働き方の多様化を促進する社会の動きから、「フリーランスという働き方に関心がある」という人も増えている。実際にフリーランスとして働くためにはどのようなスキルやマインドが必要なのかを「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」(以下、フリーランス協会)代表理事の平田麻莉さんに聞いている。
今回は前回インタビューでのテーマとなった「フリーランスをとりまく現状」をふまえ、フリーランスに向いている人や、フリーランスのキャリアに対する考え方について教えてもらうことにした。(取材・藤堂真衣/写真・森口新太郎)
▼平田さんインタビュー、前回の記事はこちら
・フリーランス協会代表理事に聞く 今「自由な働き方」が抱える課題【特集#9】
フリーランスは「究極の成果主義」の世界
──フリーランスという働き方を選ぶ人は増えていますが、健康保険や年金制度の観点から見ると、会社員には手厚い福利厚生がある一方、フリーランスはまだ整備途上と言えます。平田さんがもし誰かから「フリーになろうか迷っている」と相談を受けたら、どのような点に着目してアドバイスされますか?
私は、誰もかれもがフリーランスになるべきだとは全く思っていません。というのも、やはりどうしても向き不向きがあるからです。
実際に会社以外の場所で仕事をしたことがある方ならお分かりになると思いますが、フリーというのはとてもシビアな働き方です。究極の成果主義といってもよいでしょう。
──確かにフリーで仕事をしていると、失敗できないと感じる場面は多いです。
例えば企業では、少しスキルが不足していてもポテンシャル採用ができます。そこから人材を育てることを視野に入れて採用を行いますよね。そこで成長して企業に還元してくれることを期待するからですが、フリーランスとの「取引」では「成長」は期待値に織り込まれません。
フリーランスに業務を委託するときに期待されるのは、再現性のある結果。つまり、一定以上のクオリティで仕事をしてくれるという「成果」です。
もしも相手の期待に応えられないパフォーマンスでも、企業の社員であれば上司や先輩からダメ出しをされたりアドバイスをもらったりもできます。それが成長のきっかけになるかもしれませんね。
ですがフリーランスは、クライアントから笑顔で「切られる」。ありがとうございましたと言われて仕事が終わり、次の依頼はもう来ないわけです。極端にいえば、クライアントは外注のフリーランスを育てる責任もないので、ダメ出しすることもありません。
フリーランスに向いている人の特徴
──そう思うと、やはり厳しい世界でもありますよね。
フリーランスには誰でもなれます。資格や経験も問われません。ですが、成果だけが求められる厳しい世界で常に自分を高め続けていくのは相応の努力も必要になります。そうした地道な努力や苦労も含めて「楽しい」と思える人なら、フリーランスには向いていると思いますよ。
実際に、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)の調査でも、フリーランスの人は自分の専門分野に対するコミットメントやワークエンゲージメント(いわゆる仕事への熱意)が会社員と比べて高いことも分かっています。
昨日の自分を超えていきたい、専門性を高めていきたい……。熱意をもって働ける人はフリーランスという働き方を楽しめると思います。でも、それを「つらい」と感じる人もいるでしょうし、会社にいるほうが自分の役割に集中できるかもしれません。
だから、誰もがフリーランスになればいいという風には思わないんですよ。柔軟な働き方を望む人が増えていることについては、雇用システムに守られながら自分のペースで働ける人が増えるように企業の働き方改革を進めることと、フリーランスの就労環境整備と、両方必要だと思います。
フリーランスはキャリアの終着点ではない
──フリーランスとして独立した後は、どのようにキャリアを築いていくのが望ましいと思いますか?