逆張りされる国内株式

投信動向
(画像=PIXTA)

株価が下がったら「買い」、上がったら「売る」逆張り投資。手堅い投資手法の一つであり、国内株式では逆張り投資をする個人投資家が多いことが知られている。個人投資家が逆張り投資も用いているインデックス・ファンドの足元の資金動向をみると、逆張り投資の傾向が鮮明である【図表1】。日経平均株価(線グラフ)が下落した5月や8月は資金流入(プラス:青棒)する一方で、大きく上昇した4月、9月、10月、11月は資金流出(マイナス:赤棒)している。

国内株式の逆張り投資
(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、足元に限らずアベノミクス相場が始まった2012年以降でみても、国内株式のインデックス・ファンドの資金動向をみても逆張り投資の傾向がみてとれる【図表2】。2012年から国内株式のインデックス・ファンドの売り越し額(純流出の金額、マイナスの場合は純流入)を累計(面グラフ)していくと、概ね日経平均株価(線グラフ)に連動している。長期的にも株価が上昇したらインデックス・ファンドが売られ(面グラフが上昇し)、逆に株価が下がると買われ(面グラフが下落し)たことが分かる。

国内株式の逆張り投資
(画像=ニッセイ基礎研究所)

長期的には買い持ちに負ける可能性

しかし、逆張り投資は短期的には手堅い投資手法であるものの、長期的には収益機会(株価上昇)を十分に享受できない可能性がある。インデックス・ファンドの純資産総額からそのことが実際に確認できる【図表3】。

国内株式の逆張り投資
(画像=ニッセイ基礎研究所)

アベノミクス相場が始まる前の2011年末に配当込み日経平均株価(1)(線グラフ)は1万2,000円を下回っていたが、足元2019年11月時点では3万7,000円台まで上昇している。この約8年間で株価は3.2倍になった。その一方でインデックス・ファンドの純資産総額(青面グラフ)は同期間で1.1兆円から1.9兆円と1.7倍にしかなっていないのである。当然、純資産総額が伸び悩んだ要因として分配金や売却などによるインデックス・ファンドからの資金流出の影響もある。実際にこの期間のインデックス・ファンドから支払われた分配金(緑面グラフ)は0.1兆円弱、売り越し額(黄面グラフ)は0.9兆円あった。ただ、それらの資金流出を考慮してもインデックス・ファンドの純資産総額は1.1兆円から2.9兆円(=1.9兆円+0.1兆円+0.9兆円)に、つまり2.6倍程度しかなっておらず、株価上昇と比べると劣後していることが分かる。この期間のインデックス・ファンドの運用コスト(信託報酬)は累計でも0.1兆円いかないので、劣後した原因の大部分は途中で売買した影響といえるのだ。

たとえば、2011年時点で日経平均株価に連動するインデックス・ファンドに1万円を投資し、保有し続けた場合、2019年には3万2,000円になったはずである。それが1万円を投資した後にインデックス・ファンド全体と同じように一部を売買すると、売買コストがかからなかったとしても2万6,000円にしかならなかったことを意味している。まさに、インデックス・ファンド全体でみると途中で売買(逆張り投資)を行ったため、この期間の株価の上昇の8割(=2万6,000円/3万2,000円)程度しか享受できなかったといえよう。

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(1)集計した国内株式インデックス・ファンドの足元の純資産総額1.9兆円のうち、1.5兆円が日経平均株価に連動するファンドである。また、インデックス・ファンドの実際の運用に沿わせるため、配当込み日経平均株価を用いた。

最後に

株価上昇を十分に享受できなくても、「利益さえ出ればいい」もしくは「損さえ出なければいい」から逆張り投資で十分いう考え方もある。また、株価が上昇して含み益が出ていると、売却して利益確定したくなることも事実である。また、国内株式については低迷した期間が長かっただけに、多くの投資家が上昇局面に慣れてなく高所(高値)恐怖症になり易いことも、背景にあるのかもしれない。

ただ、確認してきたように短期的な売買(特に利益確定の売却)はそのときはよくても、結果的に将来の収益機会の損失につながる可能性がある。そのことを踏まえると足元9月以降、国内株式は堅調であるが、株価上昇時でも不要不急の売買は控えられるような長い眼を持つことが大きく収益を得るには重要だと考えられる。

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前山裕亮(まえやまゆうすけ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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