2019年9月19日、国土交通省から「令和元年都道府県地価調査」が発表され、地方圏の商業地が28年ぶりにプラスに転じたことがわかりました。都道府県別ではどの地域が伸びたのか、住宅地と商業地それぞれの傾向を探ります。

都道府県地価調査

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(写真=shigemi okano/Shutterstock.com)

都道府県地価調査は、毎年9月下旬に都道府県知事が「国土利用計画法施行令第9条」にもとづいて公表する土地評価で、全国約2万地点の基準地を対象に7月1日時点で調査します。

価格は、1地点につき1名以上の不動産鑑定士が鑑定した評価をもとに決定されます。基準地の1平方メートルあたりの価格が算出され、これが土地の評価額を決める方法の一つである「基準地価」になります。ただし、これは不動産取引における実勢価格とは異なる場合があります。

では、今年の都道府県地価調査の結果をセグメント別に見てみましょう。

〈参考資料〉国土交通省 令和元年都道府県地価調査:14都道府県別対前年平均変動率

住宅:マイナス幅が縮小し均衡圏へ

住宅地は全国平均では依然として下落が続いていますが、マイナス幅は減少しています。数値は平成30年の-0.3%から-0.1%へ0.2ポイント改善し、ほぼ均衡圏まで回復しました。

地域別では、東京、大阪、名古屋の三大都市圏が+0.7%から+0.9%と続伸し、依然として好調を保っています。地方圏も-0.8%から-0.5%と0.3ポイント改善、三大都市圏を上回る伸び率を示したことは不動産業界にとっては朗報と言えるでしょう。

商業地:首都圏と京阪が高い伸び率

商業地は、首都圏と京都・大阪が引き続き高い伸び率を維持しています。首都圏では東京が前年比+6.8%、千葉が+2.8%、神奈川が+2.5%、埼玉が+1.8%といずれも大幅に続伸していますが、大阪と京都はそれ以上に高い伸び率を示しました。大阪が+8.7%、京都が+7.1%でともに東京を上回っていますが、これはベースの地価が東京よりも安いため、伸び率が高くなったと考えられます。

全国平均では、平成30年の+1.1%から+1.7%と続伸しました。三大都市圏が+4.2%から+5.2%と大幅に伸び、地方圏も-0.1%から+0.3%と、ついにプラスに転じました。

三大都市圏では、2020年の東京五輪・パラリンピック以降も大規模な再開発や大阪万博、IR(統合型リゾート)、リニア中央新幹線などのプラス材料が目白押しで、当面は地価の上昇が続くと見られています。

地方圏が緩やかに回復、商業地はプラス転換へ

今回の調査で特筆すべきは、低迷が続いていた地方圏の商業地が平成3年以来28年ぶりにプラスに転じたことです。マイナスになった地域も前年の28県から26県に減少し、香川と長崎がゼロ均衡で下落に歯止めがかかりました。

地方圏回復の立役者と言えるのが沖縄で、住宅地で+6.3%、商業地で+12.0%と両セグメントで全国1位になっています。地価水準が異なるため単純な比較はできませんが、沖縄が不動産投資の穴場として注目される可能性は高いです。

全国的に地価が回復した理由を、国土交通省は以下のように分析しています。

「景気回復、雇用・所得環境の改善、低金利環境の下で、(1)交通利便性等に優れた地域を中心に住宅需要が堅調であること、(2)オフィス市場の活況、外国人観光客等の増加による店舗・ホテル需要の高まりや再開発事業等の進展を背景に需要が拡大していることが挙げられます」
(出典:国土交通省ホームページ)

バブル崩壊後の1990年代初頭から下落を続けてきた全国の不動産も、地方圏の下げ止まりによって2020年以降は上昇を期待できるようになりました。新型交通サービス「MaaS」の普及による交通利便性の向上や、外国人観光客誘致、外国人労働者受け入れ強化によるインバウンド需要の拡大なども、不動産市場の活性化を後押ししてくれそうです。(提供:ビルオーナーズアイ