人工関節という選択肢を選ぶと……
――根本的な治療ができないということで出てくるのが、人工関節置換術ですね。
桑沢 手術を受けた方には、「もっと早く受ければよかった」と言う方が多いです。ちょっと勇気がいるでしょうが、痛みがなくなり、まっすぐな脚で歩けるようになりますから。
――どのような手術なのでしょう?
桑沢 骨のダメになったところを面取りするように削って、人工関節(インプラント)を入れます。歯科医で虫歯を削って金歯を入れるようなイメージです。
手術前には骨の削り方をシミュレーションします。当院の場合はナビゲーションシステムを導入していて、1mm1度の精度で、患者さんに合った人工関節を設置します。もうすぐ手術ロボットも導入する予定です。
手術時間は、術者の技量で大きく違っていて、当院だと片脚で1時間弱、両脚だと2時間くらいです。これは、かなり早いほうですね。片脚で1時間半~2時間ほどかかるのが普通だと思います。
術者の技量を知るには、手術の件数が目安になるでしょう。手術の件数が多い術者が、技量も高いと考えられます。
また、人工関節には大きく分けてTKA(人工膝関節全置換術)インプラントとUKA(人工膝関節部分置換術)インプラントの二つがあるなど、種類が色々とあるので、幅広く対応している病院を選ぶのがいいかもしれません。
――かなり高齢になっても手術をする人はいますか?
桑沢 93~94歳でも、畑仕事をしているような方でしたら、手術をすることはあります。もちろん、全身的な検査は必要です。
一方で、寝たきりの方だと、痛みをなくすために人工関節にしても、筋力がないのでそれを活用することがないわけですから、手術をするメリットは少ないでしょう。
車椅子生活になってしまった方も、脚の筋力が衰えてしまっていますから、人工関節にしてもすぐには歩けないんです。筋力が残っているうちに手術をしていただきたいですね。
――手術後に気をつけるべきことはありますか?
桑沢 ないですよ。強いて言えば、正座やあぐらはあまりしないほうがいいとか、長距離の持久走やテニスのシングルス、バスケットボールなどの激しいスポーツは避けるとかですね。
――海外でも行なわれている手術なのでしょうか?
桑沢 日本では、いよいよ生活ができなくなってから手術をする人が多いのですが、米国では、膝の痛みでゴルフができなくなったから手術をするというくらい、一般的です。生活の質のために手術をするんです。
――手術の費用はどれくらいかかるのでしょうか?
桑沢 大雑把に言って、人工関節一つで200万円くらいです。けれども、保険診療ですし、高額医療制度を利用すれば10数万円程度でできます。