本来、不祥事とは「関係者にとって好ましくない事柄」を意味しているが、一般的には「身から出たサビ(自業自得の不始末)」のような受け止め方をされているだろう。“バイトテロ”や情報漏洩にしても、待遇改善や従業員教育を怠った結果であり、「我が社に限っては……」とタカを括っている経営者も少なくないはずだ。しかし、もはや今の時代はあらゆる企業が不祥事と直面するリスクを有していると言えるだろう。外部からハッカーにアタックされて重要情報が流出する恐れもあるし、裏付けなしでも情報が拡散されるSNSを通じて風評被害に見舞われる可能性も否定できない。

そこで、今回はリスク検知に特化したデータ解析・コンサルティングを手掛け、大手企業を中心に600社以上がそのサービスを導入しているというエルテスを取材。多くの企業がどのような体制で不祥事の発生に備えているのか、その舞台裏を探ってみることにした。

24時間365日体制でSNS上の投稿をモニタリング

ビジネスパーソンの危機管理術
(画像=Olivier Le Moal/shutterstock.com,ZUU online)

ビックデータ解析やAI(人工知能)テクノロジーを得意とするエルテスは、実際に不祥事が発生してからの解決策についてサポートするだけでなく、初期段階におけるリスクの検知やリスクの予兆把握まで展開している。同社リスクコンサルティング部シニアマネジャーの末吉昴氏はこう説明する。

「リスクを未然に防ぐために、24時間365日体制でモニタリングを行っています。実際にリスクが顕在化した場合にはいち早くそれを検知し、その後どのような対応策を取るべきかについて専任のコンサルタントがアドバイスを行っています。さらに、川上の領域では顧客企業向けの研修などを通じた従業員の啓蒙や、リスクマネジメントのための社内ルール策定などもお手伝いしています。昔はマスメディアによる告発などが発端となってきましたが、今は一般人がネット上で一気に拡散する時代となっていますので、SNSの監視から緊急対応、その後の対策まで、リスクマネジメントを一貫してサポートしています」

たとえば、食品メーカーにおける異物混入問題にしても、かつてはその企業が社内に設置したお客様相談窓口にクレームが寄せられるケースが多かった。窓口での対応に落ち度がなければ、世の中に広く知れ渡る可能性はかなり低かったと言えよう。ところが、今はいきなりツイッターなどのSNS上に異物混入の写真をアップするケースが多く、それを見て驚いた人たちが次々とリツイートして拡散されていく。極端な話、その異物混入報告が悪意のあるフェイクニュース(偽装)であっても、とにかく話題性のある内容なら疑うことなく広まってしまうのが今の世の中だ。

「モニタリングを通じて製品不具合が疑われる投稿や不適切な内容の投稿を検知すると、まずは顧客企業にメールや電話でアラートを発したうえで、最善の対応策についてアドバイスを行います。昨今はフェイクニュースも少なくないので、併せて事実確認作業も進め、虚偽であった場合には正しい情報の発信についてもサポートします」(末吉氏)

もちろん、事実であった場合には誠実に謝罪することが求められる。いずれにしても、スピードのある対応が鉄則だという。

意図的な情報漏洩には、実行に至るまでに何らかの予兆がある

末吉氏いわく、情報漏洩をはじめとする従業員の不正行為には、実行に至るまでのプロセスにおいて何らかの予兆が示されるものだという。「社内におけるPCのログデータから行動分析を行えば、未然に不正を防ぐことが可能」(末吉氏)となるわけだ。