ストレスの少ない環境で新規開拓件数がアップ
クラウドを使った顧客管理や営業支援のサービスを展開しているセールスフォース・ドットコムは、2015年10月、和歌山県白浜町にオフィスを開設した。きっかけは、総務省が推進する地域創生プロジェクト「ふるさとテレワーク推進のための地域実証事業」に参加したことだ。
白浜オフィスで働いているのは、電話やメール、チャットなどを使って、非対面で顧客に対応する内勤営業の社員の一部。「東京オフィスと100%同じ仕事をすることを大前提に移しました。当社にはクラウドを基幹としたシステムがあるため、いつでもどこでも同じように仕事ができる環境が整っていましたから、問題は生じませんでした」と、白浜オフィス長の吉野隆生氏は話す。
吉野氏は営業戦略室室長も兼務しており、白浜の他、東京や福岡にも部下がいるが、全員が実際に顔を合わせるのは年に1度あるかないか。それでもなんら支障はないそうだ。
現在、白浜オフィスにいる社員は9人。移住者は吉野氏を含めて4人で、残りの5人は東京オフィスからの3カ月間の出張者だ。全員が自らの希望で、毎月社員が入れ替わる循環型の異動を行なっている。
就業時間は東京オフィスと同じ9~18時で、週に2日を上限に在宅勤務が認められているのも同じだ。
このように東京オフィスとまったく同じように働いているにもかかわらず、都会の喧騒を離れた環境は社員に大きな影響を与えたようだ。開設して間もなく、白浜オフィスの社員の新規開拓の件数は、東京オフィスよりも20%も多くなったという。
「クルマで片道6~20分と通勤時間が短いため、残業をするのではなく、始業前の時間に仕事をするようになりました。頭の中がフレッシュな状態で仕事をするので、クリエイティビティが高まり、新規開拓のためのアイデアも多く出るようになったと感じます。
例えば、アプローチする企業を選定して、その経営課題を理解したうえで提案のポイントをまとめる、といったことが効率的にできています。
満員電車に乗らなくて済むことや、目線を変えるだけでオフィスから海が一望できる環境も、ストレスを軽減させ、創造性を高めることに役立っていると思います」
朝型にする他、対面にこだわらずテレビ会議を活用するなど、白浜で身につけた生産性の高い働き方を東京に戻ってからも実践し、周りに広げている社員も多いそうだ。その結果、今では東京と白浜の新規開拓件数の差がかなり縮まっているという。