あと一歩、顧客の背中を押し、決断を促したい。そんな時、どんな言葉が効果的だろうか?

論理的に説明しても相手が動いてくれない時、使えるのが「否定命令」だ。うまく使えば、相手の決心を促し、こちらの思い通りに行動してもらうことができる。

ただし、言葉は時に強い影響力を相手に及ぼす。使い方を誤れば、相手を間違った道に引き込んでしまうリスクすらある。

営業ケーススタディ(11)――偶然が生んだ新垣の妙手

相手に思い通りの行動を取らせる「否定命令」とは【営業心理学#11】
(画像=autumnn/shutterstock.com,ZUU online)

社会人1年目の採用コンサルタント、新垣理子(22)は、就活イベント直前になって、急に後ろ向きな態度になったクライアントにしびれを切らしていた。このイベントが価値ある取り組みであることは再三伝えている。クライアントは今まで何も採用の工夫をしなかった結果、人材不足にあえいでいるのだ。イベント出展は、クライアントの課題解決のための大きな一歩となることはほぼ間違いないのに……。

何とかお客さまの気持ちを前向きにし、決断を後押ししたい――。そう考えた新垣がとった意外な行動とは?15年目のベテランである先輩・及川圭佑(37)の解説も交え、「否定」が生む強力な言葉の効果を紹介する。

論理的に説明しても煮え切らないクライアント

「本当にこういうイベントって意味あるの?今まで一度も出たことないし……。うちの会社は小さいし、恥をかくようなことはしたくないんだよ」

新垣は頭に血が上るのを感じたが、ひと呼吸おいて何とか冷静な口調で返した。

「このイベントは地域で長年開催され、実績があります。地元の学生を積極的に採用したいという御社の方針と合致した学生と接触できる可能性が高いです。学生と強いつながりを作ることが、結果的に採用にかかる労力を軽減することになるんです」

新垣の説明を聞いても、社長は煮え切らない態度だ。打合せの終了時間が迫っていたので、とりあえず新垣は次回のアポイントを確定させ、その場を去ることにした。先輩社員である隣の及川に視線を投げたが、及川はほほ笑んで見せるだけだ。

「どうしたらいいか尋ねる」か、「参加をとりやめるよう促す」か

私に任せるということだな、と新垣は理解する。及川はいよいよの事態になるまで新垣のやり方に口を出さない。日頃から上司と意見が衝突しがちな新垣は、及川の態度をありがたいと感じることもあり、一方で言い逃れができない厳しさを感じることもあった。及川はこの後別のアポがあるそうで、ビルを出てすぐタクシーに乗り込んでいった。

新垣は一人で駅までの道を歩きつつ、社長に初めて会った半年ほど前のことを思い返していた。社長とのファーストコンタクトは最悪だった。セミナー終了後の相談会で、新垣は思わず社長の言葉に反論してしまったのだ。怒って帰った社長のもとを謝罪のために後日訪れ、話をするうちに及川のフォローもあって契約が決まった。

その後も及川と一緒に訪問を重ねている。不器用で正直な社長を見ていると、素直に応援したいと思える時もある。しかし、二転三転する社長の言葉に振り回されることも少なくなかった。

とにかく、目前に迫った就活イベントの打合せをできるのはあと1回だ。その際に、何としても社長の気持ちを前向きにしなくてはならない。就活イベントの重要性を再度伝えるのは大前提として、どのようなスタンスで社長に接したらいいだろう。

あなたならどうする?

(1) どうすればポジティブな捉え方ができるか社長に尋ねる。

(2) 気乗りしないならいっそ参加をとりやめることをすすめる。

社長の人柄を考えた時のベストな選択は?