるのですが、金融機関のストレステストに耐えられるかどうかという視点でも評価されます。金融機関のストレステストは、「金利上昇耐性評価テスト」です。実は、このテストは住宅ローンを変動金利で借りる際、どの金融機関でも行っています。将来金利が上がっても、物件の家賃収入で返済できるかどうかが問われるのです。
まとめ
このように、1棟だけでなく複数棟の経営を目指す場合、1棟目はキャッシュフローが確実にプラスになる物件を購入し、できるだけ担保掛目が高い金融機関から融資を受けるという財務戦略を立てることが重要なのです。(提供:YANUSY)
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