世界に名だたるオークションハウス、サザビーズ。特集の第2回では、サザビーズ日本法人の代表取締役会長兼社長である石坂泰章氏へのインタビューの内容を掲載する。インタビューでは、「日本のアート業界が閉鎖的な理由とは?」「誰でもオークションに参加できるの?」といった質問に対する回答に加え、日本のアートビジネスの現状などを話してもらった。今回は、インタビューの前編をお届けする。

(取材・文 大西洋平)

高額オークションの世界
(撮影=末松正義)

オークションハウスとして双璧をなすサザビーズとクリスティーズ。前者は1744年にロンドンで創業した世界最古のオークションハウス。世界的に知られるノルウェーの巨匠、エドヴァルド・ムンクの「叫び」をはじめ、高額の美術品・工芸品を数多く取り扱ってきた。

直近では、今年5月に現代美術を代表するアンディ・ウォーホルの「FLOWERS」がサザビーズのオークションに出品され、567万4250ドル(約6億1300万円)で落札された。また、今秋に香港で開催される予定のサザビーズのオークションでは、出品を予定しているジュエリー(10.64 カラットのファンシー・ビビッド・パープリッシュピンク・ダイアモンドリング)の落札予想価格は、現時点で1億5千万~2億香港ドル(約20億~27億円)。オークションには、数億円~数十億円の美術品や工芸品が出品されることも珍しくない。

実は数万ドル台の取引が主流!

日本でオークションについて耳にするのは、基本的に億を超える出品物に関するものがほとんどである。そうなると、世界的なオークションハウスによるオークションは「ごく一部の富裕層をターゲットとしたもので、小金持ち以下には縁遠い存在」と思われても仕方がないだろう。

「日本のマスコミは億単位の高額な作品のことしか報道しないため、サザビーズのオークションには高額なものしか出品されていないようなイメージを抱かれている方も多いでしょう。実際には、5000ドルのものから1000万ドル単位のものまで、非常に幅広い価格帯の作品が取引されています。むしろ、5000ドルから数万ドル程度の作品が半数を占めているんです」

こう語るのは、サザビーズの日本法人サザビーズジャパンの代表取締役会長兼社長、石坂泰章氏(以下、カッコ内は全て石坂氏のコメント)。サザビーズジャパンは今年5月、東京日比谷の帝国ホテル内で国内初となる店舗をオープンさせた。同社の東京事務所自体は1979年の開設だが、新しい店舗にはサービスカウンターが設けられており、オークションや美術品に関する専門知識を持ったスタッフが常駐。入札や出品、作品の査定など、オークションに関するあらゆる相談に対応している。今回、店舗をオープンしたのは、日本でのオークションビジネスの認知度の拡大や顧客サービスの充実が目的だ。

日本の美術界が閉鎖的な理由

なぜ、日本ではオークションやアートビジネスに対して偏った報道が蔓延しているのだろうか。