ビル投資は、よく「利回りが高い」「相続税対策になる」などと言われますが、本当なのでしょうか。ビル投資やビル経営のメリットについて考察しながら、注意点などについても紹介していきます。

ビル投資で押さえておくべき数字はエリアの「空室率」と「賃料相場の推移」

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(写真=A Lot Of People/Shutterstock.com)

賃貸不動産の利回りを考えるとき、主に押さえておくべき数字として「空室率」と「賃料相場の上下推移」があります。空室率が高いと賃料収入が減るため利回りが下がりますが、空室率が低くても、賃料相場が低下傾向にあるエリアでは長期的には利回りが低下します。

ビル投資を行う場合は、検討しているエリアの空室率や賃料相場とその推移を知ることが重要です。エリアによって、利回りが良いところと悪いところがあるからです。空室率と賃料の推移は、不動産仲介大手などが発表している調査レポートなどで知ることができます。

例えば、オフィスビル仲介大手の三鬼商事は毎月レポートを発表しています。同社の最新レポートによれば、2019年9月の東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の平均空室率は前月比0.07%減の1.64%と改善しており、平均賃料も前月比71円増の2万1,855円と上昇しています。東京ビジネス地区の空室率はここのところ低下傾向にあることから、ビル投資に向くエリアと言えるでしょう。

東京以外のエリアはどうでしょうか。例えば、仙台ビジネス地区の2019年9月の平均空室率は0.02%減と低下傾向にありますが、4.07%と東京の2倍以上です。平均賃料は増加傾向にあるものの、空室率の絶対値も踏まえて投資判断をすべきです。

ビル投資は相続税対策になるのか?

現金をそのまま相続するよりも、不動産に投資してその不動産を相続するほうが、相続税の評価額が下がります。このように、ビル投資を含む不動産投資が相続税対策になることは広く知られています。

ただし、ビル投資は一般的な賃貸アパートに投資する場合に比べて投資額が大きくなるため注意が必要です。相続税を低く抑えることができたとしても、その後の不動産運用で高い利回りを出せなければ、その相続税対策が有効であったとは言えないでしょう。

相続税対策として安易にビル投資を行うのではなく、想定利回りを計算し、修繕費などのコストなどについても正しく把握し、将来的な運用状況をしっかりシミュレーションした上でビル投資を行う必要があります。

ビル投資の注意点:空室対策やテナント募集に「サブリース契約」の選択肢もある

前述のとおり、ビル投資では大きなお金が動きます。その分運用がうまくいっているときは収益の絶対額が大きくなりますが、その反面空室率が高くなると資金繰りが苦しくなります。また、テナントが何らかの事情で相次いで退去する事態が起きることも想定しておくべきです。その他、ビルの管理費や清掃費、修繕費などの必要経費が居住用の不動産よりも割高であることも、併せて覚えておきたい注意点です。

空室率の低下を防ぎ、入居テナントの募集を継続して行うには大きなリソースが必要です。手間がかかる割に効果が見えづらい場合もあり、ビルオーナーには頭の痛い問題ではないでしょうか。この問題を解決する方法のひとつとして「サブリース契約」があります。

投資先のビル選びで収支は大きく変わる

「利回り」や「相続税対策」の観点でビル投資のメリットや注意点を解説してきましたが、投資先のビルによって収支が大きく変わることがお分かりいただけたかと思います。

投資先の選択に成功すればどちらのメリットも享受できますが、失敗すればメリットを享受できないばかりか、損失を被る可能性が高くなります。空室率と賃料の推移をしっかり見据えた上で、投資先を賢く選ぶことがビル投資における最優先事項と言えるでしょう。(提供:ビルオーナーズアイ