ローンの金利は不動産投資そのもの、と言っても過言ではない。いくら利回りが良くても、金利が高ければ思うようなリターンが得られず、その不動産投資は失敗に終わってしまうからだ。ここでは、金利を低く抑えるための5つのテクニックを紹介しよう。

不動産投資ローン金利の基本的な考え方 「下がったら儲けもの」で積極的な交渉を

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(画像=1599686sv/Shutterstock.com)

金利を抑えるポイントに入る前に、不動産投資におけるローン金利の基本的な考え方を確認しよう。絶対にやってはいけないのは、「提示された金利をそのまま受け入れてしまう」ことだ。借入額が数千万円、場合によっては1億円を超える不動産投資において、金利は成否を分ける重要な要素である。

だからこそ、複数の金融機関の金利を比較するだけでなく、遠慮なく金利交渉をするスタンスが大切だ。断られても、実質的な損は何もない。「下がったら儲けもの」というくらいの気持ちで積極的に交渉をしよう。

ここから5つのポイントを紹介するが、ポイント1~4は初めて不動産投資をする人向け、5はすでに不動産投資をしている人向けの内容だ。

ローン金利を抑えるテクニック1:変動金利を選ぶ

ローン金利を抑える最も簡単で確実な方法は、変動金利を選ぶことだ。固定金利と変動金利を比較すると変動金利のほうが低金利なので、不動産投資で重要な指標である「イールドギャップ」が生まれやすい。不動産投資におけるイールドキャップとは、投資物件の利回りとローン金利の差のことだ。この差が大きいほど、リターンが大きくなりやすい。

住宅ローンであれば、金利上昇に備えて固定金利を選択することもあるだろう。しかし、利回りと金利の差が生命線の不動産投資においては、変動金利を選ぶのがセオリーだ。特に物件価格が高止まりしていて、低金利が長く続いていている現在のような状況では、よっぽど利回りの高い物件でなければ固定金利を選択すべきではない。

もちろん今後金利が上昇する可能性はあるが、通常は金利がある日突然急上昇することはない。金利の見直しが行われるのは半年に1回であり、金利が上がる場合も返済額が急増しないように「125%ルール」というものがある。金利変動リスクを過剰に警戒するのではなく、現状の経済情勢と投資物件の利回りを考慮して冷静に判断したい。

ローン金利を抑えるテクニック2:提携金融機関の多い不動産会社を選ぶ

どの不動産会社を通して物件を購入するかによっても、金利は変わる可能性がある。一般的には、歴史の浅い中小の不動産投資会社よりも、上場企業を選択したほうが有利だ。なぜなら、社会的信用力の高い上場企業のほうが、提携金融機関が多い傾向があるからだ。

提携金融機関が多いことで知られる東証1部上場の不動産会社には、以下のような会社がある。

・10社以上と提携するグローバル・リンク・マネジメント
・近畿圏を得意エリアとして各金融機関と太いパイプを持つプレサンスコーポレーション

金融機関の選択肢が多ければ、複数の金融機関の金利を比較しやすくなり、最も低金利の金融機関を選ぶこともできる。場合によっては、金融機関同士の競争意識が働き、金利交渉が有利に進むこともある。

提携金融機関が少ない不動産会社を選ぶと、選択肢が狭まる。一つの金融機関としか提携していなければ、その金利が高いのか、安いのかを判断できない。

ローン金利を抑えるテクニック3:高い担保評価=資産価値や収益性が高い物件を選ぶ

ローン融資の審査では、「資産価値がどれくらいある物件を買うか」も評価される。いわゆる担保評価であるが、資産価値の高い物件なら他の金融機関でも融資してくれる可能性があるため、金利交渉の余地が出てくる。

金融機関が資産価値を重視するのは、万が一貸し倒れになっても資金を回収しやすいからだ。よって、ローン金利を抑えたい場合は、担保評価の高い物件を選択するのがベターだ。

ただし、担保評価の方法は金融機関によって異なる。一般的な判断基準は「積算価格」や「収益価格(収益還元価格)」だが、どちらに重きをおくかについては金融機関によって違うので、借入を検討している金融機関の傾向を不動産会社などに聞いておくといいだろう。「積算価格」と「収益価格」の内容は、以下のとおりだ。

担保評価の基準1 積算価格 土地と建物を別々に評価し合算する方法

積算価格とは、土地と建物の資産価値を個々に評価して合算したものだ。

土地の評価軸には公示価格・相続税路線価・固定資産税路線価があるが、用いられることが多いのは相続税路線価である。

建物は、新築したときのコスト(再調達価格)と経年劣化の年数(法定耐用年数)を組み合わせて評価額を割り出すのが一般的だ。

たとえば、区分マンションとアパート一棟を比較した場合、土地の評価額が大きい(=所有面積の大きい)アパートのほうが評価額は高くなりやすい。したがって、積算価格重視の金融機関では、アパートのほうが有利だ。区分マンションは資産価値の評価が低い分、属性重視の評価になりやすい。

担保評価の基準2 収益価格(収益還元法) 現在の家賃収入と期待利回りで評価する方法

収益価格とは、「その物件がいくら稼げるか」を評価したものだ。物件が稼ぐ力の評価軸に「利回り」があるが、金融機関が単純な利回りだけで担保評価をすることはない。利回りはあくまでも将来の見込みであって、それだけで融資するのはリスクが大きいからだ。その意味では、積算価格も市場での売買価格ではないため、こちらも回収リスクがあると言える。

最近では積算価格に加えて、市場価格に近い「収益還元法(家賃収入÷期待利回り)」で割り出した価値に対して、どれくらいの割合を融資するかという考え方をする金融機関も増えているようだ。

ローン金利を抑えるテクニック4:属性を意識する

これは誰でも使えるテクニックではないが、一般的に「属性が良い」と言われている人は、そのメリットを活用したい。

特に区分マンションを選択する際に顕著だが、不動産投資の融資審査において「属性」は重要なファクターだ。区分マンションは資産評価が低くなりやすい分、「どんな人がその物件を購入するか(=属性)」が金融機関の審査では重視される。

金融機関が評価する属性とは?年齢・勤続年数・年収etc.

金融機関は、具体的に何を見ているのだろうか。参考になるのは、国土交通省が金融機関を対象に行った「民間住宅ローンの実態に関する調査」だ。この調査の「審査を行う際に重視する項目」という設問では、9割以上の金融機関が以下の項目を重視すると回答している。

・健康状態
・借入時・完済時の年齢
・勤続年数
・年収

「若いビジネスパーソンで年収が高く、勤続年数もそれなりにある」。このような属性の人は、金融機関から見ると滞納・破綻リスクの低い上客だ。多くの金融機関で審査に通る属性なので、金利交渉に応じてくれる可能性が高い。ただし、属性の評価方法は金融機関によって大きく異なるので注意してほしい。

年齢や勤続年数の目安として、オリックス銀行のアパート(不動産投資)ローンの申込条件を見てみると、「同じ勤務先に3年以上勤めている方、前年度の税込年収が500万円以上の方」となっている。

「大企業勤務」という属性は融資を受けやすいのか?

上記以外で重視されることの多い属性評価に、「勤務先の規模」がある。「大手(上場)企業だと融資が通りやすい」と言われるが、住宅ローン審査では2割程度の金融機関しか重視していない。とはいえ、実際に不動産会社に投資物件の問い合わせをすると「大手企業勤務でないと難しい」と言われることがあるので、無視できない要素だ。

その他注意すべき属性は「他のローンの債務状況・返済履歴」

金融機関の審査では、「他のローンの債務状況・返済履歴」も重要だと言われている。前述の国交省の調査では、債務状況・返済履歴を重視する金融機関は6割程度だ。

返済履歴では、一般的なショッピングローンはもちろん、スマホの分割返済などにおける延滞でも引っかかることがある。不動産投資を考え始めたらローン残高を減らし、返済を延滞しない努力が必要だ。万全を期して、金利交渉に望みたい。

ローン金利を抑えるテクニック5:返済実績を作る

すでに不動産投資をしていて、ある程度の期間返済が滞ったことがない人は、現在借り入れをしている金融機関、または借り換え先の金融機関との交渉で金利を引き下げられる可能性がある。2019年度の不動産投資分野のベストセラー『最強の不動産投資法』(サンクチュアリ出版)には、以下のような記述がある。

(収支を改善するために)「一番簡単に行えるのは「金利の引き下げ交渉」です。ポイントは「断ったら別の金融機関に取られてしまう」と相手に思わせることです。借り換えする先があるとうまく伝えられると、向こうにとっても金利を下げたほうがメリットはあるので交渉も捗ります。」

著者の河津桜生氏は、現役の金融機関の融資担当者だけに、説得力がある。

ただし、返済実績があるからといって収支が赤字だったり、空室割合が高かったりすれば、金融機関の評価は得られない。不動産投資のビギナーにありがちだが、過大な経費計上をして収支が悪くなれば、その後の追加融資や金利交渉で不利になる。この点に留意しながら運用していくべきだろう。

住宅ローンテックを利用して低金利を目指す手も

不動産投資で金利を抑えるためのテクニックを紹介した。最近では、AIが複数の金融機関を比較して、低金利で借りられるところをスピーディーに教えてくれる「住宅ローンテック」も広がっている。こういった新しい仕組みを活用しながら、金利を抑える努力をするのも一案だ。

文・本間貴志(不動産ライター)/MONEY TIMES

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